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舞台なきアスリートたち

平昌オリンピック開催を目前に控えて盛り上がる1月の韓国。

大韓山岳連盟の新年レセプションの会場の片隅で、鉢巻きにプラカードを持ったクライマー達の集団がありました。

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右端で白いダウンコートを着ている男性はアイスクライミング競技の第一人者、パク・フィヨン氏。(画像:月刊『人と山』誌ウェブサイト掲示板)
プラカードやハチマキには韓国語で『辞任せよ』という文字が読み取れます。
平昌オリンピックにおけるアイスクライミング公開競技開催失敗は、大韓山岳連盟キム・ジョンギル会長の辞任を求める運動に発展、アイスクライマー有志が会長辞任を求める声明を文書で提出する事態となりました。

アイスクライミング公開競技の「催行失敗」に至るまでの経緯を、ついに全国紙である韓国・中央日報もとりあげました。

「アイスキング」パク・フィヨン 「オリンピック正式種目になる機会を失った山岳連盟は責任を負わなければならない」 by 中央日報 2018.3.1

以下引用開始
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「アイスキング」パク・フィヨン 「オリンピック正式種目になる機会を失った山岳連盟は責任を負わなければならない」 キム・ヨンジュ記者 

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 パク・フィヨン(36)は「アイスキング」と呼ばれる。2000年にスポーツクライミング代表を経て2006年以来、アイスクライミング(アイスクライミング)国家代表として活動中である。
 アイスキングは海外でもトップレベルである。国際山岳連盟(UIAA)が主催するアイスクライミングワールドカップでは上位を守り、昨年はワールドチャンピオンの座に登り詰めた。また韓国は2011年から開催された青松ワールドカップを成功裏に誘致し、全世界のアイスクライミングをリードしてきた。UIAAもその点を高く評価し、今回の平昌冬季五輪を迎え、平昌でアイスクライミングショーケース競技(試験プログラム)を開くため、昨年12月にパク・フィヨンを広報大使に任命した。

 彼は議論の中心に立たされた。アイスクライミングショーケースが、最終的に主管競技団体である大韓山岳連盟の未熟な業務処理のために失敗に終わると、彼は山岳連盟を相手に責任論を提起した。そんな彼の主張に対し歓迎する人もいたが、一部では彼を山岳連盟から除名せよという声も出ている。

 パク・フィヨンは先月21日、中央日報とのインタビューで「アイスクライミング競技を世界に知らせ、2022年の北京冬季五輪で正式種目となる絶好の機会だったが、理解できない理由でショーケースが開催されなかった。選手として指導者として、声をあげるしかなかった」と話した。
 彼はソンナム(城南)クライミングジムを運営し、スポーツ・アイスクライミングの人材を育てる指導者でもある。パク・フィヨンは「大韓山岳連盟が生まれ変わらない限り、2020年の東京オリンピックで初めて採用されるスポーツクライミング競技も傍観者となるしかないだろう」と述べた。

一進一退の連盟は国際的な恥

-オリンピックショーケース競技には、どんな意味があるのか。

「ショーケースはカルチャープログラムです。しかし単にデモンストレーションのためのショーではありません。正式種目採択という目標を持ち、オリンピックに出場する楽しさと興行性を、全世界のIOC委員たちにアピールする場なんです。アイスクライミングは、ロシアのソチ冬季五輪に続き、平昌で2番目のショーケース開催が期待されていた。平昌でショーケースが盛況であれば、2022年の北京冬季五輪に正式種目になる可能性が高まったはずなのに、惜しいです。韓国が過去10年間、実質的にアイスクライミング界をリードしてきたので、さらに惜しいんです。

-ショーケースが失敗に終わった理由をどう見るか。

「最初は「予算がない」というのが理由でした。しかし、そのような大金ではありません。当初は5億ウォンで財政難と言われ、1億~2億ウォンまで予算を減らしました。選手たちもお金がないということは知っていました。
 山岳連盟は他の競技団体のような大企業のスポンサーもなく、クライマー達がずっと会場を管理・運営してきたからです。だから選手たちも「それなら私たちも十匙一飯に加えよう」との意見が出ました。(訳者注:十匙一飯とは、「十匙の御飯を足せば一杯の飯になる、皆で力を合わせれば人を助けられるの意味)
 一部の選手は、「国際大会で獲得した賞金を出す」と言ってくれました。しかし予算より連盟の実行力不足が大きかった。ここ半年の間に「ショーケースをする、しない」と声明を変え、国際的にも恥をかいた。大会が開会されなかったことよりも胸が痛みます」

