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【訃報】 エリザベス・ホーリー女史 逝去

 50年以上にわたってヒマラヤ登山を記録し続けてきたジャーナリスト、エリザベス・ホーリー(Elizabeth Hawley)女史が1月26日、肺炎のためカトマンズ市内の病院にて亡くなりました。94歳でした。

Chronicler of Himalayan expeditions Elizabeth Hawley passes away by The Himalayan Times 2018.1.26

Goodbye Miss Elizabeth Hawley, legendary chronicler of Himalayan expeditions by Planetmountain 2018.1.26

Afp
在りし日のエリザベス・ホーリー女史(AFP通信)

 1923年アメリカのシカゴ生まれ、1943年ミシガン大学卒、その後1960年にネパールに移り住みロイター通信記者として活動、1963年のエベレスト西稜アメリカ隊の成功をスクープして以来、女史の克明なヒマラヤ登山の記録が始まりました。

 その克明な記録と鋭い言動、日本でも「ホーリーおばさん」の『洗礼』を経験した方は少なくないでしょう。
 2010年のBBCでのインタビューでこんな風に答えています。

「クライマーを怖がらせるつもりは無いけれど、たぶん「調停人」くらいには思われていたでしょう。」
「彼らが私に真実を語ることを恐れるかも知れませんが、それは価値のあることかもしれないのです。」
"I don't mean to frighten people, but maybe I've acquired this aura of being the arbitrator," she told the BBC in 2010. "It might scare them into telling me the truth and that might be useful."

 私個人の見解ですが、近年の、エリザベス・ホーリー女史をまるで「登頂認定人」のように扱う風潮に疑問を抱かざるを得ません。
 登頂報告に赴いたクライマーに対して女史が幾つか質問を投げかけ、登頂が事実と確認した上で「登頂おめでとう」と祝福したり、つい数日前に同じ山に登頂したクライマーから得た証拠写真を提示したりという行動があったのは事実です。
 
 しかし記録者たるエリザベス・ホーリー女史を「登頂認定機関」のように扱う態度は、「なにをもって登頂とするのか」 「なんのために頂上をめざすのか」 登山者としての主体性を自ら放棄しているとしか思えません。
 先年の8000m峰14座「女性初登」記録を巡る、オ・ウンソン女史のスキャンダルおよびそれを巡る韓国メディアにおける、エリサベス・ホーリー女史の一言一句に右往左往する態度は「醜態」以外の何物でもない。

 女史の偉大なところは、50年以上にわたり、約1万隊にわたる登山隊の成果を克明に記録しつづけたことにあります。
 池田常道氏も前々から指摘していますが、プロ野球では試合の一球すらスコアとしてきちんと記録されているのに対し、登山では報告すら残されないケースが多い。 まして近年の商業登山隊全盛ではさらに状況はカオスになってきました。
 そのような状況下でも記録を続けたホーリー女史の偉業は、今後もデータベースとして意志を継ぐ者によって書き加えられることでしょう。

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エリザベス・ホーリー女史の思い出

 過去2回ほど、エリザベス・ホーリー女史と面会したことがある。
 初めての8000m峰を経験した21歳の秋、このときはあまり記憶に残っていない。
 2度目、世界で一番高いチョモなんとか山に遠征した際、ホーリー女史はカトマンズの悪路を自らワーゲンを運転してやってきたのでした。

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私たちのインタビューのためわざわざご足労いただいたエリサベス・ホーリー女史。当時はご自分で青い「ビートル」を運転してやってきました。(1996年カトマンズにて筆者撮影)

 以前にも当ブログで書きましたが、強烈に印象に残っていること。
 登山計画のインタビュー中、副隊長の園田さんが気を遣ってホーリー女史のグラスにコーラを注ごうとした時、「いえ、結構」と園田さんの手をとどめ、ご自分でグラスにコーラを注いでいた。

 愛読紙・産経新聞が好んで「凛とした女性」という表現を使うが、日本女性で「凛とした」方なんて、あまり記憶に無い。(ボク何か失礼なこと書きました?)
 日本人ではないが、「凛とした」という表現を読むにつけ、なぜか私はエリサベス・ホーリー女史を思い起こすのだ。 時には厳しい・鋭い言動で知られる女史だが、私の手元に残っている記念写真では、笑顔で私たちと並んでいる女史の姿が残っている。

 ヒマラヤ登山史を見つめ続けた、偉大な先達の逝去に哀悼の意を表します。

「ホーリーおばさん」の雰囲気を知ってもらうため、ぜひこちらの動画をご覧下さい。

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