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ダイゴダイゴ (山形県天童市 荻野戸地区)

12月20日、日曜。
天童市 上荻野戸地区・八幡神社で開催される「ダイゴダイゴ」に参列。

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「ダイゴダイゴ」の会場となる山形県天童市 上荻野戸地区 八幡神社と公民館

「ダイゴダイゴ」とは、社殿において神事の後、氏子、参拝者に大根と豆腐の煮物が振る舞われ、全員で一斉に「ダイゴダイゴ」と叫び声をあげ、その声が上荻野戸地区より北に位置する石倉地区まで届けば豊作間違いなしといわれる、いわば作占い、そして豊作と家内繁栄を祈願する儀式である。

廃れつつある昔からの神事・・・
そんなイメージを抱いて現地を訪れるが、なにやら結構な人数。

しきり役の方から神社脇の公民館に入るようにいわれ、中に集合。
中央に学生服姿の若者。

 私はまったくプロ野球に興味が無いので知らなかったのだが、今年のドラフト会議で広島カープに7位指名され入団が決定した、山形中央高野球部・青木陸さんがこの荻野戸在住ということで、今年の「ダイゴダイゴ」は地区役員の判断で急遽、青木選手の入団祝いと祝賀壮行会を兼ねた行事になったらしい。
 そういうわけで上荻野戸地区だけでなく、近隣の地区代表の方も招集されたらしく、例年と異なり人数が増加したらしい。
 神事の際の社殿への立ち入りは地区役員など関係者のみとされていましたが、近隣役員の方がたまたま私の実父の葬儀で大変お世話になった方だったため、社殿の中に入らせていただきました。

 通常の神事のとおり、神主の詔、玉串奉奠がつづく。

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 狭い社殿は満員

 神事の後、社殿の中の参列者に次々と小皿と箸が配られる。

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 これが本日の主役、大根と豆腐の煮物。
 煮物の皿と一緒に、縁起物の炒り豆も配布される。
 皿が配られたところで、全員起立の声がかかり、皆でいっせいに社殿奥、石倉地区の方向に向かい、

 『ダイゴ!ダイゴ!』
 と叫ぶのだ。
 そのときの様子はこちら↓

 前述のように、本日は青木選手の祝賀会も兼ねているため、他の地区からいらっしゃった方から
 「こんな行事毎年してるのかい」
 「昔っからやってるのかい」
 という声がちらほら聞かれる。
 なるほど、数百メートル離れて地区が違えば、古来から続く伝統行事もあまり知られていない様子である。

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 この「ダイゴダイゴ」の後は、あらためて青木選手とお母様が中央に座られて、青木選手の成功を祈願する神事が執り行われました。(画像中央の学生服姿が青木選手)

 「ダイゴダイゴ」は、伝承によれば山寺・立石寺を開山した慈覚大師の従者6名が移住したことにまつわる。
 この6人は荻野戸六人衆と呼ばれ、各家で氏神が祀られ、後にこの六在家、六社明神に感謝するために始まった行事といわれる。
 
 変わった名称「ダイゴダイゴ」には大きく2つのいわれがある。
 美味しい、の意味の「醍醐」、それから大根の呼び名がなまった「ダイゴ」、である。
 振る舞われる料理、特に「六人衆」に対する振る舞いの献立は、古文書をとりまとめた「干布村郷土資料」に詳しい。江戸時代からのそれを調べると、今と違い飯・汁物がついているが、豆腐・野菜を中心とした質素なものである。
 
 私が心を動かされるのは、「非常に質素にした料理にした訳は、どんなに不景気でも祭典を中止することなく実行しうるようにしたのである」(村山、2009)という背景である。

 今年は土建業繁忙のため訪問できないのだが、山形県庄内・三川町で「茄子汁・豆腐汁」という行事がある。盆と年末、子供達が町内を「なーすーじーる!」と声をかけまわり、シンプルな茄子汁(年末は豆腐汁)を人々が食べる、という行事である。 
 やはり、どんな不作の年でも行事が続けられるよう、献立は質素なものになったといういわれを聞いた。

 今、メディアではCool Japan と称し、きらびやかな日本食に外人が目の色輝かせているテレビ番組をよくみかける。
 そんな華やかな日本食で知られる日本の都市部を支えてきたのは、山形のような農村だと私は認識している。
 
 その農村部で、古来から人々のコミュニティを保つべく、いかなる不作の年でも催行可能なようにと考えられた献立。
 本日いただいた大根と豆腐は、スルメでダシをとったシンプルなものです。
 もちろん日本の文化の粋である華やかな日本料理も素晴らしいものですが、子々孫々の未来も考え、いつまでも行事が続くようにと願いが込められた質素な煮物も、素晴らしい料理ではないでしょうか。

 数百年も昔から続けられてきた伝統行事、「ダイゴダイゴ」。
 今年は、プロ野球というとても厳しい実力社会にのりだそうとする若者を送り出す行事も併せて行われました。
 それはたまたまの巡り合わせなのかもしれませんが、こんな風にして伝統行事は地域社会の中で続けられていくんでしょうね。

参考文献:
 村山正市 「六社明神「ダイゴダイゴ」の行事-その由来と賄-」 山形民俗 第23号 平成21年11月
 野口一雄 「天童再発見 人びとのくらし」 村山民俗学会 平成19年6月

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