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韓国・仁寿峰、リボルト事業に公費投入

 日本のクライマーにもおなじみの岩場、韓国・インスボン。
 このインスボンで大々的なリボルト作業が進行中です。
 この事業は韓国の文化体育観光部、すなわち韓国政府の公費が用いられ、韓国の登山界で議論を呼び起こしています。
 
インスボン大補修事業、どう思いますか? by 月刊MOUNTAIN 2016.06.02

以下引用開始
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インスボン「大補修事業」どう思いますか? 
ボルト交換事業に対する意見、大学山岳連盟の立場 ユン・ソンジュン記者

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4月28日スユドン ノースフェイス文化センター3階会議室で開かれたインスボンの補修事業公聴会

 韓国の大学山岳連盟が4月28日、ソウル スユドン ノースフェイスアウトドア文化センター3階で 「北漢山インスボン補修事業事業説明会兼公聴会」 を開催、今年末までインスボンで大々的なルート整備作業を展開すると明らかにした。

 大学連盟は公聴会の後すぐに作業にとりかかり、これまで山岳界各方面から複数の意見が寄せられた。
 今回の事業は文化体育観光部の事業費3億ウォンの支援を受け、北漢山インスボンの老朽化した支点(ボルト、チェーン、下降用ハーケン等)の補修と交換、新設を中心に進行される。

 大学連盟によると、現在インスボンのクライミングルートは84本、合計302ピッチに達する。保守作業は、連盟側が調査したインスボンの各ルートを対象に10月までの平日を利用して実施され、予想投入人員は延べ820人である。

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大学連盟側が用意した資料の中で、ボルトと関連した内容

「ボルト新設に慎重を期すること!」
 公聴会で韓国の大学山岳連盟キム・ジョンウォン会長は「インスボンに設置された支点は、ほとんど1970年代前後に設置されて古く老朽化しクライマーの安全を脅かしている」とし、「今回を機会にルートを体系的に整備することにより、安全で快適なクライミング環境を生成し登山文化の発展に寄与したい」と説明した。

 今回の事業総括を務めたキム・ドンス(韓国外国語大学山岳部OB)チームリーダーは、「新設という言葉に敏感に反応する人が多いが、40年の間に登山しながら岩にボルトを打ち込んだことは一度しかない」とし「今後ボルトを新たに設置する場合、慎重の上に慎重を期すること」と強調した。

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大学山岳連盟キム・ジョンウォン会長

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事業の技術委員を務めたユン・ギルス チームリーダー

 技術委員会ユン・ギルス チームリーダーは、「ボルトの場合、外側に現れている部分は無傷に見えても、目に見えない岩の中では腐食が深刻で、形状や材質もばらつきがあるため、これまで管理する上で不具合があった」として、「今後は同じ材質と形状のボルトに変える計画であり、同時にピッチ終了点に複雑に設置されたワイヤーやチェーンを再整備する」と説明した。
 ユン チームリーダーはまた、「このような作業は、そのルートを開拓した山岳会や個人と十分な意見交換を経た上で進めていく」と付け加えた。 次は、山岳界の主要な人物たちから今回の事業に対して寄せられた意見である。

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 イ・ヨンデ(コーロン登山学校名誉校長) 「作業にかこつけてインスボンを傷だらけにすることはあってはならない」
  「安全と事故予防の観点から実施する作業であるため、本来の趣旨には共感する。しかし、「保守のための保守」、「ボルト交換のための交換」であってはならない。インスボンは、私たちに残された自然遺産である。補修を理由にした傷や痕跡も残してはいけないし、新たな岩の損傷行為が起きてはいけない。開拓チームが意図した歴史的な意味も考慮する必要がある。既存のボルトを撤去して、別の場所に新しいボルトを設置することは作業者数人の主観的な基準と判断で行うのではなく、多数の人々の意見を総合して妥当性を十分に検討する慎重さが優先されるべきである。インスボンは私たちのクライミングが始まった歴史的な舞台だ。作業を理由にインスボンを傷つけてはならない。予算執行のために問題の無い歩道ブロックを取り除き、新しいものと交換する事例のような事が起こってはならない。」

