庄内の胡麻豆腐
庄内の郷土料理、胡麻豆腐の調理法を学びに鶴岡へ。
鶴岡市藤島地区(旧・藤島町)の たわらや が本日の教室。
講師は庄内食文化フードコーディネーターの伊藤先生。羽黒山の宿坊・多聞館で教わったそうだ。
胡麻豆腐はもともと江戸時代初期、明から隠元禅師によって伝えられた中国をルーツとする精進料理。
ここ庄内では、出羽三山・羽黒山の山伏達の精進料理として知られる。
日本全国をみわたせば、山形(出羽三山)、福井(永平寺の精進料理)、滋賀(法事の精進料理)、和歌山(高野山の精進料理)、山口(法事の精進料理)、佐賀(法事の精進料理)などが挙げられる(注)。各地方ごとに調理法・特に味噌だれ、醤油だれなど調味料も様々だ。
会場に集まったのは12人、私以外は全て女性。意外にも高齢の女性が多い。3班のグループに分かれ、実習開始。
風味を大事にするため既製品の胡麻ペーストは使わず、胡麻をすり鉢で擦る。伊藤先生から配布されたレシピでは、擦り時間約2時間とある。伊藤先生いわく、宿坊では胡麻擦りは「ばば(婆)ちゃんの仕事」だそうだ。私が力任せに擦る一方、他の女性の方は手慣れた手つきで力むことなく擦る。本日は時間短縮のため、ある程度擦ったらミキサーに。
ミキサーで約7分、胡麻をさらに擦る。ペースト状になったものを裏ごしし、残りかすはまたミキサーに。
ストップウォッチ付時計を付けているのは私だけだったので、料理に慣れない私がようやく役に立つ時w
本日は2品作るのだが、初めの黒胡麻豆腐は胡麻、片栗粉(葛粉の代用)、水だけのシンプルな材料。
伊藤先生いわく、調理最大のポイントは「火入れ」。料理したことがある方ならおわかりでしょうが、片栗粉を溶いた液体に火を通すと、突然固まり始める瞬間がある。そこに注意しながら、ひたすらかき混ぜることが肝要とのこと。
固まり始めると、胡麻ペーストがもっちりしてきて凄い抵抗力。「ここは力のある男性に・・」ということで私がしばらくグルグルかきまわすが、かすかに焦げる香りを感じる。やべえ。
先生に代わってもらったところ、私を上回る凄いペースでかき回す。画像でも先生の手がブレてますw
固まったところで水で濡らしたトレイに入れ、冷え固まるのを待つ。
黒胡麻豆腐は、黄な粉と黒蜜で試食してみました。
皆で試食しながら、庄内の料理談義。
ツイッターやネット界隈では「庄内の胡麻豆腐は甘い餡かけが伝統」と言われているが、参加者の方からは「東京や他県から来た親戚には甘い餡かけないで、って言われるのよ~」「うちもよ~」と、本音トークを聴く。
教室の2品めは、貴重な吉野の本葛を使い、白胡麻と昆布出汁、わずかな塩で作ってみたもの。
画像の品は、白胡麻のミキサー時間が短すぎたため、胡麻の皮が残っており、舌触りが今一つ。
しかし、昆布出汁と塩のおかげで最初に作った黒胡麻豆腐より口当たりは良いように感じます。庄内では味噌汁の具にするとか。私は自宅に持ち帰り、ワサビ醤油で食べました。
羽黒山の宿坊・多聞館で教わった伊藤先生いわく、調理法、分量や火入れの時間を聞いても「だいたい」とか「ちょっと」とか、そんな答えしか返ってこなかったとか。庄内の女性の皆さんは身体で覚えているんでしょうね。
レシピ集に記録されている数字は、伊藤先生が数値化した貴重なものでした。
すり鉢で2時間も掛けて胡麻を擦る。伊藤先生いわく「山伏や修行僧の修行の一環」だそうですが、食事の下準備に一日のそれだけの時間を割くということに、「食べる」という行為の価値観の相違ということにまで思いを馳せました。
(注)参考文献 新潟県立大学名誉教授 佐藤恵美子執筆論文『ゴマ豆腐の文化と調整条件に関する科学』日本調理科学会誌vol.50 No.5
| 固定リンク
「民俗・風土」カテゴリの記事
- 鮭の新切教室 第2回目(2021.02.07)
- 鮭の新切 (ようのじんぎり)(2020.11.29)
- 御大日尊御開帳 山形県真室川町西川地区(2020.10.31)
- 庄内の胡麻豆腐(2020.10.24)
- 貧乏の神送り 山形県 小国町 白子沢地区(2020.08.02)
コメント
三浦雄一郎氏も取っているセサミンは昔からごま豆腐として出羽三山でも食べられているのですか。エゴマも最近、よくたべられますがごま豆腐の方が食べやすいですね。庄内の方が山形内陸より盛んに食べられているのですか?先日、宇梶剛士もなかされた舞台女優さんと山形市出身の元グラビアアイドルの人と県人会の人の対談やっていたけどあの方々は山形でも内陸の人ですね。
投稿: 修験道 | 2020.11.25 12:54
修験道 様
<<出羽三山でも食べられているのですか。
山伏の精進料理と聞きましたが、出羽三山神社の「お茶処」では抹茶と共に胡麻豆腐の餡かけが提供されています。私はまだ未経験なのですが・・・
<<庄内の方が山形内陸より盛んに食べられているのですか?
今回胡麻豆腐教室に参加された方々の話を伺っても、その傾向はあると思います。内陸の人間にとっては、胡麻豆腐といえばお寺の法事の精進料理くらいで、滅多に食べるものではないです。
<<あの方々は山形でも内陸の人ですね。
山形県の中でも置賜、村山、最上、庄内と四つの地域に分かれますが、文化の違いで話題になるのは、やはり「庄内」と「内陸」ですね。その違いは時折「苦労話」や「笑い話」のタネになりますが、私にとっては色々と興味深い事の方が多いです。
投稿: 大滝勝 | 2020.11.25 21:52