山女日記 ~女たちは頂を目指して~

 さすらいの現場作業員生活、ビジホに滞在しているおかげてBSで放映中の 『山女日記 ~女たちは頂を目指して~』 を視聴。
 貧乏暮らしなもんで自宅では衛星放送見られないんす。

 第3話『てっぺん ~唐松岳~』から初めて視聴しましたが、いや~いいわ~
 佐 藤 藍 子 が っ
 やっぱショートカットの佐藤藍子って(以下省略)

 facebook経由で製作の模様など伝え聞く程度でしたが、実際のガイドの方々の感想が一つも聞こえてこないんすけど・・・

 視聴した感想は、テレビドラマとして私は面白かったです。
 それ以上でもそれ以下でもありません。
 山やってる女性の感想お聞きしたいですね。
 私は兼業ガイドとしてツアー引率して、女性客のドロドロした関係をみてきたけど(あんまりブログに書けない)、兼業ガイドの自分でさえそうなんだから、専業ガイドのセンセイ方はもっと修羅場くぐってきたんじゃないかと思います。
 
 ま、アレです。
 自分ぶらさがったロープをナイフでぶった切ったりする「山岳」映画よりいいんじゃないんですか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【全俺が】 台湾映画『太陽的孩子』 【泣いた】

本記事には、映画のネタバレが含まれます。
該当映画は作品の素晴らしさにもかかわらず、日本の配給会社の無能のため商業上映が未だ実現されておりませんのでご了解ください。

-------------------------------------------

町内子供会の行事のため、家族で蔵王・坊平でバーベキュー。
とりあえず家族サービスは済ませた。
子供会行事終了後、おまわりさんに言えないスピードで車をぶっ飛ばし蔵王から下山、私だけ山形県立図書館で下ろしてもらう。
台湾映画『太陽的孩子 (太陽の子)』を鑑賞するためである。

Sun

-------------------------------
ストーリー

台北でジャーナリストとして働くアミ族のパナイは、父が病に倒れたため帰郷。
久しぶりの故郷の田畑は荒れ果て、観光客目当ての再開発計画が持ち上がっていた。
開発と伝統の二つに分かれるアミ族の人々。
パナイは自分の名前の由来(稲穂=パナイ)である伝統の米「海渡米」栽培を復活させるべく、会社を辞め、故郷に戻る。

行政の無能さと冷たさに抗い、反対する村人を研究者とともに説得し、水田復活のカギとなる水路を再整備し、海渡米栽培を復活させる主人公パナイ。

しかし、行政の不手際で水田が国有地として登録されており、突如、駐車場工事が着手される。
座り込みをして主人公や村人たちは抵抗するが、警官隊に強制排除される。

パワーショベルが水田に向かったそのとき。

今まで、主人公パナイの水田復活に反抗的な姿勢を示していたパナイの娘、ナカウがパワーショベルの前に立ちはだかる。
ナカウは警官に取り押さえられるが、その模様は映像としてネットに流出、テレビニュースでも採り上げられる。
「未成年でモザイクもかけずに・・・」とマスコミの報道に激怒するパナイ。
だが、その報道によって台湾全土に支援の声があがり、まったく売れていなかった海渡米が完売。工事も中止となる。

そして村人たちがアミ族伝統の祭りを繰り広げる夜・・・・

-------------------------------
 
 台湾には政府認定の少数民族が16民族、存在します。
 その中の一つ、アミ族の人々。
 開発と伝統に揺れる村。
 民族問題、農業問題、台北と地方との格差。
 世界各国が抱える普遍的な社会問題をうまくドラマとして紡ぎ上げているため、この映画はヨーロッパでも高く評価されました。
 日本では残念ながら商業的な問題で日本の配給会社が手を出さないため、ジャーナリスト野嶋剛氏をはじめとする有志が非営利での上映権を取得、日本での自主上映を実現させました。
 この山形市での上映は日本で3箇所めになります。

 私も最近は歳なもんで、

Sun3
 突然に水田で工事が始まり、警官隊が村人を強制排除するシーン。
 老婆が若い警官にむかって
 「ぼうや、あんたもどこの部落なんだい?」
 と語りかけ、同じアミ族らしい若い警官が呆然とし、排除する警官隊の列から離れていく姿に涙がサラッと流れました。