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ユ・ハクジュ(登山家) 「他の岩場の点検・拡大・解放するきっかけとならなければならない」
 「今までインスボンの保守作業は、一部の人が必要経費を負担して進めたことは知られている。今回をきっかけに、政府が引き続き山の安全、事故防止に貢献しなければならない。国民がより多様なスポーツを楽しむための政府の配慮が必要である。
 また、この事業が韓国の多くのロッククライミング対象地を確認することができるきっかけになったらと考える。 これにより、複数の岩場を拡大、開放しなければならない。ただし、今回の作業のためにクライミングの質が歪曲されてはならない。
 インスボンのほとんどのクラックコースには、ボルトが過度に設置されている傾向がある。この部分も整備しなければならない。クラックはボルトではなく、私たちが持っているプロテクションを使用して登る必要がある。また、クライマーによっては各ルートのクラック部分や面白いところだけ登って下降して、他のルートに移動したりもするが、このような行為のために迷惑をこうむるクライマーが多い。避けられない場合を除いて、このような行為を防止するために、登山ピッチ終了点と下降ポイントを区別して補強することが望まれる。落石地域の保護施設の強化やインスボンで育っている樹木の保護にも関心を持って作業が進めるべきだ。今回の作業でインスボンが「生き返る」きっかけになってほしい。」

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ジョン・スングォン(ジョンスングォン登山学校長) 「欲望、過信、名声、名誉などを求めては成らないこと」
  「優先的なビレイポイント(ピッチ終了点)に設置されたボルトとワイヤーの交換・新設は必要だと思う。ただし、不安定な状態であるかを正確に把握しなければならない。ボルトの表面が錆びただけなら不安定な状態ではない。 また、テラスの大きさと、人々が混雑した程度の違いをよく考慮する必要がある。 例えば、複数の人が座ることができる広々としたテラスのような場所であれば、自分のギアを利用してビレイポイントにセルフビレイをとり、後続のビレイは直接確保(訳者注: 「直接確保」は原文のまま) すればよい。 例えばハングの下のような所、現在はハングの下部、上部、すべてのビレイポイントにボルトが濫用されている。
 しかし、南面の第1バンドのビレイポイント、すなわち、「空」、「クロニクル」、「東洋」、「巨竜」、「旅」、「チョンメク」などのルートが合流するビレイポイントは、複数のルートが重複しスタンスも良くない観点から、新設すべきだと思う。

 だが中間支点として使用されているボルトの場合は、ルートの人気と難易度を考慮して、保守あるいは無視しなければならない。 また、クラックにもかかわらず埋め込まれているボルトは、カムなどを容易にきめられる場所であれば、最初から抜いたり交換する必要はないと思う。
 懸念される点は、ボルトの交換という名目で公費が引き続きサポートされる先例があれば、今後は政府と山岳団体によってなし崩しにボルト交換作業を乱発されるのではないかと心配だ。
 これらのことはクライマーがリスクを見いだし、最小限のプロテクションで自ら解決しなければならないものである。その点において、成熟したクライミング文化なのにボルトの交換が当たり前のように誤解されるのではと心配だ。

 安全なクライミングが重要だが、安全はボルト設置だけで解決されるわけではない。
 全体的に成熟したクライミング技術がクライマーの安全を守ってくれるのであって、アメリカのヨセミテ国立公園の岩場はビレイポイント以外のボルトを探すのが容易ではない。ボルトに依存するクライマーがこんなところでクライミングを安全に行うことができるだろうか?
 今回の事業は、クライマーたちがインスボンを保守・管理するという点に意義がある。苦労に謝意を表す一方で、検討を切に望む。また、このようなことから欲望、過信、名声、名誉などを求めてはならないという点も知ってほしい。

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ソン・ジョンジュン(ソン・ジョンジュン クライミング研究所)「政府の公式許可を受けた保守事業を歓迎」
 インスボン西面のヌトバラム(1P)と幻想列車(2P)を2000年初頭に開拓した。継続的な管理はしてきていたが、ヌトバラムルートの場合、開拓時には錆びていなかったボルトハンガーが3本錆びており、交換を検討していたが国立公園内という問題から時期をうかがっていた。今回の事業を通じて、一緒に交換作業がなされたらと思っている。

 もちろん、他のルートの場合、開拓した各山岳会で補修することができればいいが、現実的には不可能だと思われる。経験豊富な諸兄の指揮下、開拓した山岳会の意見を最大限反映して実施し、現時点の登山文化と倫理に反しない、環境的な部分も最大限考慮した状態で、作業が進められたらと思う。何よりも、国立公園との摩擦なしに作業が行われるという点、インスボンが政府から公式なロッククライミング対象地として指定されたという意味があると思い、個人的には今回の事業を積極的に考えて注目している。

 しかし、保守作業は、多くの時間と悩みを要する作業だ。まず、ボルトとハンガーの選択(岩の形に依存するボルトとハンガーの規格)、第2に、ボルトの位置に応じた無分別な乱用(インスボンは古典的なルートで構成されたコースが多い。危険だからと無条件にボルトを設置することには反対する)、第3に、保守作業の完了時にボルトの痕跡を消去(技術的な手法が必要)などの3点に注意しなければならない。これまでのロッククライミングに対する否定的な見解が積極的に変化したと見ている。今回の機会をうまく生かし、立位置が狭くなったロッククライミングにとって閉ざされた対象地が開かれ、クライマー達の選択の幅が広がれば良いと思う。」

