FOREVER 中高年クライマーの皆様へ

ドイツで製作された動画『FOREVER』。
4人の高齢クライマー達の姿を描いた、約7分間の動画です。

久々に心動かされるクライミング動画でした(少なくとも私は)。

東京オリンピックでのクライミング競技採用に伴い、あちこちでジュニア世代のクライマー養成に血眼になっているようですが、この動画に出てくる彼らのような、息の長い愛好家が楽しめる環境作りも大事なのではないでしょうか。

年をとるとクライミングパートナーがみつかりにくい、パートナーが昨年亡くなったので、インドアのボルダリングを始めたんだ、という老人の言葉が印象的です。

サブタイトルの『It ain’t over ‘til it’s over.』は、乱暴に訳すと 『終わるまで終わりじゃない』 かな。

平易な英語の字幕付きです。
真にクライミングを愛している方なら、何かを感じ取っていただけるのではないかと思います。


FOREVER – It ain't over 'til it's over. from cafekraft on Vimeo.

2016 第11回ピオレドール・アジア 黒部渓谷ゴールデンピラー隊、韓国ガンガプルナ隊共同受賞

 先にお知らせした2016年 第11回ピオレドールアジアは、黒部渓谷ゴールデンピラーを登攀した佐藤祐介氏ら日本チーム、ガンガプルナ南壁新ルートを登攀した韓国隊の共同受賞が決定しました。

 先の記事でもお知らせしたように、審査委員会は高所登山のみならず日本国内の冬期登攀を世界に通じる困難なクライミングと賞賛した模様です。

 ピオレドールアジア生涯功労賞には、日本の中村保氏が選ばれました。
 ヒマラヤ・中国登山を志す方には今さら説明の必要はないでしょう。
 
 同時に表彰された第9回ゴールデンクライミングシューズ賞には、韓国アイスクライミング界のホープ、ソン・ハンナレ、そして日本からは瑞牆・十一面岩正面壁における「千日の瑠璃」(5.14a R/X 7ピッチ)開拓が高く評価された倉上慶大氏の共同受賞が決定しました。

第11回アジア黄金ピッケル賞授賞式 by 月刊『人と山』ニュース

以下引用開始
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第11回アジア黄金ピッケル賞

 11月4日午前9時『人と山』本社で開かれた審査委員会の結果、「ガンガプルナ(7,455m)南壁新ルート」を開拓した韓国チーム(キム・チャンホ、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨン) 、「劔岳(2,999m)黒部渓谷ゴールデンピラー(登攀長380m)ルート」日本チーム(伊藤仰二、佐藤祐介、宮城公博)の共同受賞が決定した。

 ピオレドールアジア審査委員会が開かれた同日午後6時、ソウル特別市 瑞草区 良才洞ATセンター大会議室で開かれた『人と山』創刊27周年記念式を兼ねた第11回ピオレドールアジア賞の授賞式が開かれ、この席で韓国チーム全員と日本チーム伊藤仰二氏が直接「金のピッケル」授与式が行われた。

 今回の授賞式では、中村保氏にピオレドールアジア功労賞が授与された。今回の授賞式に参加して賞を直接受賞した彼は、1961年にペルーとボリビアでいくつかの初登頂を遂げた後、25年間に38回海外遠征を率い、継続的に中国四川省、雲南省、青海省を集中的に探査して日本山岳界に貢献してきた人物である。

 第9回ゴールデンクライミングシューズ賞はアジアを代表するアイスクライマー、ソン・ハンナレ、日本瑞牆山十一面岩」モアイフェイス正面の壁」千日の瑠璃(5.14a R / X、240m、7ピッチ)」 ルートの困難なフリークライミングに成功した倉上慶大氏が共同受賞した。
 ゴールデンクライミングシューズ賞審査審査委員会は、11月4日午前8時に『人と山』本社で進められ、授賞式はピオレドールアジア賞と同じく『人と山』創刊27周年記念式典で催行されした。
(以下略)

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第11回ピオレドールアジア受賞者。左から『人と山』ホン・ソクハ代表、伊藤仰二、キム・チャンホ、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨン。一番右は、今回のピオレドールアジア最終候補に上がったものの受賞を逃した香港のツァン・チ・シン・ジョン(Tsang Chi Sing John )。

