人を呼ぶ山
15日、個人ガイドのため月山山頂往復。
登山は初心者の方で、雪渓の対応のためガイドをお願いしたいというご依頼。
一緒に歩くためクライアントの経験を探ることも兼ねて色々お話を伺っていると、登山は初心者だけど、月山に何か呼ばれているような気がしてどうしても登りたいとおっしゃる。
登山は初心者という割には大変健脚な方で、ガイドする方はだいぶ楽をさせていただく。
とはいえ、姥ヶ岳の雪渓では念のためショートロープを用い、下りの四ッ谷沢川雪渓ではポールを使って頂き、軽アイゼン装着も全てフォローして無事に月山・姥沢コースを周回。
かくいう私、現在のように月山のガイドに携わっているのは、きっかけがある。
大昔の若かりし頃、某8000m峰で最終キャンプに帰ってきた時のお話。
誰もいないテントに帰ってきたので、自分でお湯作りを始める。凍った指を解凍するためだ。
お湯を沸かしているとテント内の気温も上がり、指の解凍を始めると体温も上昇して一気に眠くなる。
うつらうつらしながら、頭の中には春先の、『黄色い菜の花が揺れる最上川河畔の彼方に、白い残雪をいただく月山』の光景がひろがっていたのだ。
はっと気がつくと、そこは無機質な8000mのテントの中。
そんな事を一晩で何回も繰り返した。実は、それまで山形県人でありながら、月山には関心は無かった。月山に素晴らしいブナ林があることも知らず、県境を越えて福島の燧ヶ岳を訪れ、南会津のブナ林に浸るのがそれまでの休暇の過ごし方だった。
そんな私が、なぜ高度8000m超のテントの中で月山の光景ばかりイメージしたのか、未だにわからない。
帰国したら月山に行こう。
それから人の御縁に恵まれ、おかげさまで月山を案内する立場にいる。
高所登山の事を話すと自慢話に近くなるので、「昔海外の山に行ったら、月山が頭の中に思い浮かびまして・・・」程度にお客様に話すと、お客様いわく、
「月山って、人を呼ぶ山なんですね」
とおっしゃる。
「そうですね」
と相づちをうち、私たちは下りのリフトで姥沢登山口に帰着。本日も無事、ガイド活動完了。
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