-何度も翻意した理由は何でしょう。

「キム・ジョンギル会長や他の役員に理由を尋ねましたが、まだ回答を聞いてません。前後の説明もなしに「残念だ」の一言だけです。連盟は昨年11月頃に「開催しない」と決定した後に、国内はもちろん国際的に問題になることから「開催する」とした。しかし、その後も一進一退でオリンピック開催月まで氷壁の設置場所も割り当てられませんでした。それまでも「無条件に開催する」という言葉を繰り返していました。開会式を3週間前に控えた今年1月中旬、平昌鱒釣り祭り会場でショーケースを開催する」としました。」

-鱒釣り祭り会場でオリンピックショーケースを開くことができるんでしょうか。

「オリンピック開催地から数十kmも離れたところでショーケースを開くという言葉にあきらめました。ところが、その後も海外の選手たちに「ショーケースのボランティア(選手)に参加してください」というeメールを送っていました。すでにUIAAで「白紙」と発表した後です。恥ずかしいことです。韓国はこれまでアイスクライミングのグローバル化への貢献が非常に高かったが、これまで築きあげた信頼が崩れました。個人的にも信頼を失いました」

-他の国の選手たちから恨み言をたくさん聞いたんですか。

「恨み言とまでは言いませんが、物足りなさを伝えてくる選手が多かったです。アイスクライミングは選手生命が長いので、十数年間かけて親交を積み重ねた選手がかなりいます。友人として、海外でトレーニング中に会えば、技術的な事を助言したりしてくれる。韓国で開催されるショーケースにみんな来たがっていましたが「飛行機のチケットをキャンセルすべきかどうか」訴えてくる友人が多かったです。なんと言えばいいか言葉もなく、困惑しました」

-物足りなさがたくさん残ったようですね。

「半年の間に沢山の失望を重ね、また不本意な論議の中心に立たされてつらかったです。たとえ正式種目ではないとしても、韓国で開かれたオリンピックでアイスクライミングの魅力を見せたかった。もうこのような機会は来ないと思うとより悔しいです。」

-もし北京で正式種目になれば出場するつもりですか。

「それはいいのですが、現在では可能性が低いでしょう。また北京で正式種目になるといっても、そのときには私の年齢は四十を越えています。個人的な成績よりも後輩たちの力になりたい。まだ現役選手ですが、今は後輩の面倒をみるべき時だと思う。今シーズンはクライミングの才能に恵まれた中高生10人を無料で個人指導していました。素晴らしい後輩を育てることが、私が過去10数年間クライミングに投資したことに対する答えだと思っています。」

-スポーツクライミングジム代表として韓国の登山界の将来はどう思いますか。有望な人材はいますか。

「一般の方々は韓国をスポーツクライミング最強国として認知していますが、世界のクライミングの傾向は変わりつつあります。このままの状態であれば、東京オリンピック出場も難しいでしょう。リードとスピード、ボルダリングを全て上手くこなさなければなりません。オリンピックのメダルも三種目を合わせた結果によります。」

-山岳連盟に言いたいことは。

「アイスクライミングのオリンピック正式種目採択は、今回のショーケース開催失敗のためにやむを得ず待たされることになるでしょう。連盟には、より責任のある姿勢を示して欲しい。スポーツクライミングは事実上、監督・コーチがいないのが実情です。国際大会を控えて、その都度に代表チームを作っているためです。そんな状況では体系的なトレーニングを行うこともできない。技術習得も選手自身が処理しなければならない課題です。選手と指導者層との乖離がとても大きすぎる。コーチの中に、選手に技術的アドバイスをしてくれる人がいない。その間、連盟の動きは停滞していました。改革が必要でしょう。」

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以上引用おわり

パク・フィヨン氏のfacebookを閲覧しましたが、会長辞任を求める抗議行動に関する記事でも「自分は(後輩達に対して)恥ずかしい人間でありたくない」という短い文を記しているだけでした。 上下関係が厳しい韓国社会、表だって山岳連盟の先輩方を糾弾することは大変な勇気が必要だったはずです。

さて、結局アイスクライミング競技の行方はどうなるのでしょう。
その方向性を示唆する文言が、韓国の山岳雑誌・月刊『山』2018年3月号のUIAAフリッツ・ブリジランド(Frits Vrijlandt)氏インタビューにうかがえます。

以下引用開始
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Q.アイスクライミングの冬季オリンピック正式種目採択のために、今後どのような計画がありますか。

A.冬季ユニバーシアード大会など、できるだけ多くの大会にアイスクライミングを参加させようと努力します。また、アジアチャンピオンシップをはじめ、アジアユース選手権、ナショナルカップ、ヨーロッパカップなどの大会を開催します。オリンピックのような世界大会にショーケースやオープン戦を徐々に拡大していく計画です。その後、自然に底辺も拡大して選手層も広がり、五輪正式種目に採択されることが可能だと思います。

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以上引用おわり

大韓山岳連盟の失策はさておき、UIAAではアイスクライミング競技の冬季五輪種目採択にむけて今後も活動していくようです。

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