« ジョー・ブラウン逝去 | トップページ | ハーケンの品格 »

著作について話しましょう ベルナデット・マクドナルド インタビュー

ベルナデット・マクドナルド。

現在の山岳界で素晴らしい著作を出し続けている山岳ジャーナリストであり、当ブログでも『TOMAZ HUMAR』『ALPINE WARRIOR』『FREEDOM CLIMBERS』、そして恩田真砂美さんによる素晴らしい翻訳で日本に紹介された『ART OF FREEDOM』を紹介してきました。

ロシアの山岳ジャーナリスト、エレナ・ドミトレンコ女史によるインタビューが公開されましたので、ここに紹介します。

Let's talk about literature. Interview with Bernadette McDonald  by Womengohigh 2020.4.23

---------------------------------------

著作について話しましょう
ベルナデット・マクドナルド インタビュー

B1ビルバオ・メンディ映画祭にて

ベルナデット・マクドナルドは、『Freedom climbers』の著者であり、冬季8000m峰登頂を夢見た人々の印象的な物語です。「ワールドブックデー」(訳者注:毎年4月23日の「世界本の日」)は、カナダ人作家とのインタビューを公開するよい機会です。

エレナ・ドミトレンコ執筆記事
写真・Bernadette McDonaldアーカイブ

B2 ベルナデット・マクドナルドはバンフ山岳文化センターの創設者であり、山岳文化と登山に関する11冊の本を執筆しています。彼女の著作は14か国で発表され、バンフ・グランプリ、ボードマン・タスカー賞(訳者注:イギリスの山岳文学賞)、Kekoo Naoroji賞(訳者注:The Himalayan Clubによるヒマラヤ関連著作に対する文学賞)、American Alpine Club賞など、多くの賞を受賞しています。山岳文化への貢献により、アルバータ・オーダー・オブ・エクセレンスそしてキングアルバート賞を受賞しています。

 彼女の著書「Freedom Climbers」は、6つの国際文学賞を受賞しています。彼女の最新刊「Art of Freedom」は、バンフ山岳文学賞、ボードマンタスカー賞、ナショナルアウトドアブック賞など、これまでに3つの国際賞を受賞しています。彼女はヒマラヤクラブとポーランド山岳協会の名誉会員であり、エクスプローラークラブのフェローに任命されました。執筆時以外は、ベルナデットはクライミング、ハイキング、スキー、カヌー、そして葡萄を栽培しています。

 ベルナデットの本はすべて「並外れた」人々に関するものだと言わざるを得ません。自分の世代の頂点を目指し、今後の登山の方向性を築いた人々に関するものです。そして、スポーツ・マラソン・ライブラリーが最近出版した「Freedom Climbers」には、ワンダ・ルトキェビッチのような女性も存在します。

 ベルナデット、あなたは人生の多くをポーランドの登山に費やしました。ポーランドに長く滞在し、地元のクライマーとコミュニケーションを取り、彼らの人生について学びました。もう彼らとは気兼ねすることの無い仲ですか?

 そのように感じ始めています。そうですね。私は取材のためにポーランドの出版編集者と会い、ポーランドで出版された本をPRするために、年に数回訪れています。そして、私がここにいる度に、登山関係者と会うたびに、時には専門的に、時には社交的に、ええ、それは一種の大家族のように感じています。

 「Freedom Climbers」の中心には、アンジェイ・ザワダ、ワンダ・ルトキェヴィチ、イェジ・ククチカ、ヴォイテク・クルティカ、クシストフ・ビエリツキの物語があります。これは私にとって興味深いものです。ヒーローにはさまざまなタイプがあります。なぜこれらの人々を物語の中心に置いたのですか?登山への貢献のため?それともあなたの共感のためですか?

 その成し遂げた登山への業績があって、私は著作のために彼らに関わってきました。しかし、多くのベテラン登山家が含まれていません。取材の過程で出会った人々、登山家としてだけでなく人間としても共感できた人、そして最後に、ヒマラヤ登山について興味深く注目すべきことを成し遂げた人に関わってきました。

B3   リンゼイ・グリフィン、ヴォイテク・クルティカ、ミック・ファウラーと共に ラグレイヴのピオレドール式典で

あなたの最新刊「Art of Freedom」は完全にヴォイテク・クルティカに関する本です。それはポーランド人の好みにあったのでしょうか?

