韓国の登山学校に通ったのをきっかけに、日本より遙かに飽和したアウトドア市場の実態を眺めてきました。
あらゆるメディアを通じて流される、芸能人を多用したアウトドア用品のCM。
登山用としても、タウンユースとしても消費される韓国国内外メーカーのアウトドア用品。
一部のメーカー商品を対象に、若者や学生が恐喝まがいの犯罪に走る過熱ぶり。
日本とは異なる過熱ぶりに、韓国のアウトドア市場の行く末はある意味、「膨らみすぎたカエルの腹」を思わせ、非常に私の関心をひくものでした。
成長率も低下しつつある韓国アウトドア市場のベクトルに関して、月刊MOUNTAIN誌12月号が興味深い記事を掲載しています。
[診断]もう単調なマーケティングの束縛から抜け出さなければならない! by 月刊MOUNTAIN2015年12月号
以下引用開始
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[診断]もう単調なマーケティングの束縛から抜け出さなければならない!
新しいマーケティング戦略、‘ブランド ジャーナリズム’と国内アウトドア業界の現況 クォン・サンジン記者
近年、企業のマーケティング戦略は絶えず発展して多様化した。
伝統的な媒体を通した単純なマーケティングは少しずつ影響力を失い、インターネットやSNSなど強力な拡散性を持つ新しい媒体が登場し、これを通じた多様な方法によるマーケティングの比重が次第に高まりつつある。
このような傾向の中で登場した「ブランド ジャーナリズム(Brand Journalism)」は影響力ある新しいマーケティング戦略と評価されている。最近脚光を浴びているブランド ジャーナリズムの正確な意味と国内アウトドア企業の活用現況を調べる。

最近、様々なアウトドア企業が経営難に苦しめられ倒産する事例が増加している。今、ブランドのイメージに直接的な影響を与える「ブランド ジャーナリズム」が注目されている。
今日の消費者は賢い。
インターネットが発達してオンライン上で情報を得ることが容易になり、これを通じて消費者は「賢いショッピング」を楽しむ。言い換えれば、伝統的な媒体(新聞·TV·ラジオ·雑誌)に掲載された『私たちの製品は良い。この製品を買え!』 という形式の、単調な広告はその効果が落ちているのだ。

したがって、最近の企業は単純にある製品だけを広報するのではなく、「企業自らのイメージ」を消費者に伝達する広告形態を見せている。
これは最近のマーケティング分野の主流である「ストーリーテリング(Storytelling)」とも相通じる。 企業は自分たちの製品を直接的に広報することから抜け出し、消費者の関心を呼び起こす物語を拡散して広報効果を引き出す。これを「コンテンツ マーケティング(Content Marketing)」という。
ストーリーテリングとジャーナリズムが結びついたマーケティング戦略
「ブランド ジャーナリズム(Brand Journalism)」は、このコンテンツ マーケティングがさらに発展した概念だ。
ブランド ジャーナリズムは2004年当時、マクドナルドのCMO(総括マーケティング責任者)であったレリー・ライト(Larry Light)がニューヨークで開催された広告カンファレンスで初めて言及した用語で、2000年代初期に株価が暴落して危機を迎えたマクドナルドのブランド価値を再び活性化するための一つのマーケティング戦略だった。
彼は会社を蘇生するために最優先で消費者に集中した。マクドナルドを利用する顧客の特性と生活を把握して、ブランドのアイデンティティを再確立した。結果は大成功し、彼はマクドナルドが「誰でも合理的な価格で外食を楽しむことができる幸せなところ」という認識を消費者に成功裏に植え付けさせ、ブランド価値を引き上げた。
この経験を通じてレリー・ライトが提示したブランド ジャーナリズムは、企業の単純なマーケティング戦略でない、個人と社会に肯定的な影響を与える役割を果たさなければならないという意味である。簡単に言えば「ブランド ストーリーテリング」と「ジャーナリズム」が結びついた、新しいコンテンツ マーケティングである。

マクドナルドの総括マーケティング責任者であったレリー・ライトは2004年、「ブランド ジャーナリズム」という用語を初めて用いた。
マクドナルドの成功事例以後、アメリカを含む全世界のグローバル企業はブランド ジャーナリズムに多くの関心を持ち、各自の特性に合うように利用していった。
代表例として、コカコーラは2012年にオンライン新聞·マガジン形態のサイトである「Coca-Cola Journey(www.coca-colacompany.com)」を開設、数多くの自社製作コンテンツを掲載し始めた。 様々な食べ物·文化·スポーツ·音楽·映像などライフスタイルの全般的な部分を扱った。
このサイトは開設されて1年もたたないうちに920万人の訪問者数と、2380万件のアクセス数を記録、ソーシャル メディアを通じて5万4千回以上にわたりコンテンツが共有され、もう一つのブランド ジャーナリズム成功事例に数えられた。
成功した「ブランドジャーナリズム」の運営方式を見れば、収益創出を目的に置かず、専門的なコンテンツを生産して企業の信頼度を積み、社会的に意味があるキャンペーンを進めたり、ある主題に対する深みのある推察と取材を通じたコンテンツを製作して、すべてのコンテンツに制作者の名前を掲載するという点などで伝統ジャーナリズムの形式をそのままなぞっている。