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第11回ピオレドールアジア授賞式が開かれた『人と山』創刊27周年記念式典。

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『人と山』創刊27周年記念式典で挨拶をおこなうホン・ソクハ代表。

P4_2
第9回ゴールデンクライミングシューズ賞を受賞したソン・ハンナレが所感を述べている。
今回のゴールデンクライミングシューズ賞は彼女と共に倉上慶太氏が共同受賞したが、彼は式典は欠席した。

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第11回ピオレドールアジア賞受賞の感想を述べるキム・チャンホ氏。

P6_3
第11回ピオレドールアジア賞受賞の感想を述べる伊藤仰二氏。

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以上引用おわり

韓国隊、PEAK41峰北壁からの登頂に成功 【Korean team successed north face of Peak41(6648m)】

韓国隊がネパールヒマラヤ・PEAK41峰北壁の登攀に成功、10月27日に登頂に成功しました。
複数の韓国一般メディア、山岳メディアが伝えています。

「ネパ・PEAK41北壁遠征隊」、世界初の新ルート開拓 by スポーツ韓国2016.11.01

以下引用開始
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「ネパ・PEAK41北壁遠征隊」、世界初の新ルート開拓
スポーツ韓国ガン・ビョンウォン記者
Peak41
ネパPEAK41北壁遠征隊の記念撮影するク・オンス隊長(左)とユ・ハクジェ隊員(右)の様子[写真=ネパ提供]

 「2016ネパピーク41(PEAK 41)北壁遠征隊」が世界で初めてネパールピーク41峰北壁新ルート開拓に成功したと明らかにした。
 ソウル山岳救助隊登山隊ク・オンス隊長ら計6人で構成された遠征隊は9月26日、世界初のネパール・ピーク41北壁新ルート開拓を目指し出国した。現地到着後、高所順応訓練などを経て10月17日に北壁登攀を開始、本格的なピーク41登頂に乗り出した。遠征隊は22日に北壁を突破、後に頂上に続く南壁を登ってク・オンス隊長とユ・ハクジュ隊員が現地時間10月27日08時にピーク41の登頂に成功した。今回の遠征隊は単に登頂を目指すだけではなく、新ルートを開拓する「登路主義」 (訳者注:登攀ルートに重きを置く登山スタイルを差す、韓国で用いられる登山用語) の実現に重点を置き、シェルパの助けを借りず、最小限の機材と食料だけで登山する「アルパインスタイル(Alpine Style)」方式で登頂した。遠征隊は山が険しく雪崩と落石のために途中で隊員が負傷し、平均70〜80度の壁を登らなければならない困難な条件の中で登頂に成功した。

 特に、地形や気象悪化により、計画していた登山日程よりも下山予定が4日ほど遅くなり、7日分準備した食料を11日間に食い伸ばし、登頂最終日には凍結したソーセージを2人が分けて食べるほど劣悪な環境を克服した。
 遠征隊が登頂に成功したネパール・ソロクーンブ地域に位置する6,648mの「ピーク41」は2002年にスロベニアチームが西稜を経て登頂した後、成功事例がない急峻なピークとして知られている。
 「2016ネパピーク41北壁遠征隊」は、今回の登頂で世界初の北壁新ルート開拓に成功し、世界の登山史に名を残すことになった。遠征隊は新ルート名をチーム名から「ネパ・ピーク41北壁ルート」と命名した。
 ネパ・ピーク41北壁遠征隊のク・オンス隊長は「最小限の食料と装備だけで頂上まで登るアルパインスタイルで誰も開拓していない新ルートで登頂に成功したとことが誇りであり、うれしい」「2年前に大雪などの天候悪化で退却せざるをえなかった遠征の失敗にもあきらめず、最後まで挑戦できるよう支援してくれた多くの方々に感謝の言葉を伝えたい」と語った。

 ネパ代表取締役イ・ソンヒョ社長は「世界で誰も成功していなかったピーク41北壁新ルート開拓に成功したク・オンス隊長をはじめとする遠征隊員の登頂に成功をお祝い申し上げ、世界的に山岳界の位置を高める貢献を果たした今回の登頂にネパもささやかな貢献を果たせることができて非常にうれしい」 「遠征隊員たちが登攀中、岩壁にハンモックにぶら下がって眠り、冷凍乾燥食品一人分を三人で分けて食べる困難な状況の中でも登頂成功と無事帰還を果たしたことについてもう一度拍手を送りたい。ネパは今後も、自然の美しさを伝え偉大なチャレンジ精神でルート開拓に挑戦する登山家たちの力になることができる、様々なスポンサー活動を展開していくようにする」と語った。

