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二十三人の祈れる男 【尾花沢市 愛宕神社 裸参拝 体験記】

2017年1月8日、尾花沢市延沢・三日町地区で行われる「裸参拝(はだかまいり)」に参拝者として参加。

真冬の尾花沢で、下帯姿で人々の前で水垢離をおこない、近郊の里山山頂にある愛宕神社に参拝するという行事である。この行事は一度途絶したが、23年前、地元有志により復活した行事である。

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尾花沢市公式ウェブサイトより引用

山形県内の伝統行事の姿を追い求めて、カメラ片手に各地をまわってきた。
その度に思うのは、「当事者として参加してみたい」ということ。
文献やネット、動画だけでは知ることの出来ない風景、人々。
私はそれを見たい・感じたいのだ。

幸い、尾花沢市の「裸参拝」は参拝者を一般公募している。
「この時期に風邪ひいたらどうするの?」 というカミさんの忠告は無視して粛々と準備を進める。
裸参拝実行委員長の豊島氏に電話連絡をとり、当日必要なもの、集合時間などを確認する。

参加者が持参するのは足袋とサラシ。
足袋は近所の「しまむら」で1200円で購入。
サラシはベビー用品店「バースディ」で1280円で購入。

8日、連絡いただいた集合時間16時前に現地に到着。
指定されたJA施設の駐車場に車を停め、そこから2~3分ほど歩いた路上が水垢離の会場、目の前の納屋が男達の控え室だった。

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16時、まだ誰もいない水垢離会場にて

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三体の木像が会場を見守る

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男達が浴びる冷水が、静かにそのときを待つ。

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納屋に続々と参拝者が集まってくる。
来た方から下帯の準備。初心者は地元の方にサラシを巻いてもらう。
私もサラシの巻き方は全く知らないので、素直に巻いていただきました。
差し入れの大量の握り飯と、下帯姿の男たちに「日本」を感じる。

米どころ山形、握り飯はとても美味しかったのですが、皆緊張しているせいかあまり手が伸びません。

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参拝者に配布されるワラジ。
全て地元の方々の手作りです。おろそかにできない。

開会は18時。
参拝参列の順序を決める方法はあみだくじ。

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本日の参拝者は23人の男達。
県外からの参加者も多く、北は北海道、南は福井から参加の方がおられました。
あみだくじの結果が次々と言い渡される。
私は「7番目」として第一陣に加わる。

開会18時が近づくと、皆そわそわしてくるのがわかる。
私も気分転換に外にでる。もう日は落ちて真っ暗。
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例年ならば雪灯籠が作られているのだが、山形でも豪雪地として知られる尾花沢でも今年は異常なまでに雪が少ない。
ペットボトルを利用して、可愛らしい灯籠が道端に設けられていた。

「今年は(暖冬で)例年より優しい初心者向けだなあ」
と実行委員会の方が笑っていたが、やがて外は強風が吹き始めた。

そして開会の時間がくる。
下帯姿に上着を着用して、地元住民の方々、多数のカメラマンが待つ会場へ移動。
参拝者は拡声器片手に自己紹介をする。住所、名前、祈願する思いを述べるのだ。

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ライトに照らされ、人々の前で自己紹介と祈願する目的を披露する。

私の番だ。
「おばんですっ! 山形市から参りました大滝と申します! 子供の健康を祈るために参加しましたっ!始めての参加ですよろしくお願いしますっ!」
と拡声器で叫ぶ。

・・・ごめんなさい尾花沢の皆さん、神様、仏様。

大嘘です。

心の中では、
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と祈りました。

自己紹介と来賓挨拶の後、全員納屋に戻り、上着を脱ぎ、ついに「裸参拝」が始まる。
23人は第一陣と第二陣の二つに分かれる。
たくさんの地元の方々、カメラマンが待つ会場に歩み進む。
もう体中にアドレナリンがまわっているのか興奮のせいか、あまり寒さは感じない。
始めに、結構綺麗な巫女さんからお祓いを受ける。
さあ、水垢離の時が来た。