 そしてラストシーン。
 この映画は前編を通じて、主人公パナイと反抗する娘ナカウとの姿を描いた「家族の映画」でもあります。
 ナカウが陸上競技の才能を開花させ、その才能で進学が決まるストーリーが伏線にあるのですが、ラストでナカウは弟に言い聞かせます。
 
Sun2
『お姉ちゃんは台北の学校に行く。お母さんをよろしく。』

 ナカウが陸上競技で推薦されて進学が決まる場面はないのですが、巧妙な演出で観客はそれと気がつきます。そのナカウの決然と語る姿に、やはり涙がサラッと流れました。
 ナカウを演じるのは、現地オーディションで決まったアミ族のウー・イエンズー。監督いわくナカウにはこの子しかいない、と直感したとのこと。そのまっすぐな瞳が魅力ですね。
 この映画は出演者のほとんどが現地住人のため、ロケ地を訪れると普通に映画出演者が歩いているらしい(笑)

 経済、そして教育。
 大都会・台北と、仕事も無い地方都市との格差も、この映画のテーマです。

 全編を流れる、先祖伝来の土地への畏敬の念、稲作と米食への賛歌。

 今秋9月に福岡での国際映画祭で上映が決まっています。
 人の不幸の切り売り映画のような芸術映画と違い、鑑賞後は爽やかな印象とおそらくは各地どこにでも存在する社会問題と家庭の問題を考えさせられます。
 日本人なら絶対観ろ!
 自信をもってお勧めします。

 背景に流れる、アミ族歌手Difan(郭英男)の「酒を飲む老人の歌」をアレンジした曲が懐かしい。
 若かりし頃、台湾を自転車で走っていた時に何度も頭の中でリフレインしていました。

 映画トレイラーを兼ねた、主題歌『不要放棄』動画もお勧めです。
 

 映画『太陽的孩子』正式予告編

| | コメント (4) | トラックバック (0)

【映画】Wild 邦題『わたしに会うまでの1600キロ』

Wata 金曜、夜。
 以前に当ブログでも紹介した映画『Wild』 (邦題『わたしに会うまでの1600キロ』)を、上映最終日のレイトショーでようやく鑑賞。

 ストーリーは、

 薬物とセックスに狂ったマザコンのバカ女が山道を歩いて考え事をするおはなし。以上。

 である。(え、ぼく何か事実と異なること書いてます?)

 当ブログ流・映画評のとおり、結論から書く。
 
 なかなか良かったよ。

 映画に関しては賛否が激しいようですが、私にはあっという間の2時間でした。

 製作から上映に至るまで、山形県朝日少年自然の家サポーター仲間で、日本人としてロングトレイルの第一人者である 斎藤正史さん とは、

 「今度映画化なるみたいですね。」
 「夏から公開みたいですよ。」

 と顔を合わせる度、映画の話題になっておりました。
 ロングトレイルには無知な私、映画の所々に現れる入山者登録ポストや休憩所、ボラでウォーカーを世話する人、補給物資の受け取り方・場所など、新鮮な光景でした。

 それはさておき映画の内容ですが、まあ私は主人公のようにドラッグ中毒でもないしセックス中毒でもない(一応)のですが、じゅうぶん感情移入することはできました。
 この映画、ロードムービーという体裁ですが、描かれているのは家族と人生です。
 私とはかけ離れた境遇の主人公ですが、一昨年、実父を亡くした経験からなんでしょうね。
 母親を描いたシーン、実はPCTの光景よりも印象深く受け取りました。

 この映画を評すると、どうしても他の方の映画評を評してしまうことになるのですが、長旅の終わりなんて、あっさりしたもんですよ。
 なんの変哲もない鉄橋で、彼女の旅の終わりが暗示され、彼女のモノローグで映画は終わる。

 冒険にでるわりに主人公は無知無謀、準備がなってない、という評をあちこちで目にするのですが・・・
 おいおい、それこそ高体連登山部の教師みたいに

 「布地は鏡のようにテントはピシッと張れ!」とか、
 「調理中は常にコッヘルの蓋をおさえる!」とか、

 主人公がスムーズに道具を使いこなしバリバリPCT歩いて行ったらドラマにもなんにもなんねーだろ。
 
 だいたい人間なんて、長旅いっぺんしたくらいでそんなに変わらねーよ。
 そんなところ、物語後半で主人公が行きずりの男に身をゆだねる場面によくあらわれてます。

 私は主人公のように歩く旅の経験は無いけれど、長旅はチャリンコと海外登山で幾度か経験してます。
 その経験から言って、この映画のストーリーの柱となる「主人公の記憶のフラッシュバック」の入れ方が非常に巧い。