 一方、今回の2016ネパ・ピーク41(PEAK 41)北壁遠征を後援したネパはアウトドアブランドとして健全な山岳文化育成のために2006年インド・テレイサガール登頂後援をはじめ、韓国登山学校とソウル山岳救助活動の支援を継続的に行ってきている。
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以上引用おわり

 October 27th 2016, Korean alpinists Ku Eun-Su, Yoo Hak-Jae made a successful ascent via north face of Peak41(6648m). Their line isn't reported yet.
 Korean team (Ku Eun-Su) tried the north face of Peak41 in October 2014, they gave up climbing by heavy snowing.

第11回ピオレドール・アジア 最終ノミネートチーム発表

韓国の山岳雑誌 月刊『人と山』において、今年もピオレドール・アジア最終ノミネートチームが発表となりました。

今年の最終ノミネート内容は次の通りです。

第11回第11回ピオレドール・アジア 最終候補チームプレビュー by 月刊『人と山』

以下引用開始
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 純粋で進歩的な登山を展開した、アジアの若い登山家たちを激励する意図で制定されたピオレドール・アジア賞は今年で第11回を迎えた。
 登山のオスカー賞と呼ばれるこの賞は、過去10年間、アジアの山岳文化をけん引しており、アジアの登山家たちに未来志向的な登山の方向を提示した。つまり、アルパインスタイルによる速攻・軽量クライミングと高度な技術を追求する壁を登る、そして自然を保護し山を尊敬するアルピニズム本来の純度を強調しながら「人為的な支援を受けて成し遂げた登山の結果は、その過程よりも優先することはできない」ということを示し、商業主義に染まった登山に警鐘を鳴らした。

 ピオレドール・アジア賞審査委員会は、今年もこのような原則を実践した候補者のチームをアジア山岳連盟加盟国とアジア各国の登山専門誌から推薦を受けた後、厳正な審査を経て最終候補3チームを選定した。
 夢を叶えるための情熱一つで挑戦を躊躇しないアジアの若き登山家たちに出会ってみよう。


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01 KOREA TEAM

 韓国隊は、今回ネパールヒマラヤのガンガプルナ(7455m)南壁新ルート開拓に挑戦状を叩きつけた。韓国を代表するアルパインクライマーであるキム・チャンホ、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨンがまさにその主人公である。
 彼らはアルパインクライミングにより10月20日、ガンガプルナの頂上に立った。「2016コリアンウェイプロジェクト(KOREAN-WAY PROJECT)」という名前を掲げた彼らの旗は、未知の領域を探索し、過酷な環境の登山に挑戦し、高難度の新ルート開拓によって韓国の登山家の挑戦精神、探求精神を示すというものであった。

 ネパール西部アンナプルナ山群に位置するガンガプルナは1965年にドイツ隊が南面~東稜ルートで初登頂以来、2015年までに24チームが登頂を試み、8隊だけが成功した山である。
 その後の主な登頂ルートは、1971年日本隊の西陵ルート、1981年カナダチームの南西壁ルート、1983年ユーゴスラビアチームの北壁ルートなど5本ある。
 遠征隊を率いたキム・チャンホ隊長は8,000m級の高峰14座を無酸素で登頂した記録を持つ韓国最高のアルピニストであり、チェ・ソクムンとパク・ジョンヨンも抜群の実力を誇る韓国を代表するクライマーである。
 ピオレドールアジア審査委員会は、優れたチャレンジ精神でアルパインクライミングに成功した彼ら3人を今年のピオレドールアジア最終候補に選定した。
 ガンガプルナ南壁新ルート
 対象:ガンガプルナ(7455m)南壁
 ロケーション:ネパール西部アンナプルナ
 ルート:南壁新ルート
 クライミング方式:アルパインスタイル
 隊員:キム・チャンホ、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨン 計3名

