« 月山残雪情報【2016年7月17日現在】 | トップページ | 光の山 »

ラインホルト・メスナー、21世紀の闘い

ヨーロッパ・アルプス、イタリア・オーストリア国境に位置するブレンナー峠。

脳味噌空っぽなイギリス人がEU離脱を選挙で決めた大騒動の陰で日本のメディアではほとんど採り上げられませんが、この峠を巡り、ラインホルト・メスナーが極右政党に対して論陣を張って対抗しています。

Südtirol-Sager: Messner legt sich mit Strache an by krone.at 2016.5.6

Mes1
オーストリアの日刊紙Kronen Zeitungのウェブサイトに掲載されたコラ画像。
左がオーストリア自由党党首ハインツ=クリスティアン・シュトラーヒェ、右が南チロル・緑の党議員のラインホルト・メスナー

 事の発端は、シリア難民問題で揺れるヨーロッパ、オーストリアが難民流入を抑制するためにイタリア国境にあるブレンナー峠の封鎖を進めたこと。
 極右とされるオーストリア自由党党首、ハインツ=クリスティアン・シュトラーヒェ(以下、本人も用いる略称HCと略)が、 「我々はイスラム化やテロリスト流入に対抗する」 とノリノリで張り切り、あまりに張り切りすぎてブレンナー峠がある南チロル地方に関して「住民自身が決めることだが南チロル統合を願う」と発言。これに対して南チロル地方を擁するイタリア側が反発。
 難民問題と南チロル統合問題が重複してややこしいことになっています。

 これに対してラインホルト・メスナーは「我々が助けずして、難民は誰が助けるのか?」と題された記事で国境封鎖に反対の姿勢を表明。自由党党首HCに対しては、「ポピュリストは南チロルの平和を破壊する」と厳しく批判しています。
 その姿勢には難民援助という人道問題だけではなく、観光収入が財政を支える南チロルの観光客減への懸念も含まれます。

 メスナーとHCが論争している間、国境閉鎖が進むブレンナー峠ではイタリア系住民による国境封鎖反対のデモ隊と警官隊が衝突、ガス弾で鎮圧される事態に至っています。

Bre
ブレンナー峠で対峙する警官隊とデモ隊

 ブレンナー峠でのデモ隊鎮圧の様子↓

 さらに輪をかけて、5月22日に行われたのが当事者であるオーストリアの大統領選挙。
 こちらでは有権者460万人のうち3万票の僅差で、緑の党出身のアレクサンドル・ファン・デア・ベレン氏がHCを破り当選。EU加盟国初の極右大統領当選は僅差で阻止されました。

 南チロル問題に首を突っ込むのは、極東の島国の土木作業員ごときの私には泥沼にはまるのでやめときますが、ブレンナー峠封鎖問題でラインホルト・メスナーが語った印象的な言葉を引用します。
 メスナーがヒマラヤだけでなく、世界各地を冒険、サハラ砂漠横断などの経験を積んでいることを紹介して次のような言葉がオーストリアのメディアで紹介されています。

------------------------------------
Und in der Wildnis gibt es keinen Streit, da würde eine Gruppe alles tun, um den Schwachen, den Kranken, den Verletzten zu helfen, weil die Gruppe besser überleben kann, wenn alle am Leben bleiben

Reinhold Messner

( 荒野では争いは存在しない。病や怪我など、集団で助け合って生きている。なぜならば、集団ならばより良く生き延びることが出来るからだ。 ラインホルト・メスナー )
------------------------------------

 著書『Die großen Wande - Geschichte, Routen, Erlebnisse』(邦題 『大岩壁』)では、ローツェやマカルーなどの未踏の大岩壁を「21世紀の課題」と表現しているラインホルト・メスナー。
 メスナーって、リカルド・カシンがそうであったように、将来老境に入ったら若手を育成してそれら未踏の岩壁に挑むのか?と昔予想していたんですが、実際は政治家の道を進みました。
 
 シリア難民問題、イギリスの離脱によるEU分裂の問題、オーストリア大統領選、そしてラインホルト・メスナーを深く注視していた方はご存じでしょうが、その人生につきまとう「南チロル」分離独立問題。
 これらがいっぺんに重複して噴出したのが、まさに現在。
 ラインホルト・メスナーが「21世紀の課題」として直面したのは、大岩壁ではなく、グローバルな政治的課題でした。
 
 そして7月に入った今、オーストリアでは選挙運営に問題があったとして、憲法裁判所が大統領選挙のやり直しを命じました。前回の選挙直後から選挙無効を訴えていた自由党が返り咲くのか。

 日本のマスコミが報じないところで、まだまたラインホルト・メスナーの政治活動は続くようです。

« 月山残雪情報【2016年7月17日現在】 | トップページ | 光の山 »

マ ス ゴ ミ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/63931136

この記事へのトラックバック一覧です: ラインホルト・メスナー、21世紀の闘い:

« 月山残雪情報【2016年7月17日現在】 | トップページ | 光の山 »