理由も無く、白木山。
日曜。
広島市第2位の山、白木山(889m)をめざす。
以前、2013年3月末に登って以来、2度目の登山となる。
始発の芸備線に乗り、JR白木山に到着。
6時20分、日の出まであと20分という薄暗い時間。
急登を一歩一歩進む。
山頂が近くなると、あちこちに残雪がみえてくる。
西日本の山とはいえ、まだ春浅い。
山頂直下の小屋に置いてある中華鍋には、びっしり氷が張っている。
霜柱の登山道を踏みつけながら、綺麗な芝で覆われた山頂へ。
まもなく、単独行の女性登山者がやってきた。
彼女はちょっと険しい表情で山頂神社に向かう。
その間、冷たい風が吹いているので私はアウターを取り出し着用。
背後から、神社の前で柏手を打つ音が聞こえる。
ザックからコーヒーを取り出していると、さきほどの女性が、穏やかな表情で
「ここに福寿草咲いてますよ。まだ蕾だけど。」
と、わざわざ教えて下さった。
そして彼女は颯爽と下山していく。
見ず知らずの私に、わざわざ福寿草の事を知らせてくれたことに感激。
以前登ったときも、地元の女性登山者からアセビの花の事を教えていただいた。
リピーターの多い、白木山ならではである。
しかし今回は、どういう事情かはわからぬが、山頂のアセビの群落は伐採が進んでいた。
その様子を眺めていると、背後から朝日が射してきた。
ガスガスで何も見えない廻りが青空に代わる。
うっすらと、太陽と雲海が目の前にひろがる。
私は善人でもないし性格も極悪なのだが、ガスが晴れて太陽の光を浴びたことに、自然と「ありがとう」という言葉が思い浮かぶ。
広島周辺には魅力的な里山・低山がいくらでもある。
今回、再び白木山を訪れたのは、あるガイドブックがきっかけだ。
安佐北区市民部区政振興課が出版した『安佐北区ハイキングガイド あさきた里山いちばん』という本がある。
その中で見開き2ページを使い、白木山のシルエット写真が掲載され、こんなコピーが記載されている。
『理由もなく登ってみたい山でした。』
安佐南区在住の女性の寄稿文である。
理由も無く登ってみたい山。
その一言がなぜか非常に心に残った。
今、登山が盛んになり、日本アルプスや八ヶ岳等々の「ブランド」に左右される人もいれば「百名山」、「二百名山」というタイトルにこだわる方もいる。
その中で、「理由もなく登ってみたい山」。
そんな山が身近にあるなんて、登山者として幸福なことではないだろうか。
理由もなく登ってみたい、それこそハイキングやクライミングといったカテゴライズを超えた、登山の原点ではないでろうか。
ガスが晴れ、幻想的な雲海。見知らぬ他人に福寿草を教えてくれる登山者。
私にとって白木山は、登って後悔しない山である。
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