 私の印象としては、ある時点でこの本が書かれることを地域社会が期待していたといえます。ヴォイテクはこのようなことすべてに消極的で有名でしたので、誰が書き上げるかはわかりませんでした。ついに出版されたときはちょっと驚かれたと思います。幸いにも、「Freedom Climbers」のおかげで、このコミュニティにはある程度の信頼をいただいていました。好評だったと思います。正直なところ、かなり売れてますしね。まあ、来るべきものがきた、という感じです。

出版前にヴォイテクが本の最新版を読んでいなかったと、どなたかが話してましたが。

 そのとおりです。私たちがそう決めた理由は、「自伝」ではなく「伝記」にしたかったからです。そしてそれが「伝記」であるためには、私は「独立」している必要がありました。干渉しては欲しくなかったのです。しかし、彼がすべてのクライミングの成果、過程を確認することには同意しました。彼は私に言いました。この本は登山家としての私の人生の記録になる。私はそれが間違っていることを望まない、と。誰が何をしたか、いつ、どれくらい大変だったか、どの程度の標高、何時間だったのか、間違いはないか。彼はそれが絶対に正しいことを望むと言いました。そして、私は答えました。大丈夫、それは大丈夫です、と。それらは出版前に彼が読んだ本の一部分です。しかし、それは事実でしたし、彼にとっては驚きだったようです。

彼は気に入りましたか?

ほとんどの部分は気に入ってくれたと思います。もちろん、彼がすべてに同意するわけではありません。

彼がすべてに同意したとしたら、意外ですね。

 それはおかしなことですし、いえ、私は彼に最大限の敬意を払っていますが、特定のことについては私自身の独立した意見もあり、それを表現しようとしました。

B4ベルナデットはクライミングで休暇を過ごすのを好む

あなたの本は何ヶ国語で翻訳されていますか?特に「Freedom Climbers」は。

「Freedom Climbers」は11か国語だと思います。「Art of Freedom」は13か国語で、「Alpine Warriors」は9か国語で出版されています。

あなたの本のうち、現在最も人気のあるものはどれですか。

 それはむしろ、その国特有、より正確には、大陸固有のものでしょう。しかし、全体としては「Freedom Climbers」と「Art of Freedom」で五分五分でしょう。

 あなたが長い間ペンを持たないことはめったにありません。今現在、新しい本を書いているのを知っています。仕事はどうですか?すでにそれについて公然と話しているのですか、それとも秘密にしていますか?

 私の新しい本はほぼ準備ができています。ページの校正段階です。ようやく!イギリスの出版社とアメリカの出版社から同時に発売される秋まで書店に並ぶことはありません。それは出版社からまだ発表されてないので、私はそれについて自由に話すことができません。でも、まもなくですよ。

B5  ポーランドの登山家アダム・ビエリツキがモスクワのスポーツ・マラソン・トラベラーズクラブでの講演中に「FREEDOM CLIMBERS」のロシア版にサイン中

楽しみにしてます!作家として、またコミュニティの一員として、登山家が書いた本や物語が数多くあると思います。沢山読みますか?

 ええ、実際に可能な限り読みまくりました。沢山読み、数多くのフィクションを読み、あらゆる分野の書籍を読んだりします。私は詩は読みませんが、他の分野はほとんど全て読んでいます。

 私は山岳書をたくさん読んでいます。私にとっては、それは多くの場合取材であり、私が取り組んでいるプロジェクトだけでなく、他の登山家や他のコミュニティに関する書籍を読むのが楽しいからです。それは私にとってすべてのバックボーンであり、すべて取材です。

そして、ここ数年あなたが注目した本は何ですか?何が印象的でしたか?

デビッド・ロバーツが書いた最後の本である「Limits of the Known」は彼自身について非常によく書かれています。つまり内省的であり、登山家としての彼の人生を見ているということですが、癌患者の観点から、彼の病、余命の変化、そして冒険家としての人生、登山家としての人生を興味深く観察し、過ぎゆく日々に感謝している人の視点があるからです。その年のボードマン・タスカー賞を受賞しました。

 それから、パウル・プロイスに関するデビッド・スマートの著作を本当に楽しめました。彼がクライミング・ストーリーに数多くの歴史的背景をちりばめる方法が素晴らしく、それ自体も興味深いものでした。ご存知のように、私は登山史が大好きで、デビッドは上手く書き上げました。

B6 ブドウの栽培は、ベルナデットのもう1つのお気に入りアクティビティです

あなたが登山の世界に身を置くようになるのに役立ったのは、どんな本ですか?

 私が最初に読んだ山の本の1つは、ハインリッヒ・ハラーの「チベットの7年」でした。それは登山の本ではありませんが、私にとって魅力的な場所に連れて行ってくれた本当の山の冒険です。私に深い影響を与え、旅行、異文化との接触、荒野への憧れを植え付けました。

 その数年後、私はその裏話、作者、そしてチベットへの脱出の必要性を生み出した政治情勢について多くのことを学び、その過程でハラーについてもよく知りました。初めの先入観の一部が現実というものに打ち砕かれた事にはがっかりしましたが、それでも私にとって土台となる本でした。