 エロエロなシーンもあるので万人には勧めませんが、ロードムービーとして私にとっては自然に受け入れられる映画でした。

 旅を志す若者には『モーターサイクルダイアリーズ』を。
 (まちがっても『イントゥ・ザ・ワイルド』とかいうクソ映画ではない)
 旅を志す中高年には『星の旅人たち』を。
 悩み多き方々には、どうぞこの映画を。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【映画】 ルイス・トレンカーの伝記映画公開

 山岳映画マニアな方なら名前はご存じであろう、第二次世界大戦前の山岳映画製作で活躍したオーストリアのルイス・トレンカーの自伝的映画 『Luis Trenker』 がドイツにて8月末から公開の模様。

Premiere von Luis Trenker-Film by Tirol.orf.at 2015.8.23

Trenker_movie
劇中のルイス・トレンカー(Tobias Moretti)、レニ・リーフェンシュタール(Brigitte Hobmeier)

トレイラーはこちら↓

 ルイス・トレンカー出演作として「象徴的」なのは、『聖山』でしょうかね。
 この映画の監督は、蔵王の樹氷を世界に知らしめたことで山形県人にはその名が知られているアーノルド・ファンク、出演がレニ・リーフェンシュタール、そしてルイス・トレンカー。
 彼は後に映画製作で活躍することになります。
 そして、レニ・リーフェンシュタールをめぐってアーノルド・ファンクと三角関係に陥ることになります。

Luis_trenker
ドロミテ山群でのルイス・トレンカー( Luis Trenker 1892~1990)

 トレイラーでもちらとナチス旗がみえますが、「日和見的ファシスト」と呼ばれることになるナチスとの関係が描かれていくのは必至でしょうな。
 後年、ヒトラーの愛人エバ・ブラウンの日記を偽造(もしくは改竄)したスキャンダルで晩節を汚したルイス・トレンカーですが、こうして映画化されるところに、ヨーロッパの映画関係者の層の厚さが伺えます。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

LOOK UP

今回、まるまる二日間スマホ無しの生活を送り、あらためてスマホのメリット・デメリットを感じる。

以前からガラケーに戻すべきか考えていたし、SNSに懐疑的になり、スマホからfacebookは削除していた。

そんな私がさらに考えさせられたのは、次の動画を拝見してから。

 私がスマホを使うのは、

 カーナビのアプリで山行計画の移動時間を知る。
 目覚まし時計(仕事から帰ったあと、5~10分単位で仮眠をとる機会が多い)

 そしてなんと言っても、出張や外出の多い私にとって、現地の公立図書館の蔵書検索ウェブサイトにアクセスできるのが大きなメリットだ。
 手のひらサイズで、何千何万という蔵書・論文を検索できる端末が手元にあるのだ。

 私と違って仕事がバリバリできる取引先の人からも
 「スマホは便利ですよ。この便利さはなかなか元には戻せないですよ」
 と言われる。

 スマホ無しの生活を送り、結局iPhoneに戻った私。
 「道具に使われる」のがとにかく嫌だったので、auショップとアップルのサービスセンターをたらい回しにされようと冷静を保っていたのだが、あの二日間の喪失感の無さ。
 iPhoneを使い始めたときにブログにも書いたけど、やはりスマホはあくまでも道具として使い続けていこう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ドキュメンタリー番組『K2. Dotknąć nieba』

1986年、世界のトップクライマー13人が命を落とした山、K2。

それから約30年。
夢と野心に憑かれて死んだクライマーの子供達が、K2を訪れ、亡き父・母の想いをふり返る。
そんなドキュメンタリー番組『K2. Dotknąć nieba』 (K2 天空に触れて) がポーランドで製作されました。

„K2. Dotknąć nieba” – niedługo premiera filmu Elizy Kubarskiej by wspinanie.pl 2015.5.21

 1986年、K2のいわゆる「ブラックサマー」で亡くなった13名のうち、タデウシュ・ピオトロフスキー、ドブロスラワ・ミドウィッチ・ヴォルフ、ジュリー・チュリス。
 30年を経て、彼らの子供、ハニア・ピオトロフスカ、ルーカス・ヴォルフ、クリス・チュリスがK2山麓を訪れます。
 なぜクライマー達は全てを犠牲にしてK2に向かったのか。
 そんな大きなリスクを賭けるに値する行為なのか。

