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クライミングが人類に貢献する時

 ノルウェー工科大学傘下の研究機関SINTEFの研究者が、海底ケーブル敷設に伴う問題解決のヒントとして応用したのは、趣味であるクライミングでみかけた「ロープの捻じれ」でした。

Rock Climbing Researchers Solve Key Question for Subsea Cable-Laying by The Maritime Executive 2021.1.23

 

以下引用開始

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クリスティーナ・ベンジャミンソン執筆記事

クライミングのビレイデバイスと、海底ケーブル設置船とは、何が共通していますか?

答えは、いずれも「ねじれ」が発生する可能性があるということです。つまり、クライミングロープまたはケーブルがねじれ始めます。

これまで、なぜこの現象が起こるのか誰も説明できませんでした。しかし、クライマーでもある2人の熱心な研究者が、その謎を解く仕事にとりかかりました。

洋上風力発電所や太陽光発電所の建設において、施設や電力を送るための電気ケーブルが必要です。ケーブルの製造、輸送、建設のために取り扱うオペレーターは、ケーブルに「ねじれ」や「キンク」が発生することを知っています。クライマーが懸垂下降する際、同じことがロープにも起こり得ます。

海底電気ケーブルやフレキシブルパイプは、製造、取り扱い、敷設の際にねじれる傾向があり、従来は説明が難しい現象でした。これは取り扱いや保管の際に大きなダメージを受けることがあり、非常に高額な損失となる可能性があります。

「ねじれがケーブル内部の摩擦によって引き起こされることは、おそらく多くの人にとって驚きとなるでしょう」

SINTEFの研究者で「ねじれ愛好家」のフィリップ・メインソンは語ります。

ケーブルの「ねじれ」による損失は数百万単位の金額

内部摩擦が大きな問題を引き起こした例は沢山あります。

「あるケースでは、ケーブルが甲板上で暴れだし巻き付き、工事船が電気ケーブル設置作業を中止しなければなりませんでした」

SINTEFのクライアントからは「ドクター・ツイスト(ねじれ)」と呼ばれるメインソンは言います。

ケーブルは切断され、海底に廃棄を余儀なくされました。船は港に戻り、ケーブルが回収され、敷設が完了するまでさらに数か月待たなければなりませんでした。

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ねじれ(上)とキンク(下)を示すケーブル。イラスト:SINTEF

ケーブルは局所的に損傷する可能性もあり、条件が良ければ、叩いて形を戻したり、接続することが可能です。最悪の場合は、ケーブルの交換が必要になります。

「場合によっては、導体または絶縁体に損傷があるかどうか、判断が難しい場合があります。この種の損傷は、運用中にケーブルの故障の原因となり、多くの消費者に停電を引き起こす可能性があります」

十分に研究されていない、古い問題

それは以前からの問題でした。石油業界もこの種のトラブルを経験しており、数千万単位の費用がかかるケースもあります。

「しかし私たちの研究を除き、この問題に関する研究論文は公開されていません」

「人命に傷害を引き起こしたり、環境問題に直接関わることではないため、発生ケースの報告もありません。誰も、自身の恥ずかしいミスについて外に伝えたくない。その結果、業界はこの現象についての情報が少なすぎました。」

現在、SINTEFはこの問題についてアクションを起こしました。近年、研究者はノルウェーや海外企業と協力し、ケーブル損傷の調査と設計支援の両方に関わり、彼ら研究者の関与は重要な新しい知見を生み出しました。

「経験豊富なエンジニアでさえ、私たちが観察した「ねじれ」の原因解明のために必要なメカニズムのレベルに驚かされる可能性があります」と、メインソンの同僚であるベガード・ロンバはコメントします。

クライミングの専門知識

熱心なクライマーである2人は、休暇中にクライミングロープを扱う際の科学的知識を応用しました。

「私たちはクライミングロープの使用経験があります。これは、関わる物理学がまったく同じであるため、ケーブルについての洞察を得るのに役立ちました」語るのはメインソン。「効果的なケーブル敷設船は、あなたが考えているよりも素晴らしいビレイデバイスです」とジョークをとばしながら、数学モデル・数値モデルの両方の開発が、問題解明に重要な役割を果たしたと強調しました。

いくつものメカニズムにより、ケーブルがねじれる可能性があります。重要な要素の1つとして、ケーブルが製造段階から保管容器に巻かれる際、さまざまな方向に曲げられているという事実に関係しています。

「大きなケーブルを曲げて回転させるには、大きな力が必要であることは容易にわかります、しかし、ここに驚くべき点があります」とロンバは言いながら、小さな実験をしてみせました。

「ケーブルの途中にテープを貼り、たとえば下向きに曲げます。次に、ケーブルを巻くときに「曲がり」を保持したまま、テープがケーブルの周りを回転するようにします。この動作のために、どれほどの力を要するかに驚くでしょう。これらと同じ力が加わり、ケーブルを損傷する可能性があります」と彼は言います。(訳者注 動画0:31からの実験をご覧ください)

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このようにケーブルを曲げて、回転させてみてください。意外と難しいです。イラスト:SINTEF

「構造計算も行わずに橋を建設する人などいません。ケーブルの製造施設や敷設船で建設するときも、ケーブルの取り扱いに同じ原則を適用する必要があります」とメインソンは言います。

業界は、ねじり荷重の推定方法、挙動をリアルタイムで監視する機器、およびトルクに耐えるケーブルの数値を評価できるようなテストリグ等に関するガイダンスを求めています。

研究者らは現在、海外のケーブルメーカー、敷設業者、オペレーターが参加する「ねじれ共同産業プロジェクト」によって、新しい知見を広める作業に着手しています。

普及は、ワークショップや現在準備中のハンドブックによって行われます。ねじれ計算のためのガイドライン開発計画もあります。

「「ねじれ」が好ましくない形状をもたらし、それがさらなる「ねじれ」につながる複雑な状況では、非常に具体的な数値モデルが必要になるため、必要とする作業・研究には事欠きません。私たちの目的は明確です。脱・化石エネルギーへの旅が「絡まることなく」確実に行われるようにすることです。」

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登山や冒険に「社会的意義」を見出すことに疑問を呈する日本の某探検家やらクライマーがウェブ上でブイブイ語っていますが、世の中、頭の切れる人はいるんですね。。。

私めも現場作業でワイヤーロープや大小様々な口径のホースなど扱っているのですが、恥ずかしながらクライミングロープと結びつけるには至りませんでした。

「世俗とは離れたところに価値がある」みたいな言い方されるクライミングですが、研究者たちの鋭い観察眼によって、クライミングが人類に貢献するという報道でした。

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