【訃報】ダグ・スコット 逝去
ヒマラヤ登山のアルパインスタイルを推し進めてきたバイオニア、イギリスのダグ・スコットが12月7日、自宅で安らかに亡くなりました。79歳の生涯でした。
Doug Scott: Everest summit mountaineer dies aged 79 by BBC 2020.12.8
春先、手術不可能な脳腫瘍に罹っていることをある筋から知らされていましたが、早すぎる死でした。
晩年のダグ・スコット近影
冒頭に「ヒマラヤ登山の・・」と書きましたが、そもそも氏は世界的なビッグウォール・クライマーと記されるべきでしょう。
その著書『ビッグウォール・クライミング』は世界的にも多大な影響を与えてきました。
1ハイカーにすぎない私も、もちろんその内の1人です。規模はビッグウォールとは言えないものの、『ビッグウォール・クライミング』に記載されていたことが、私がアメリカのデビルズタワーを登った理由の一つでした。
ある国際山岳シンポジウムで、8000m峰14座全山登頂の渦中にいたメスナーが「ヒマラヤ登山から離れようと思っている」と発言した際、ダグ・スコットがメスナーに「歳取ったな!」と直言したことが強く印象に残っています。
それほどの情熱をもってヒマラヤ登山、軽量・速攻のアルパインスタイルの道を拓いた氏は、
2015年、クリス・ボニントンと共に室内氷壁を楽しむダグ・スコット
晩年は仏教を学び、ヒマラヤ山麓に生きる人々をサポートする活動に力を注ぎました。
エベレスト南西壁初登という華やかさだけでなく、玄人好みのルートを拓いて行った氏の生い立ち・人生は、当ブログでも過去記事に記しました自伝『UP AND ABOUT』に詳しく記されています。
誰もが王義之になれるわけではない。それでも人は王義之に近づこうと筆を走らせる。
誰もがセザンヌになれるわけではない。それでも人はセザンヌに近づこうと絵を描く。
ヒマラヤ登山を目指す者にとって、ダグ・スコットとはそんな存在ではなかっただろうか。
1977年バインターブラック峰にて、両足を骨折したまま四つん這いで必死に下降するダグ・スコット
偉大な登山家の死に、哀悼の意を表します。
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