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02 JAPAN TEAM

「ゴールデンピラー(Golden Pillar)」は、日本・北アルプス劔岳の黒部渓谷最奥に位置している。
このルートは、長さ380m、総11ピッチであり、難易度は6級である。伊藤仰二、佐藤祐介、宮城公博は、11ピッチを登る過程で9回もハンギングビレイをしなければならなかった。
 彼らは2016年2月25日午後3時から登山を開始、3ピッチを登り雪が積もったテラスに到着した時間は21時。2月26日に頂上まで登り、そこでビバークした。登山中はスノーシャワーを浴び続けた非常に難しい登山だった。
 日本・北アルプスの冬はかなり厳しく、彼らは22日もの間、好天を待ち続けた。ここでは大雪が降ることでも有名である。一部の人々は、黒部渓谷に入り劔岳を登ることはヒマラヤを登ることよりも難しいと言う。
 ピオレドールアジアのターゲットが必ずしもヒマラヤなどの高山に限定される必要はない。
 ピオレドールアジア審査委員会は、過酷な条件を克服し優れたクライミングをやり遂げた彼ら3人を今年のピオレドールアジア賞の最終候補に選定した。

劔岳 黒部渓谷ゴールデンピラールート
 対象:劔岳黒部渓谷ゴールデンピラールート
 ロケーション:日本北アルプス
 ルート:ゴールデンピラー
 クライミング方式:アルパインスタイル
 隊員:伊藤仰二、佐藤祐介、宮城公博 計3名

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03 HONGKONG TEAM

マナスル速攻軽量登山とエベレスト3度登頂

 都市国家というイメージを持つ香港で「アルパイン」という言葉を連想するのは容易ではない。
 それは「ツァン・チ・シン・ジョン(Tsang Chi Sing John)」にほかならない。
 彼は白い山を夢を見たアルピニストとして、輝かしい業績を成し遂げた。香港人として初めてヒマラヤ8,000m級4座に登頂した。そしてエベレストを南側と北側から登り、2009年には3度目の登頂を果たした。 また、香港人として二番目に「セブンサミット」を達成した。

 2010年に彼はマナスルを4日間で登る快挙を成し遂げた。彼は今まで香港の登山やクライミング文化の発展に多くの努力を傾けた。登山指導者、スポーツ栄養士、スポーツクライミング指導者として活動し、他にも香港の若者のために活動し冒険を行う多彩なアウトドア活動を展開してきた。
 ピオレドールアジア審査委員会は彼の登山活動の中から、特にマナスルを4日間で登った登攀力を高く評価して、今年のピオレドールアジア賞の最終候補に選定した。
マナスル速攻軽量登山とエベレスト3度登頂
 対象:マナスル(8145m)
 ロケーション:ネパールヒマラヤ
 クライミング方式:速攻軽量
 隊員:ツァン・チ・シン・ジョン(Tsang Chi Sing John)

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以上引用おわり

 今年のピオレドールアジア最終ノミネート候補はヒマラヤのアルパインスタイル、北アルプス・黒部のアルパインクライミング、多くのクライマーが訪れるようになった8000m峰登山の中で速攻登山とバラエティに富んだ内容となりました。
 私個人の感想としてはアジアのクライミングの「現代(いま)」を象徴する内容になっているのではないかと感じています。
 例年ですと、11月初旬に月刊『人と山』が主催するレセプションで、クライミング界のホープに与えられるゴールデンクライミングシューズ賞と同時に審査・発表・授与式が行われます。
 さて、今年のピオレドールアジアの行方はいかに。

韓国隊、ガンガプルナ南壁に新ルート開拓 【Korean team established new route on south face of Gangapurna】

 キム・チャンホ率いる韓国隊が10月20日、ネパール・アンナプルナ山群のガンガプルナ(7455m)南壁をアルパインスタイル・新ルートからの登頂に成功しました。

ガンガプルナ南壁にコリアン新ルート開拓 by 月刊MOUNTAIN 2016.10.23

以下引用開始
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ガンガプルナ南壁にコリアン新ルート開拓 
キム・チャンホ、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨンらアルパインスタイルで7日間のクライミング、20日登頂

イ・ヨンジュン編集記者

Ganga
キム・チャンホ、チェ・ソクムン、バク・ジョンヨンら3名が7日間かけてアルパインスタイルによる新ルートからの登頂に成功したネパール、ガンガプルナ(7455m)南壁