P1
『K2. Dotknąć nieba』より Photo by David Kaszlikowski / HBO
 
 自身もクライマーであり番組製作・監督であるエリザ・クバルスカがコメントしています。

「私は過去に英雄たちを映画に収めてきました。そのため、彼らの父や母は今も記録映像の中に生き続けています。子供達も今や大人になりました。 私は情熱の価値というものについて考えています。 このような登山は虚栄心を満たすための行為なのか、エゴイスティックな行為なのか。それとも他の何かなのか。その答えを見いだすことは容易なことではありません。」

 作品は6月にクラクフ映画祭はじめポーランド各地で公開予定。

 残された家族が問う、8000m峰登山の価値、そして死んでいった親達への想い。
 
 NHKの地球ドキュメンタリーあたりで放映してくれたら、会社休んででも視聴したいところです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ピアノマニア

茨城でのビジネスホテル暮らし。

貧乏な我が家では視られない、衛星放送視聴が楽しみの一つ。
視るのは海外報道番組とドキュメンタリー。

特に印象に残ったのが、NHK BS世界のドキュメンタリーで再放送された、『ピアノマニア ~調律師の“真剣勝負”~』

『ピアノマニア』はもともと2012年に日本でも劇場公開された映画で、今回『BS世界の・・・』で放映されたのは半分ほどにカットされた短縮版になる。それでも素晴らしい内容のドキュメンタリーだった。

 世界各国の著名なピアニストらの信頼も厚いピアノ調律師シュテファン・クニュップファーの活躍を描いた番組である。
 ナレーションは全く無い、もっぱらシュテファン・クニュップファーの語りと著名ピアニストらのインタビューを中心に構成されている。

 私の実家にも、保母を目指した姉のためにアップライトピアノがあったため、少しはピアノを身近に感じている(私が弾ける訳ではないのだが)
 調律師といえば、黙々とピアノの調整をする職人、というイメージがあったのだが、この番組はそのイメージを見事にぶちこわしてくれる。
 頻繁にピアニストらとコミュニケーションをとり、ピアノを調整していく。
 『ピアノの音』、ピアニストらが頭にイメージしている『音楽』。
 それら言葉にし難いモノを言葉にし、時には様々な別の楽器も用い、シュテファン・クニュップファーがピアニストらといかにコミュニケーションをとっていくのか。
 音楽には門外漢である土木作業員の私には、その姿がとても興味深く思えたのだ。

 華やかに喝采を浴び、聴衆から称えられるピアニスト達。
 それを陰から支える調律師。
 みずからの栄誉欲というものは無いのだろうか?
 そんな疑問を抱く私に、テレビ画面のシュテファン・クニュップファーは、

 『私の仕事は演奏会までには終わるから気楽なものです』

 という意味の答えをあっさりと口にする。職人なのだ。
 そのわりに、ピアノのパーツを用意し忘れたりというミスもあり、完璧な職人であると同時に人間味もちらりとみせる。

 そしてこの番組の中で、最も心を動かされた言葉は、こんなセリフだ。

 『問題が起きて落胆したことは一度も無い。科学の研究と同じです。』

土木作業員としても、兼業ガイドとしても、考えさせられた一言だった。

 クラシック音楽など興味無い人でも、その職人ぶりに注目の番組である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

エベレストめざす女性がテレビドラマに

・・・といっても、インドのテレビドラマの話な。

 当ブログでも、スポーツクライミングがテレビドラマに採り上げられる韓国や、チョモランマ登山をテーマにした中国映画をとりあげてきましたが、ついに、長大なヒマラヤ山脈を擁するインド、経済発展著しいインドで、エベレストをめざす女性の話がテレビドラマとして制作・放映が決定しました。

Ev3

 ストーリーは、

 21歳のアンジャリ・シン・ラワットは、父が娘を望まず生まれてきたことを知ります。このことはアンジャリを傷つけ、自分自身の存在に疑問を持つようになります。
 そこで彼女は、父が果たせなかった夢、エベレスト登頂をめざし、父親の愛を勝ち取ろうと考えます。
 しかし、エベレスト登頂への道のりは容易なものではありませんでした・・・・・

 ・・・って、すげえ!
 父親の愛を勝ち取るためにエベレスト遠征!
 「花王 愛の劇場」も「世界の果てまでイッテQ」も真っ青なストーリー!