納屋で行われた説明では、
一、心臓から離れた右肩後ろに最初に水をかける。
二、次に左肩うしろに水をかける。
三、最後に背中中心に水をかける。このとき頭からザブンとかけると後々冷えて大変なので、頭・首を避けて背中にかけること。
と言われていた。

地元住民の方の掛け声、多数のカメラマンのフラッシュに皆さん気合いが入ったのだろう。

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(尾花沢市公式ウェブサイトより引用 昨年の写真です)
最初の方から、おもいっきり頭の上にざぶんと水をかけている。
並ぶ参拝者の間で、
「おい、話とちがうぞ」
「みんな最初から振りきってんなー」
とささやきあう。

私の番。
会場に一礼し、台に登り、右肩、左肩に水をかける。
もう興奮しているので冷たさはあまり感じない。
そして最後に一発、水の入った桶を振りかぶって上から背中に水を浴びる。
背後に並ぶ参拝者から
「おおっチャレンジャーだっ」と声が漏れ聞こえたので、それなりに豪快に水かぶれたかな。
台座から下り、愛宕神社の鳥居目指して参道を突っ走る。

※参拝者としての節度を考えて、水垢離の前後はカメラを手にしていませんので自分の画像はありません。

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愛宕神社まで250段の石段を登らなければならない。
1番手が第一陣の皆を待ってくれていた。
松明片手に、寒さに耐えながら暗闇の参道を行く。
この非日常性。

皆が息切れする頃、山頂の愛宕神社に到着。
お社の中にはいり、あらかじめ渡されていた2本の蝋燭の内1本を灯して捧げ、全員で参拝。
続いて、すぐ脇にあるお稲荷様の社に残る1本の蝋燭を灯さずに捧げる。

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御幣の付いた腰縄は、ここの鳥居に奉納する。
濡れている上に苔の生えた石段を皆で慎重に下りる。

参道を走って戻り、途中の大鳥居に
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履いてきたワラジを奉納。
ここまで来ると参拝者皆に不思議な一体感を感じる。
皆で協力し、脚立を押さえてあげたりして全員奉納するのを待つ。
全員そろったところで、会場めざして走る。

会場にもどったところで、松明を持っている者はおさいどう(山積みされたワラ)に点火。
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折からの強風でメチャメチャ激しく燃える。

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手の空いた者は餅をつく。

そして納屋に戻る。
その暖かさ。
一人が戻る毎に「おつかれさまー」と声がかかる。
出発前とうってかわって、裸参拝をやり終えた親近感。

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納屋の隣の建物では多くの方々に餅と豚汁がふるまわれていました。

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ふるまう料理の準備に大忙しの三日町地区女性の皆様。本当にありがとうございました。

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ひととおり皆が着替えたところで、参拝者、実行委員関係者で公民館に移動し、直会(なおらい)。

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あらためて自己紹介と感想発表。
落ち着いた場所で、他の参加者の皆様ともいろいろな話を伺いました。
実行委員長の豊島氏の話では、行事を復活させた23年前は本当に小さな催しで、数えるほどの人の前で水をかぶっていたとのこと。
先ほどの盛り上がりを拝見するに、地元の方々の並々ならぬご尽力があったことは想像に難くない。

直会の自己紹介で、今年初めて参加された若い方でしたが、
「自分の地元にこんな行事があるとは知らなかった、これからは積極的に地区の行事に参加していきたい」とおっしゃってました。
地域の活発化って、どこぞの大学教授やコンサルの爺が指南するものじゃなくて、若い世代が自発的に行動するところから始まるんではなかろうか。
この行事でも、『地域興し協力隊』の方々が活躍されていました。

私の感想は、裸参拝の準備段階ではなんとなくよそよそしい雰囲気の男達が、行事が進むにつれて力と声をあわせていく一体感、達成感を共有できるひとときの素晴らしさ、それは何物にも代え難いと思いました。

最後に、私たち余所からきた参加者をも温かく受け入れて下さり、様々な準備を進めていただいた実行委員会の皆様、数々の美味しい手料理でもてなしてくれた地区女性の皆様、延沢三日町地区の皆様に、素晴らしい体験をさせていただいたことを深く感謝申し上げます。

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