 ネパール、ガンガプルナ(7455m)南壁に新ルートが開拓された。キム・チャンホ隊長とチェ・ソクムン、パク・ジョンヨン隊員ら3人は、高度差2900mにおよぶガンガプルナ南壁を7日間のアルパインスタイルで登攀した。3日間かけて下降し22日、BCに下山した。
 今回の遠征隊は、ネパール・アンナプルナ山群のガンガプルナとアシャプルナ(ガンガプルナ西峰、7140m)南壁新ルートからの登頂を目指し、9月12日に出国、最初に試みたアシャプルナは、山頂まで100メートルに迫ったところで退却した。

Member2
 ガンガプルナ(7455m)南壁アルパインスタイル新ルート登頂に成功した韓国遠征隊。左からキム・チャンホ隊長、チェ・ソクムン、パク・ジョンヨン隊員。

 1965年5月6日、ドイツ山岳会のギュンター・ハウザー隊長が率いる遠征隊隊員とシェルパが二度にわたり南面から東稜を経るルートで初登と2登を果たし、1971年に日本隊が西稜から第3登を果たしている。
 南壁は1981年春、カナダのジョン・ラチランとジェームズ・ブランチが初登した。韓国隊は1984年冬にイ・ソクウ(韓国山岳会)が単独で北壁を試み、1986年にキム・ギチョル隊長率いる遠征隊が初登ルートである東稜を経て韓国人初登に成功した。
 初登以来2015年までに24回登られたガンガプルナは、これまで8隊が登頂、1989年にユーゴスラビア隊のフランツ・プシュニク隊長率いる登山隊が北壁から登頂して以来、現在まで登頂者がなかった。

遠征隊は10月29日タイ国際航空便で帰国する予定。今回の遠征隊は、ノースフェイスが後援した。
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以上引用おわり

 2013年にインド洋から自転車・カヌー・徒歩という人力でエベレスト無酸素登頂を果たし、8000m峰14座全山を無酸素登頂したキム・チャンホ氏。
 エベレスト人力登山行で、大事な後輩で8000m峰12座登頂を果たしていたソ・ソンホ氏を亡くし、そのショックからしばらく遠征登山を休んでいたキム・チャンホ氏でしたが、復帰第1弾として選んだのはガンガプルナ南壁でした。
 なお月刊MOUNTAINの記事にもあるとおり、ガンガプルナ南壁そのものは1981年にカナダ隊がやはりアルパインスタイルで初登を果たしています。カナダ隊のラインがはっきり確認できなかったのですが、AAJに記載されている当時の記述、「下部雪田~ロックバンド左寄り~上部の大雪田を詰めて山頂」という様子から、カナダ隊の初登ラインと近接している可能性はありますが、今回の韓国隊のラインは山頂に直上する見事なルートといえるでしょう。

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October 20th 2016, Korean alpinists Kim ChangHo, Choi Seok-Moon, Pak Jungyong established a new route on the south face of Gangapurna (7455m). Their new line, they climbed south face for seven days by alpine style, and they descend for three days to BC.
Gangapurna south face, Canadian team(James Branch,John Lauchlan,the others) made the first ascent in 1981 spring.

天は二物を与えた

毎年この季節になるとマスゴミがにぎわう「ノーベル賞」。

日本では、まあ田中耕一氏や山中伸弥教授などの例外もありますが、棺桶に片脚突っ込んだような爺が受賞するイメージがありますが (え?ぼく何かまずいこと書いてます?)

 日本のメディアはかぎつけてないようですが、今年ノーベル物理学賞に輝いたアメリカ・ブラウン大学のマイケル・コステリッツ(Michael Kosterlitz)教授、バリバリの元クライマーであることが判明しました。

British climber shares Nobel prize by UKClimbing BBS

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「トポロジカル相転移および物質のトポロジカル相の理論的発見」の業績 い や わ か ん ね え よ により、David J. Thouless教授(ワシントン大学)、F. Duncan M. Haldane教授(プリンストン大学)との共同受賞に輝いたマイケル・コステリッツ教授。

マイケル教授は1942年スコットランド出身74歳のイギリス人。
ケンブリッジ大学、オクスフォード大学で物理学を学び、その後コーネル大学、バーミンガム大学を経て現在のブラウン大学教授に就任。