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ユン・デピョ(登山家)「公的資金支援のプロセスが気になる」
 インスボンのいくつかのルートは、便宜上ビレイポイントは、そのルートと離れていて危険な場合がある。また、開拓者の身体条件に合わせてボルトが打ち込まれているところもありますが、現在、このようなルートは、クライマーの能力や身体条件に応じて、危険な場合もあればそうではない場合もある。老朽化したボルトの交換や新設も重要だが、少数のクライマーに合わせて作られた、このようなルートの修正作業も必要である。今回の事業にどのような基準が適用されて進行しているのかが気になる。
 また、インスボンの補修は連盟が着実に行ってきた。同じ意味合いの今回の作業自体は承認する。しかし、3億ウォンという公的な資金を投入して大々的に展開することではない。さらに、国の予算がどのようにサポートしたのかについての十分な説明が必要である。

mini interview

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キム・ドンス(韓国外大山岳部OB、北漢山インスボンの補修事業TFT総括チームリーダー)
「インスボンの保守が肯定的な評価を得ること」

 インスボンは、国内山岳界で象徴的なピークである。したがって、今回の補修事業に関連する議論がこれまで以上に熱い状況にある。前述に提起したいくつかの意見を総合してみると、環境とルートの歴史性の保全に関心が集中している。インスボン保守作業を統括するキム・ドンス チームリーダーが複数の疑問に対して回答した。

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 インスボン西壁アルペンローゼスルートから撤去した錆びたボルト。上記の黄色の紙上に置かれたボルトに交換される予定である。

 作業を見守ったクライマーの証言によると、既存のボルトを抜き、その横に穴を開けて再び新しいボルトを打ち込む作業をしていると聞いた。当時どのような状況だったのか?

 クライマーの安全を最優先に考えた上で判断、作業を進めている。もしボルトを抜いて、その穴を生かすことができれば当然そうするし、そうでなければ新たにドリリングする方法で進行している。後者の場合、跡が残らないように巧く処理している。

 現在インスボンはビレイポイントとルートが離れていて危険な場所、開拓者の身体条件に合わせてボルト間隔に問題があるとされている。このようなことも保守作業に含まれているか?作業基準はどのようなものか?

 当然含まれる。開拓当時の条件と、今では多くが異なっている。クライミングの方式も変わった。交換するボルトの基準は決められている(危険であると判断されたボルト、一見正常なものであっても簡単に抜けてしまう場合があった。このようなボルトが交換対象となる)。そして、安全なクライミングに問題があると思われるところもボルトの位置を修正している。安全性と現在の国内のクライミングの流れを考慮し検討している。もちろん、現場で作業している作業員は韓国最高レベルであり、すべての作業は、私たちの良心と判断、所信に基づき行われる。

ボルトを一つ一つ全て抜いて確認しているのか?

 すでにインスボンに打ち込まれている全てのボルトは、事前精査(写真撮影など)を経た。多くの人々が考えているよりも、中が腐ったボルトが多い。

各ルートを開拓した山岳会によっては、本事業に対する意見が幾つかあるが?

 友情山岳会と剣岳山岳会には謝意を伝えた。この他にも、どのような意見であっても、それが現実的に受け入れることができるものであれば作業に反映させる。今すぐにもインスボンでクライミングする人から反応が出てくるだろう。精密に保守されたルートと、そうでないルートに対する反応だ。多くの人が肯定的に評価してくれるものと確信している。

政府の公費支援に問題があるという意見がある。どのように考えるか。

 スタッフの中で、特に生活に困窮している人もいなければ、誰も政府に対して予算を獲得するため締め付けたこともない。インスボンルート補修の哲学に政府関係者が感化されたために可能になったものだ。私たちが使ったすべての費用は、毎月末に文教体育省のパソコンに入力しなければならない。問題が発生した場合、すべて弁償しなければならない。誰もが公的資金をむやみに使っているわけではない。
 私もこの事業に関連する業務で交通費、食事代の費用は受け取っておらず、作業員たちは食事も不十分で皆体重が2~3kg落ちている状態だ。このような状況から、妻に頼んで食事を支援してもらったこともある。支援金が十分だから、このような活動を始めたわけではない。大学連盟が作業が引き受けたのは、事業進行の透明性と効果を認めて引き受けたものだ。

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以上引用おわり

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