アメリカ日記 ジョシュアツリー国立公園にてクライミング
社員研修4日め。
ロサンゼルスでのフリータイムで単独行動をとらせてもらい、ジョシュアツリー国立公園でクライミング。
計画立案段階でまず問題だったのは、宿泊地であるロサンゼルスのダウンタウンからの「足」がないこと。
フリータイム当日は日曜日なので、レンタカー会社も休日か営業時間が極端に短い。
そこで目を付けたのが、24時間体制でダウンタウンとロサンゼルス空港を結ぶシャトルバス「FLY AWAY」。
ロサンゼルス空港のレンタカー会社は24時間営業で開いている。
朝4時発のFLY AWAYバスで空港に行き、レンタカー会社で車をピックアップ、夜明けのハイウェイをジョシュアツリー国立公園目指して走る。
昔々、デビルズタワー登攀のため約一週間にわたりワイオミング州をレンタカーで一人旅した経験があり、アメリカの交差点、右折左折もすぐに順応できた。
途中の名も知らぬ街のサブウェイで休憩を兼ねた朝食を摂り、再びハイウェイを走り、ジョシュアツリーの街に到着。
9時半、ジョシュアツリー国立公園ビジターセンターの駐車場でクライミングガイドのライアン・スコットと合流。
ライアンの車に便乗してジョシュアツリー国立公園へ向かう。
今回お世話になったライアン・スコット(Ryan Scott)
社員旅・・じゃなかった、社員研修という枠の中でクライミングというリスキーな活動をするに際し、クライミングガイドを依頼することは私にとっては当然の選択だった。またAMGA(American Mountain Guides Association)認定のガイドと一緒に登りたいという気持ちもある。
ジョシュアツリー国立公園のゲートに来た。
皆様ご存じの通り、アメリカの国立公園は入場料が必要である。
財布を用意していたが、ライアンがゲートで許可証らしいカードを提示すると我々はそのままスルーとなった。クライミングというアクティビティに対して、アメリカ社会での認知度を感じる一場面だ。
駐車場に到着、日本から持ってきたシューズとハーネスを装着、レンタルのヘルメットを被る。
周囲は魅惑的な岩塔だらけだ。
正面にひときわ大きな岩塔がある。
「ライアン、あれ登るのか?」
「あれじゃない。あそこは難しいんだ。メイビー(できればな)。」
私たちは最初に「サイクロブス」という岩塔に向かった。
今回のガイド依頼に際して、経歴申請では「人工壁・外岩の経験はあるがブランクがあるので初心者同然」とする一方、「クラック、トラッドクライミングを経験したい」と希望を書き添えておいた。
私の使い古された装備、戸惑い無く結んだエイトノットで技量を測られたのだろうか、ライアンは「Good」と言ったまま、細かく技術を説明することなく登っていく。
中央のルンゼっぽい凹部の右壁を登る。
花崗岩の粒子は粗く、スメアリングを多用してぐいぐい登る。
終了点からは、急傾斜のスラブをシューズのフリクションを最大限に発揮して歩いて降りる。
ルート2本登ったところで車に戻り休憩。
ライアンが所属するMojaveGuidesと提携している Happybar のグルテンフリーバー、チョコレートベリー味をもらう。グラノラバーをがっつりチョコで固めたタイプ。
Happybarを囓りながらたずねる。
「ライアン、さっき登ったルート、5.6くらいかい?」
「いや、5.3だな。」
「ええっ!」
「いやいや、5.5くらいだ。ここのグレーディングは辛め(Hard)なんだ」
3本目に登ったルートは他パーティーが先行しており、ライアンはそこを避けて隣のルートに移った。
ここは私からみても比較的簡単そうなので、ザックを残置せず背負ったまま登る。
今日私が依頼したガイド形態はHalf Dayという形式で、4時間のクライミングだ。
時間的に次の1本が最後だろう。
最後に私たちが向かったのは、ライアンも私の技量をみてくれたのか、到着した時に彼が「あそこは難しい。メイビーな。」と言った岩塔「Intersection インターセクション」だった。
核心部は、2つの岩塊が接した部分、ちょうど三角フラスコの内部のように下に行くほど拡がっているクラックだ。
左側に握り拳大のブロックがあり、
「マサル、ここフットホールドな。ここだぞ。」と何回も強調してから登っていく。
私の番だ。
ライアンが強調したスタンスに左足をめいっぱい伸ばして立ち込むが、右足をひっかけるところが無い。
ここで落ちれば、下に拡がる空間に突っ込むことになる。
私の足は短い。
左足をとにかくめいっぱい伸ばしたまま、スメアリングで強引に立ち込み、上体を引きつけ登り切る。
それからは粒子の粗い花崗岩を掴んで登る。
ようやくライアンがビレイしている所にたどり着く。
「ライアン、見てくれよ!俺の脚は短いんだぜ!」
「わかってる」(即答)
大きな岩塔だけあって、そこは360度眺めの良い頂だった。
「マサル、ここは一番人気のあるエリアなんだ。」
ライアンのしみじみとした言い方に、あー、ホントにこのクライミングエリアを愛してるんだなあと思う。
クライミングエリアのあちこちに花が咲いている。
ライアンの話ではもう花のシーズンは終わりとのことだったが、それでも私のジョシュアツリー → 砂漠というイメージを覆すに十分な花々が咲いている。
楽しいクライミングの時間はあっというまに過ぎた。
前述のとおり、今日依頼したガイド形態はHalf Dayの4時間。
帰路、ロサンゼルス市中で夜間運転を避けるためには、日程的にこれが限界だ。
国立公園からジョシュアツリーの街に戻る。車中でたずねる。
「ライアン、ボルダリング、スポーツクライミング、アルパイン、いろいろあるけど君は何が好きなんだ?」
「全部さ!」
フルタイムでガイド業を務める彼はこれからも、様々なクライアントと共にクライミングの楽しさを伝えていくんだろう。
カリフォルニアの空の下、楽しいクライミングのひとときは過ぎ去った。
帰国したら、また現場仕事に、ガイド業に、頑張ろう。
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