クライミングはイギリスの岩場で修行し、60~70年代にかけてヨーロッパアルプスで活躍しました。
代表すべきクライミングとして、

P1_2
プチドリュ西壁アメリカンダイレクト第2登

P2_3
ピッツ・バディレ東壁バリエーションルートの初登
などが挙げられています。

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クラックを登る若き日のノーベル賞学者。

スーパートポの掲示板の書き込みによればあの「酔っぱらい」ドン・ウィランスらとヨセミテを訪れ、ハーフドーム北西壁、センチネル西壁なども登っているとか。

その後、残念ながら多発性硬化症を発病してクライミングは断念したそうですが、引き続き研究者としての道を歩み、今回の受賞となったものです。

凡人の私など、0.1物も持っていないというのに・・・

元クライマー、そして研究者として一つの頂に立ったマイケル・コステリッツ教授に、敬意を表します。

フォンテーヌブローに油の雨が降る?

 去る9月25日朝、パリ・オルリー空港発、仏領ギアナ・カイエン行きのエールフランス航空ボーイング機にシステムトラブルが発生。
 同機はシャルル・ド・ゴール空港に着陸に際して安全を確保するため、積んでいた航空燃料を空中投棄しました。

 航空燃料を空中投棄した空域が、クライマーにも知られる岩場・フォンテーヌブローの上空のため、物議を醸しています。

Air France plane dumps fuel 'over Fontainebleau forest' by The local.fr 2016.9.26

Un Boeing Air France vidange au dessus de Fontainebleau by Kairn.com 2016.9.25

Airfr
燃料投棄中のエール・フランス機

 報道によればエールフランス航空は投棄場所を明らかにしておらず、民間の航空機軌跡を公開しているサイトによればフォンテーヌブロー上空で幾度か旋回したことが明らかにされています。
 投棄量は数十トン、メディアによっては70tという数字が明らかにされています。

 高度6000フィート(約1800m)付近で投棄された航空燃料の9割は空中で揮発したとみられていますが、残りの1割、7t前後は地上に降ったのではないかと推測されています。

 今のところ森林や岩場への被害の具体例は報告されていません。
 しかしフォンテーヌブローを擁する自治体の市長、自然保護団体は抗議の姿勢を示している一方、航空機が安全に着陸するための当然の措置という意見もあり、議論になっている模様。

 ま、前述のフランスのクライミングサイト Kairn.comに被害事例があがってないところをみると岩場は無事と思われます。
 航空機すなわち人命の安全のためにやむを得ない処置と私は割り切って考えますが、こんな「天災」もありうるんですね。

ロシア隊、テレイ・サガール北壁を完登

 セルゲイ・ニーロフ、ドミトリー・グリゴリエフ、ドミトリー・ゴロフチェンコら、ロシアを代表するアルパインクライマー3名からなるロシア隊が、9月17日午前9時30分(モスクワ時間)、インドの難峰テレイ・サガール(6904m)北壁の登攀に成功しました。

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 セルゲイ・ニーロフら3名は過去にもキジル・アスケルなど辺境のビッグウォール登攀を手掛け、数々のピオレドール・ロシアを手にしている猛者。
 
 テレイ・サガール北壁には、1999年に故アレクセイ・ボロトフ含むロシア・ウラル隊が北壁中央を直上する「ロシアン・ダイレクト」という強烈なルートが開拓されています。
 今回のロシア隊のラインの詳細はまだ明らかにされていませんが、セルゲイ・ニーロフらが挑んだからには当然新ルートからの登攀と推測されます。
 なにぶんロシアのクライミングサイトで公表されているルート図がこれなもんで↓

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 この赤いラインから判断するに、北東稜と2003年に開拓された北壁を直上する「One Way Ticket」ルートの中間を開拓したものと思われます。

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テレイ・サガール北壁に成功した3名
左からドミトリー・グリゴリエフ、ドミトリー・ゴロフチェンコ、セルゲイ・ニーロフ

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9月10日、登攀中のセルゲイ・ニーロフの様子

 幾多ものルートが拓かれたテレイ・サガール北壁ですが、今回のロシア隊の詳細発表が待たれます。

アレックス・オノルドの頭はおかしいのか? 【Medical investigation into Alex Honnold's brain】

フリーソロ・クライミング(ロープ、ギア等を一切用いないクライミング)で知られる、アレックス・オノルド。

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センデロ・ルミノソ(高さ500m、難易度7C)をフリーソロで登るアレックス・オノルド