 私がいつも愛していたもう1つの本は、エリック・シプトンの著作です。エリック・シプトンのオムニバスを、私は繰り返し読み返しています。探検と冒険は自然に楽しいものですが、彼の執筆が飽くなきエネルギー、好奇心、ユーモア、苦痛の感覚によって伝えられる方法が好きです。

 私を大いに助けてくれた3冊目の本は「Mountaineering:The Freedom of the Hills」です。何年にもわたり多くの復刻版が出された教本ですが、夫と私は初版を持っています。1970年代に戻り、その本を熟読し、結び方を学び、ビレイ技法を練習し、滑落をシミュレートし、クレバスレスキューのZプーリーシステムを理解しようとしました。その後、夫はレスキューのスペシャリストとして仕事に就き、十分な訓練を受けましたが、初めはその本が私たちの「聖書」でした。

作家としてお答えください。登山家が読むべき3冊を挙げてください。

 なんてこと・・・難しい質問ですね。常に印象に残っているのは、Andy Caveの「Learning to Breathe」です。それは、英国の鉱業文化の真っただ中で育ち、高山の冷たい空気の中で彼の「魂」を見いだす素晴らしい物語です。美しく書かれています。もう1つの素晴らしい本ですが、スロベニア語(現在はポーランド語)以外の言語で見つけるのが非常に難しいのですが、Nejc Zaplotnik(訳者注 : ナイツ・ザプロトニク(1952~1983) マカルー南壁、エベレスト西稜登攀に成功したスロベニアの伝説的な登山家)による「Pot」です。タイトルは「The Way」と訳されており、詩的な文章、山での純粋な喜びの表現に十分お勧めできるものです。この本は数世代にわたりスロベニアの登山家達にインスピレーションを与えてきましたが、私はその理由を容易に理解できます。私が大好きなもう一つの本は、ジェームズ・ソルターの「ソロ・フェイス」と呼ばれる登山小説です。ソルターは、私が知る最高の作家の1人であり、ミニマリストで職人であり、すべての単語が適切なタイミングで適切な場所に存在します。

B8ポーランドのラデックマウンテンフェスティバルで。写真:Małgorzata Telega

さて、他人の推薦に左右されず、自分で読む本を選びたい人について話しましょう。どこを探せばいいですか?

 ご存知のように、それはあなたが探す言語によって異なると思います。英語の本に関しては、いい場所がいくつかあります。まず、Boardman Taskerのウェブサイトです。ショートリストだけでなく、ロングリストも。現在出版されている山岳書の本当に素晴らしいレジュメが得られるでしょう。もう1つは、バンフマウンテンフィルムおよびブックフェスティバルのコンペティションリストです。そこにもロングリスト、ショートリストがあります。閲覧するのに良い場所です。またアメリカではNational Outdoor Book Awardsと呼ばれるものがあります。NOBAと呼ばれ、様々なカテゴリーがあります。登山だけではありません。伝記があり、環境に関する本があり、多くの素晴らしい書籍があります。

あなたの著作のファンは主にどこに住んでいますか?ヨーロッパ?アメリカ?

 スペイン語、まあ、明らかにポーランド語版、スペイン語、イタリア語、ドイツ語版があると思います。私の著作のヨーロッパ市場は、北米市場よりも大きいです。しかし、今はアジア市場でも販売を始めています。韓国語、日本語版ですね。

B9   韓国の国際山岳映画祭で

彼らはヨーロッパの登山家の人生に興味があるんでしょうか?主にヨーロッパの登山家達について書いているからでしょうか。

主に東ヨーロッパのクライマーでしょう!

なぜ彼らの人生に興味があるのですか?

 大きな理由の1つは、東ヨーロッパの登山家が英語圏でよく知られていないし、十分に書籍化もされていないことです。つまり、ほとんどのカナダ人、アメリカ人はデニス・ウルブコについてあまり知りません。彼らはクシストフ・ビエリツキについてあまり知りません。誰もが彼らのことを知っているので、ここでは想像もできないことですが、それは私の目標の1つでした。彼らのストーリーを伝えることは、素晴らしいことであり、知られるに値することだと思います。

---------------------------------------------

以上引用おわり

 ロシアのクライミングサイトに掲載されていたインタビュー記事の転載許可にあたり、執筆者のエレナ・ドミトレンコ女史から快諾を頂戴するだけでなく、「ロシア語より英語版の方がいいのでは」とお気遣いいただき前記URLをご紹介いただきました。

 現在エレナ・ドミトレンコ女史は、女性による登山・冒険だけでなく幅広くアウトドアに関わる人生をも扱ったウェブサイト Womengohigh.com を主宰しています。ロシア語版だけでなく英語版もありますので、ぜひご覧ください。

Сердечно благодарю вас!, Елена Дмитренко !!

|

« ジョー・ブラウン逝去 | トップページ | ハーケンの品格 »

山岳ガイドが読む本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ジョー・ブラウン逝去 | トップページ | ハーケンの品格 »