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アグン山の虹

深夜1時、パッサルアグン寺院に到着。
ここで日本語ガイド・アユさんから朝食用弁当と500ccペットボトルの水2本を支給される。
そして登山ガイド、マディさんと初対面。
我々が下山するまで、ドライバーさんとアユさんは寺院の駐車場で待機するという。

階段を登り、パッサルアグン寺院の門前でマディさんがバリヒンズー式のお祈り儀式を始める。
私たちも供物と線香を受け取り、手を合わせ、安全祈願と神への祈りを捧げる。

さあ登山開始だ。
樹林帯の中を、ヘッドランプの光を頼りに歩く。
普通ならガイド、足の弱い初心者、しんがりをベテランが務めるわけだが、おそらく部長の脚力では先頭を歩くマディさんと距離が開いてしまうことを予想し、私が中間に入り、マディさんと部長とのパイプ役、部長の誘導ガイドを兼任する。

よく聞く現地ガイドさんのように先走ってしまうわけではないのだが、マディさん、なかなか休憩を取らない。
私はいつものガイド山行のように体温が暖まったあたりを見計らい、マディさんを呼び止め、部長に衣類を調節してもらう。
「ん~これ入らないな~、大滝頼む」
部長のリュックは長らく愛用のカリマー25リットル。部長のシャツと弁当を受け取り、私のザックに入れる。
先に進むほど荷物が増える。まるで私のサラリーマン人生の如く。

出発から2時間ほどで樹林帯を抜ける。周りは低木になってきた。
進むにつれ、道が溶岩の岩場になっていく。

しかし、人が多い。
人気なのか、ガイドに連れられた欧米人パーティーと何組とも抜きつ抜かれつしながら、先を進む。
里山でトレーニングしてきたという部長、時折休憩をお願いするが、足取りはしっかりしているので大丈夫そうだ。

3時間ほど登ったところで、岩場も少し急峻になってくる。
クライミングという程では無いが、一手ホールドを掴んだり、微妙にバランスを要求される箇所が少しでてくる。
そこを通過した後、ちょっと気になっていた金髪の女の子を含むパーティーの姿が見えなくなった。
岩場で引き返したのだろう。

岩場といっても、三点支持を必要とするほどでは無いが、二本足出歩くには微妙にバランスを要求される、中途半端な角度。
暗闇の中、ひたすらそんな岩の上を登り続ける。
5時22分、大きな溶岩の亀裂だろう、窪みでほぼ全パーティーが休憩している。
風も吹いている。私がデジタル温度計で測定すると気温11度。
部長はモンベルのTシャツに長袖シャツ、フリースを着用。
私はファイントラックのスキンメッシュに夏用長袖シャツ、ゴアの雨具着用でちょうど良い。

濃いガスに包まれた。
ヘッドランプに照らされて雨粒も時折見える。
ここで退却のタイミングに迷う。
雨になれば、今まで登ってきた岩場は濡れ、最悪のコンデションになるだろう。
決断は早くしなければと思う一方、落ち着いて天空を眺めてみる。
ガスの合間に、星空が見える。
このガスは一過性だ。根拠は無い。私の勘にすぎないのだが。

部長の息が整った頃合いを見て、3人でまた登り出す。
はるか頭上にヘッドランプの光が見える。
「あそこまで結構あるよなー」と部長と話しながら、登り続ける。

5時35分。山頂の印である、神棚が目に入る。
山頂だ。

P1
「いやー、ホントに登れたー」が、部長の第一声だった。
部長、そしてガイドのマディさんと握手を交わす。
山頂には既に先行パーティーが多くいて、続々と他のパーティーも登ってくる。
山頂直下のスペースを確保し、休憩タイム。
BML社から渡された弁当の中身は、バナナ2本、ゆで卵2個、チョコバー1本、大きめの菓子パン1個(青豆餡のあんパンデニッシュ)。
部長は登山中、日本から持ってきたミニ羊羹を食べていたらしい。私も羊羹を頂戴する。
バリヒンズーの儀式をすませたマディさんが、「ティーorコーヒー?」と尋ねるので、部長と二人してコーヒーを所望。甘くて美味しい、温かいコーヒーをもらい、日の出を待つ。

P3
夜明け直前の空を眺めながら、朝食。

P4
世界各国から来たトレッカーでにぎわう山頂。日本人は私たち2人だけだった。

P5
今回同行してくれた地元登山ガイドのマディさん。
特に花やコースタイムの説明をするわけでも無く、ひたすら先行して歩くタイプのガイドさん。
ただし、岩場の必要な箇所では手を貸したりホールドを示したりしてくれる。
登山途上、頂や下山予定の寺院までの所要時間を尋ねると、正確な時間を返答してくれた。

P6
アグン山南峰山頂に立つ筆者。

P5_2
南峰頂上の右手方向から、主峰(3140m)を望む。ヘッドランプの光が幾度も光り、主峰も登山者でにぎわっていた様だ。

ちょうど日の出の時間、北側からガスと雲がかかってきた。
残念だが仕方が無い。もっとも、私は日の出よりも無事下山することで頭がいっぱいだった。
北側からアグン山中腹に雲がかかってきた。天候が悪化する前に岩場を通過したい。
「マディさん、Go back」
ザックを背負い、ゆっくり休憩している他パーティーに先行して山頂を離れる。

P6_2
すっかり明るくなり、登ってきた道を下る。
溶岩流の岩場で、似たような窪みが無数にある岩場をひたすら忍耐で下りる。
こんな形状では、初めて訪れた者なら簡単に道に迷うことだろう。

やがて灌木も多くなり、植生も変わってきたころ、

P7
虹が私たちの前に現れた。
(吉兆の虹でありますように。皆、無事下山できますように。)

部長もかなり消耗しているものの、足取りはしっかりしている。
ときおり上部をふりかえりながら、
「暗闇で山の姿がみえないから登れたもんで、もしこの岩場見えていたら、精神的にくじけただろうな」
と言う。

とはいえ、闇夜の中を登ってきたために、下山しても「こんなところ通って来たっけ」 「こんなに歩いたっけ」と距離感が伴わない。
部長には途中からストックを使っていただき、休憩を幾度もはさみながら

P8
ガスの中のパッサルアグン寺院に帰着。
寺院の芝生でストレッチをしながら、部長と2人で登山をふりかえる。
登り約4時間半、下り3時間で帰着。

無事下山できた御礼としてパッサルアグン寺院の方向に手を合わせ、ガイドのアユさん達が待つ駐車場へと向かった。

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