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アレックス・オノルド近影

 彼の幾多もの驚異的なフリーソロ・クライミングを目にして、クライミングを知らない人はもちろん、クライマーでも「こいつの頭の中はどうなっているのか?」 興味津々な方もおられるでしょう。
 2016年3月、脳医学者、神経学者、心理学者共同によって、アレックス・オノルドの脳の医学的・科学的調査が行われました。
 その結果が非常に興味深いものとなっています。

Estudian el cerebro de Alex Honnold: "No experimenta miedo como nosotros" by Desnivel 2016.8.26(アレックス・オノルドの脳の研究 「我々のような恐怖を経験していない」)

スペイン・Desnivelの元記事となった、Nautilus誌ウェブサイト記事はこちら。
興味のある方はぜひこちらを精読ください。↓

The Strange Brain of the World’s Greatest Solo Climber by Nautilus 2016.8.11
(世界最高のソロクライマーの不思議な脳)

 結論を当ブログ流にいえば、
Hokuto
 アレックス・オノルドのような驚異的なクライマーって、普通の人間が発揮できない潜在能力を発揮しているのかと思いきや・・・

 MRIを用いた医学的調査の結果、人間が恐怖を感じる脳の部分 「扁桃体」 が、通常のクライマーに比較して機能していない、早い話、通常の人間よりも恐怖を感じていない可能性が推定されました。

 今回の医学調査は、サウスカロライナ医科大学の神経学者ジェーン・ヨセフ(Jane E. Joseph)によって進められました。MRIによりアレックス・オノルドの脳の断面画像を撮影、脳の各機能について調査が行われました。

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 技術者ジェームズ・プールと神経学者ジェーン・ヨセフに見守られ、脳の恐怖反応をしらべるためMRIに入るアレックス・オノルド。彼曰く「どうにでもなれと思いました」

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MRIによる脳のスキャン調査の結果。
左がアレックス・オノルドの脳、右が同年齢の男性被験者の脳。
白線がクロスした部分が、脳において「恐怖」感の生成に関与する部分「扁桃体」。
アレックス・オノルドの「扁桃体」は不活性であることが判明。

この結果をうけ、神経学者ジェーン・ヨセフはさらに本質的な疑問を抱きました。
「なぜ彼はフリーソロクライミングを行うのか?」
「(フリーソロが)生命を脅かす行為であることは彼も認識しています。非常にやりがいのあるスリルのような、何か強い動機づけ、心理的報酬があるのかもしれません。」

 今回のMRI調査では、アレックス本人もだいぶ気にしていたようですが、脳そのものは医学的に異常ではない、しかしジェーン・ヨセフいわく「非常に興味深い脳」だそうです。

 さらに調査はアレックス・オノルドの人格調査(心理調査)も行われました。
 その結果がこちら↓

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元図は Nautilus より http://nautil.us/issue/39/sport/the-strange-brain-of-the-worlds-greatest-solo-climber
日本語は筆者加筆。

 人格調査結果もジェーン・ヨセフを驚かせるものでした。
 クライミングの最中は、非凡なまでに冷静で高い集中力を発揮するにもかかわらず、危険への衝動を持っていることが示唆され、平均的なクライマーよりも 「刺激への追求性」 と 「脱抑性(刺激によって抑制が効かなくなる状態)」 でより高いレベルを示しました。

 なおアレックス・オノルド自身は
 自分は大胆不敵な性格ではない。
 自分のクライミング動画を見ていても手に汗をかいてしまう。
 極端にシャイな性格なので、ビレイヤーを探すのが難しくて1人で登るようになった。
 などと証言しています。

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アレックス・オノルドの大胆さを示す代表的な画像。
ヨセミテ・ハーフドーム北西壁、サンクスゴッドレッジに立つ姿。

 スペインのDesnivel誌などはセンセーショナルに「アレックス・オノルドの脳は恐怖を感じない」と報じていますが、前述のジェーン・ヨセフは薬物・アルコール・ギャンブル依存症などを研究している科学者。
 危険の真っ只中にありながら危険をコントロールしているクライマー、アレックス・オノルドを知り、学術的観点から今回の調査に至ったようです。

