「クライマーは清貧であれ」という幻想
このネタは前々から気になっていましたが、年末に駆け足で紹介します。
Climbing誌ウェブサイトにおいて、クライマーのCM出演に関する是非が話題になりました。
Opinion: Chris Sharma's Polo Ad—Climbers, Cologne, and Confusion by Climbeing 2017.11.10
発端は、クリス・シャーマがラルフ・ローレン・PoloのコロンのCMに出演、インスタグラムでも画像が公開されたことにあります。
これを受けてクライマーからは「残念」 「次はグッチか?」などの非難めいたコメントが続々寄せられたとのこと。
クライマーがCM出演して何が悪いのか?
と私が吠える前に、上記Climbing誌ウェブサイト記事にあるコメント欄の一言が正論といえると思います。
いわく、
『Why should modern climbers be held to "standards" that never actually existed?』
(現在のクライマーが、存在もしないスタンダードに束縛される必要はない。)
いわゆるレジェンドと言われるクライマー、失業保険で生活し、クライミング一筋の人生を送り・・というのが、クリス・シャーマを非難する人々の頭にあるようです。
現実には、以前から幾人かのクライマーがCMに出演しているという現実があります。
その例を動画で見てみましょう。
ラインホルト・メスナー。
「超人」も山でモノ落っことすんですねw
ロン・カウク。フォード社のCMです。
ケティ・ブラウンとアレックス・オノルド。
「清貧」が一部のクライマーの理想像らしいですが、2人が出演してるのは金融業CITIBANKのCMだなんて、なんて皮肉でしょう(冷笑)
さらに動画・画像は見つけられませんでしたが、ジョン・バーカーもヒゲ剃りで有名なジレット(Gillette)のCMで38000$の収入を得ています。
今回のClimbing誌の記事を一読して奇異に思ったのは、私が記憶している限り、ケティ・ブラウンのCITIBANKのCMは当時のアメリカ国内ではかなり好意的に受け入れられ、CNNでもCM制作の背景や音楽に関して特集が組まれるほどでした。
クリス・シャーマがコロンのCMに出演して、何を今さら問題視されなければならないのか?
さらに記事中では韓国のキム・ジャインのCM出演が引き合いに出されています。
同じ化粧品でもクリス・シャーマが問題視されてキム・ジャインのCM出演は容認されている、とライターのJohn Burgman氏は記述していますが、彼は韓国事情を知らないのでしょう。
キム・ジャインは今や韓国国内では国民的英雄であり、プライドが高く同胞意識の強い韓国のクライマーがキム・ジャインのCM出演を非難することなど無いでしょう。(少なくとも私は見聞したことがない)
クライマーは「清貧」であれ、という幻想を抱いている方は、残念ながら時代に取り残されていると言わざるを得ません。(理想像を抱く方は、どうぞご自由に。)
このような問題は、クライミングの五輪競技採用となった今後、必ず再浮上することでしょう。
五輪競技に採用された瞬間から(まあ五輪競技に関係なくともいえますが)、クライマーも他種目のアスリートと同様、スポンサーや商業主義との関係において倫理性を求められることになります。
だいたい、クリス・シャーマを問題視するくらいだったら、実現しそうもない計画をふりかざして「夢」を語る似非単独登山家を血祭りにあげてもらいたいものです。
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