「コカコーラ ジャーニー」サイトは、成功したブランド ジャーナリズム事例とされている。
国内アウトドア市場に定着したブランド ジャーナリズム
このようなブランド ジャーナリズム戦略の運営方法は、ただコカコーラだけでなく全世界の多くの企業に定着した。 国内企業も同じである。
サムスン電子とLG電子、現代自動車など国内有数の企業はブランド ジャーナリズムを専門に担当する特別チーム(ニュースルーム)を構成し、専門情報を提供するオンライン チャンネルを運営している。
これらは色々な媒体と広告代理店に報道資料を送り、ニュースを生産する方式を次第に減らし自主的に情報を生産する方式を採択している。
1990年代末に形成された国内アウトドア市場は、登山人口の増加で2000年代後半を基点に急成長し、2013年には6兆ウォン台を突破するなど絶頂期を成し遂げた。 だが、それにより市場はやはり飽和し、2年前からは成長率が急激な下落傾向を見せ始めた。
このような現象が長期化すると、急速にアウトドア企業は経営難に陥り、ついに最近では倒産する企業も一つ二つと増えている。

過去6年間の国内アウトドア市場の成長率と売上額 (出典:サムスンファッション研究所)
このような状況で、国内アウトドア企業には新しいマーケティング戦略が必要となり、多数の業者がブランド ジャーナリズムに目を向けた。
ネパはブランド ジャーナリズムの核心であるニュースルームを創設して、自主的に自社の情報を消費者に知らせている。 同社は「Move Now(アウトドアから自由に自然を楽しめ)」 や 「暖かい世の中(私たちの社会を暖かくした美談の主人公に感謝の気持ちを示す」 などのキャンペーンを進め、消費者に明るくて暖かい企業イメージを植え付けている。 このような広報はネパのメディアセンター(ホームページ)と各SNSチャネル(フェイスブック、ブログ、インスタグラム、ユーチューブ、カカオストーリー、ツイッター)によって速く伝えられる。

ネパは社会における美談の主人公に感謝の気持ちを伝える「暖かい世の中」キャンペーンを広げて企業イメージを構築している。
ブラックヤクはブランド アイデンティティ確立に最も精魂を込める業者だ。設立(1973年)初期から今まで欠かさず「ヒマラヤ」という文言を使って彼らの挑戦精神を強調している。
2013年からは正しいアウトドア文化形成と情報提供のためのアウトドア専門家(シェルパ)を募集して、体験·教育プログラムを進め、最近ではアウトドア総合情報サイトである「マウンテンブック(www.mountainbook.co.kr)」を開設し、利用者各自のアウトドア経験を互いに共有する環境を作るなど「アウトドアのポータル化」に力を注いでいる。

ブラックヤクはアウトドアのポータルサイト「マウンテンブック」を運営している。
ノースフェイスは、オンライン チャンネルを通したコンテンツ マーケティングに集中している。
特に昨年9月にはユーチューブ チャンネルを通じてアウトドア活動を奨励する内容の「再び、探険の中に」という映像を公開したが、この映像は現在(2015.11.22現在)まで何と1230万を越えるアクセス数を記録して大きな反響を呼び起こした。
また、先月に公開された「マクマード南極探険」映像は一ヶ月ぶりに430万のアクセス数を記録してユーチューブ チャネル マーケティングの強みを継続している。これを通じてノースフェイスは若年層の大きい反応を得て「挑戦精神」旺盛なブランドイメージを強烈に残した。

ノースフェイスのコンテンツ マーケティングの一つであるユーチューブ映像は1230万を越えるアクセス数を記録した。
コーロンスポーツは「アンタークティカ、ペンギン飛ぶ」というストーリーテリング マーケティングをリリースした。
オン・オフラインで同時に進行されるこのキャンペーンは、南極の象徴であるペンギンに対する関心と親しみを高めるために企画されたもので、11月14日に始まって以降22日までオンラインだけで1000人を越える人々が参加するなど、熱い関心を集めている。 この他にもミレー、トランゴ、ブラックダイヤモンド、K2、慧超旅行社など、多様なアウトドア業者がオンライン チャンネルを通じてコンテンツ マーケティングを広げ、市場での位置を守っている。

コーロンスポツは最近「アンタークティカ、ペンギン飛ぶ」というストーリーテリング マーケティングを広げて自然に親しむイメージを伝達している。
だが、現在の国内アウトドア企業は海外の先進企業に比べ、ブランド ジャーナリズムを容易に適用できずにいるのが現実だ。
劣悪な市場環境で財政が不安になり、ブランド ジャーナリズムで強調される専門的で客観的な情報よりも、企業中心の情報伝達に汲々とするためだ。
それでもマーケティングの側面においてストーリーテリングの重要性はますます大きくなっており、その延長線上にあるブランド ジャーナリズムもやはり国内アウトドア業界で次第に拡張され、成長していくと予想される。
もう企業自らが単調なマーケティングの束縛から抜け出さなければならない時期であることが明らかである。
クォン・サンジン記者 dhunhil@emountain.co.kr
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以上引用おわり
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