 アレックス・オノルドの自伝『ALONE ON THE WALL』は残念ながら私まだ未読なのですが、フリーソロ・クライミングに関する彼自身の想いはそちらに書かれているんでしょう。
 第三者によるソロクライマーの医学的調査が、社会的に役に立つというのであれば、前々から自身の限界を押し上げるフリーソロクライミングの意義を説いているアレックス・オノルド自身にとっても、有意義なものではないでしょうか。

トモ・チェセン、マルコ・プレゼリら、スロベニア政府から受勲 【Tomo Cesen, decorated for the medals for contribute to develop slovenes climbers】

去る6月20日、スロベニア大統領府において国家勲章の伝達式が行われました。
今回勲章を授与されたのは、スロベニアを代表する登山家達です。

Državna odlikovanja slovenskih alpinistov, plezalcev in planincev  by najdi.si 2016.6.21

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今回の受賞者 右から、マルコ・プレゼリ、アンドレイ・プリバー、ボルト・パホル(スロベニア大統領)、トモ・チェセン、トーネ・スカリャ

 今回の叙勲は、長年にわたるスロベニア登山界への貢献に対して勲章が贈られたものです。

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マルコ・プレゼリ氏。
当ブログをご覧の山屋な方には今さら説明するまでもありませんね。幾回ものピオレドール受賞に代表される素晴らしいクライミング以外にも、近年のヒマラヤ遠征にみられる若手クライマー育成もスロベニア登山界への貢献として評価された模様です。

 マルコ・プレゼリ氏といえば、こういった賞の類いを嫌っているイメージがありますが、軍に所属していた頃には、その個性的な性格が災いして酒保のバーテンを務めていた不遇の時代もありました。あのプレゼリが「お通しこちらです」とか、「お会計です」とか、に近いことをやってたんでしょうな。
 クライミングの成果が認められ、軍隊で登山コーチを務めるのはその後になります。軍という国家組織において苦労した経験から、政府からの叙勲はピオレドールとはまた異なった感慨があるはずです。

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今回の報道でもっとも注目すべきは、トモ・チェセン氏の叙勲です。
スロベニア大統領公式ウェブサイトも確認しましたが、80~90年代にわたるソロクライミング(ローツェ南壁に関しては全く触れられていません)、それ以上に、90年代以降におけるスロベニアのスポーツクライミングを世界レベルに引き上げたコーチとしての実績、大会運営への尽力が評価されました。

 トモ・チェセンといえば、いまだに日本では「疑惑の人」呼ばわりされていますが、こうして国家から叙勲される人物を、いつまでも池田某老人の評価をうのみにして詐欺師扱いしてよいものでしょうか?

 息子2人はいずれも世界レベルのアルパインクライマーに育ちました。
 その一人アレシュ・チェセンはマルコ・プレゼリと共にハグシュ北壁でピオレドールを受賞、スロベニアを代表するクライマーとなりました。またトモ・チェセンがコーチを務めたスポーツクライミングでもスロベニア勢の活躍はご存じのとおりです。
 国家勲章の叙勲それ自体はローツェ南壁「疑惑」の払拭にはなんの関係もありませんが、いい年した山屋なら覚えているでしょう、あれだけ世界各国の山岳界を騒がせた疑惑騒動を乗り越えて、こうして登山・クライミングに貢献してきた生き方は評価されるに値すべきものがあるのではないでしょうか。

 東京住まいで仕事も山も立派にこなしている優秀なアルパインクライマーの大センセイ方と違い、私は失敗の多い人生を送ってきましたので、山と渓谷社ウェブサイトに「大悪党」などと侮辱されたチェザレ・マエストリや「疑惑の人」トモ・チェセンの『その後の人生』には非常に興味を持っています。

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トーネ・スカリャ氏は今年79歳、ユーゴ隊によるエベレスト西稜隊隊長はじめ、旧ユーゴおよびスロベニアのヒマラヤ黄金時代を築いた重鎮です。

もう一人、アンドレイ・プリバー氏はスロベニア山岳会における長年のボランティア活動が評価され、今回の叙勲となりました。

叙勲の模様は動画で公開されています。

なお日本で入手できるスロベニア登山史の資料として、当ブログで紹介した Bernadette McDonald著『ALPINE WARRIORS』 があります。マルコ・プレゼリ氏のトモ・チェセン氏に対する見解も興味深いものがあります。

Bernadette McDonald著 『 ALPINE WARRIORS 』 by 当ブログ2015.11.22

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