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鳥追い (山形市 古館地区 2016年1月10日)

1月10日、日曜。
山形市の古館地区で行われる「鳥追い」を見学させていただく。

「鳥追い」とは害鳥を田畑から追い払う行為を模した行事で、子供達が「鳥追い」歌を歌い、地区を練り歩き、無病息災・厄除け・豊作を祈る小正月の行事である。
ウェブを検索すれば、日本全国各地で行われていることがわかる。

しかし、ここ山形県では少子化の影響が大きい。
昭和時代の民俗学文献では山形各地で行われていた「鳥追い」の行事も、子供達の行事として行われているのはここ山形市古館地区のみといわれている。 同じ山形県内・最上地方の赤倉で「鳥追い」行事が行われているが、こちらは勇壮な若者たちの「祭り」として継続されている。 

 村山民俗学会会報によれば「鳥追い」行事は山形県内では古館地区のみとされているが、寒河江市平塩の「御塞神祭」のように「鳥追い」が他の行事に吸収されている例がある。

 「アマハゲ」で知られる山形県遊佐町でも、鳥追いとして各家庭の井戸の周りを子供達が唄い廻る、という鳥追い行事が存在していたのだが、上水道が発達し、少子化の現在は残念ながら途絶している。
 いずれせよ、山形県県内で子供達の行事としての姿を残した「鳥追い」行事は古館地区のみとみられる。

 16時、古館地区の古館集会所へ。
 この行事が行われる日は雪が降るといわれるが、今年は暖冬、冷たい雨。
 子供達をもてなすためであろう、集会所前のタープテント下にはちゃんとしたポップコーンメーカー、コンニャク田楽が用意されており、訪ねてきた子供達にふるまわれる。
 よそ者の私も集会所の入り口をウロウロしていると、「どうぞ食べて下さい」と暖かい豚汁、甘酒をごちそうになる。
 「どうぞ暖かい中に入ってください」
 と言われ、集会所中へ。
 17時前、地区の人々、子供達みんながあつまったところで、「鳥追い歌」の練習が始まる。
 まわりの会話を聞いていると、誰も「鳥追い」とは言わない。
 「ホッツラホーおわってから御飯なの?」
 「ホッツラホーこれからだが?」
 と、「ホッツラホー」と呼ばれている。

P1
 出発前、皆が集まったところで「鳥追い歌」の練習。
 本日は雨のため、集会所内で行われた。
 
 鳥追い歌の歌詞は次のとおり。
 (歌詞は練習時に配布されたプリントからの引用)
--------------------
ホッツラホーホー
ホッツラホーのてでは
何経(なんぎょう)読む、心経(しんぎょう)読む
ツッポツッポ竹の子
綾錦(あやにしき)つんばくら
つんばくらの羽根は
一けん間(ま)さ、たんねとで
二けん間(ま)さ、開いた、開いた
ヤーホイ (実際はジャーホイに聞こえる)
-------------------
 
P2
17時過ぎ、「鳥追い歌」を歌いながら古館集会所を出発。

P3
地区の辻(三叉路、十字路)では立ち止まり、鐘と太鼓を3回鳴らし、恵方に向かって「ホーッ」と叫ぶ。
地区の方が説明して下さったように、ホーッという叫び声は害鳥を追い払う姿を模したものである。

P4
 最初は練習を兼ねて大人と子供が混在して練り歩き、途中から子供を中心にしたグループを先頭に組み直し、集落の奥へと進んでいった。

 正月行事として、地区の人々が寄り集う。
 年配の方々が集まってくる子供達をみて「あー大きくなったねー」という風景。 「まあまあ御神酒どうぞ」と男達が紙コップで酒を交わす風景。
 少子化と言われる今、昔から続く人々の絆を固める行事を少しだけ覗かせていただいた夜でした。


 0~33秒 出発前、古館集会所内での練習風景
 33~50秒 「鳥追い」歌を歌いながら地区内をまわる
 50~1分3秒 辻(三叉路、十字路)にさしかかると、鐘と太鼓を鳴らし「ホーッ」と叫ぶ。害鳥を追い払う姿を模したものである。

参考文献
 市村幸夫 「古館の「鳥追い」行事」 村山民俗学会会報 第232号 2011年2月
 山形市史別巻 2 生活文化編

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コメント

雪、ないですね。

見せていただいてありがとうございます。

一所懸命な大人の姿にも有難さをを感じます。
子どもたちを大切にしているのですね。

今の意味で大切にする、というのと根本的に
違うような気がします。

投稿: 新目真紀子 | 2016.01.11 07:24

re:新目様
 
<<一所懸命な大人の姿にも有難さをを感じます。

記事では割愛しましたが、この行事も断絶の危機にあったのですが、この地区では長らく火事の発生が無く「鳥追い」のおかげとして、周辺地区在住の子供達にも呼びかけて存続しているとのことです。

 参加されている子供さんも小学高低学年が主でしょうか、保護者の方と一緒に参加されている姿が多かったですね。
 記事や文献には記されていませんが、集会所の厨房で豚汁や甘酒を御用意されていたのでしょう、地区の年配の女性の方々も集まっており、本当に地区の皆さん力合わせて、といった雰囲気の催しでした。

<<雪、ないですね。
例年の「鳥追い」ですと子供達が雪灯籠を作ったりしていたようですが、今年は暖冬を象徴するように雨でした。

 雪国に生活する者として、正直「雪かきしなくて済む」という気持ちもあるのですが、我が子が冬休み中に「全く」積雪を経験していないという現実に、「温暖化」の不安を感じ始めている次第です。

投稿: 聖母峰 | 2016.01.11 23:30

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