最近は登山装備もだいぶ軽くなりましたよね。
でもテント泊なんかでザックの重量に悩まされている方もいますでしょうか。
アリゾナ州立大学のヒューマン・マシン・インテグレーション研究所の研究者、トーマス・シュガー氏が、人体に与えるザック加重の負担を軽減すべく、サスペンション付きのザック『Pogo pack』ポーゴパックを開発研究、試作段階に入っています。
Pogo pack: ASU innovator creates wearable, trail tech — and we put it to the test by アリゾナ州立大学 2017.4.17

人体への加重を軽減するため組み込まれたサスペンションシステム。
どんな動きをするか、デモ動画をぜひご覧下さい↓
Pogo Pack test on Peralta Trail - Superstition Mountains, Arizona from ASU Now on Vimeo.

パックはsea to summit 、ショルダーベルトはアメリカ軍用パックの製品を流用した試作品、フィールドテストが重ねられています。
このポーゴパック、サスペンション駆動のためリチウムイオンバッテリーとモーターが使われています。
動画をご覧頂くとおわかりのように、山道を歩いた時の人体の上下動に併せてパックが揺れ、加重軽減を果たしています。
試作品、いくつかの短所があります。
山道を歩いているとモーター駆動の音が「野生動物が怒った声」として周囲に聞こえてしまう。
歩行中に立ち止まったりすると、パックの動きが止まらず体が振られてしまう。
などなど。
さてこのポーゴパック。
もともとは軍用品として、30~50kgのザックを背負う兵士の負担軽減のために開発されたものです。
しかし製作コストが増大したこと、ザック本体の重さが5kgを超えてしまい、アメリカ軍が興味を失ってしまったとのこと。「新兵のシゴキには使えそーだな」とジョークを言われたとか。
このアリゾナ大学のトーマス・シュガー氏、他に開発中の製品として、

時速24km(フルマラソン2時間切れる)の速さで走れるロボットスーツ

スパイダーマンみたいに、どこでも登れるロボットスーツ
その他(以下省略)、様々なロボットスーツを開発中だとか。
いやもうロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』のパワードスーツの世界ですね。
ここで注目されたいのは、いつかはアウトドアの世界に還元されるであろう技術・製品が、軍事用として研究が進められていることです。
上記アリゾナ州立大学の記事でも、軍民転換の一例として、第二次世界大戦後、軍の余剰物資のイカダの存在がホワイトウォーター・ラフティングの隆盛につながったことが挙げられています。
先日、日本学術会議が「軍学共同反対」の声明を出しました。
私個人の意見としては、国家から運営費、国民から学費を得て成り立っている大学が国家の安全保障・平和維持に全く関与せずという姿勢を示すことに違和感を持たざるを得ません。
私自身が仕事関係で直接伺った話として、ベトナム戦争当時、日本の某大学農学部にアメリカ政府関係者が頻繁に接触を求めてきたという話を聞いていますし(ベトナム戦争、アメリカ軍、農学部といえば何を意味するか、歴史を知る方ならピンとくると思います)、学術研究の成果が大量破壊兵器の開発につながった歴史はもちろん忘れてはならないことです。
その一方、アメリカで軍用品として開発されたテクノロジー、製品が、やがて民間品としてアウトドア愛好家の手に渡るという現実は、「平和国家」日本の住民として知るべきでしょう。
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