Ev2
 インドでのドラマ制作発表の様子

 ちなみにヒロインを演じるのは、
Shamata
インド・ムンバイ出身のモデル兼女優、Shamata Anchanさん。

 ドラマのトレイラーはこちらです。↓
 (スマホではご覧になれないようです)

山岳ガイドが観る映画 | | コメント (0) | トラックバック (0)

日本ロシア文学会シンポジウム『アンドレイ・タルコフスキー、映画/文学を越えて』

現場作業で土曜も忙殺され、連休は天気も悪いし休養を決める。

2日、山形大学で開催されるシンポジウム『アンドレイ・タルコフスキー、映画/文学を越えて』に出席。

 最初この催しを知ったとき、「なぜに山形でタルコフスキーのシンポジウムが!?」と信じられない想いだったが、よくよく聞けば、山形大学で開催される日本ロシア文学会全国大会のイベントだとか。
 こんなの東京で開催したら人集まるよな~と思いつつ山形大学に来てみると、会場はスーツ姿の研究者がほとんど。

 その中を、ファイントラックのトレッキングパンツ履いて、ワークマンで購入のタトゥー風に雷神・風神プリントされた鳶職トレーナー着た私がズイズイと竹内力なみのオーラ発して会場に入る。
 いや現場作業員だってアンドレイ・タルコフスキーの映画は見るんだよ。

Ta1
アンドレイ・タルコフスキー(1932~1986)

 シンポジウムは、早稲田大学文学学術院准教授である坂庭淳史氏が持ち帰った、アンドレイ・タルコフスキー氏の妹であるマリーナ・タルコフスカヤ氏のビデオレター上映から始まる。
 タルコフスキー監督の映画で一番好きなのは?という質問に対し、マリーナ氏いわく、『全ての作品が好き。特に挙げれば、『鏡』の中で、女性と男性が立ち話し、男性が去りゆくところで風が草原を揺らす場面。』

Wind
『男と女、そのまま別れないで何か起こるのではと思わせつつ、結局男は立ち去っていく。そこに吹く風の場面。』

 日本のタルコフスキー・ファンにあててコメントを、という問いには、
 『時々で良いですから、映画を見直してみて下さい。自分の木に、自分の魂に水を与えて下さい』
 という回答。

 その後は各先生方の発表。多くが映画『ノスタルジア』の一場面を上映しながら、タルコフスキーの思想と人となりを検討していく内容。
 もともと日本ロシア文学会は映画研究の集団ではないのだが、タルコフスキー映画の文学性に着目して今回のシンポジウム開催となったようだ。

 シンポジウムの中で映画関係者といえる井上徹氏(エイゼンシュテイン・シネクラブ代表、ユーラシア研究所運営委員長)の話題は最も親しみやすかった。
 その昔、旧ソ連の映画が日本でも流行っていた時代があり、アート映画と思われているタルコフスキー映画は結構人が入る映画であったという。

 もっとも、シンポジウムでコメンテーターを務めた大平 陽一 天理大学教授の言葉、「映画みてて、わかんなくて寝てたりしてた。そこまで細かく映画見る必要あるのか? でも次見るときはこういう視点か、といろいろなことがわかってくるのかもしれない」という言葉が正直でイイ感じでした。

St1
映画『ストーカー』より

 タルコフスキーの映画で美しい光景を見た後も、偉い先生方の解釈を勉強した後も、私の現場作業生活はまだまだ続きます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【映画】 クライマー パタゴニアの彼方へ

Climbermovie 映画『クライマー パタゴニアの彼方へ』を鑑賞。
先日の記事でも書いたように、私の周囲では「賛否両論」な映画なんですが、私自身はドキュメンタリー映画として引き込まれました。
「フリー化」というクライミング関係者でなければ到底興味を持たれないようなテーマですが、あの盛り上げ方はレッドブルならでは、という気がします。

 私はもともとクライミングなんて嫌いですし、さらにダーフィット(デビッド)・ラマみたいな天才肌はさらに嫌いなんですが。
 いやそうでしょ?
 自分が何度も何度もトライしてもダメなトコを、センスと才能に恵まれた連中はさほどの苦労もなくサクサク登っていく、あの悔しさ?

 月山の積雪下のブナなみに根性ねじ曲がっている私ですが、劇中でセロトーレの核心部で

 『無理かもしれない』
 
 というダーフィット(デビッド)・ラマのつぶやきに、凄いシンパシーを覚えました。
 『無理かもしれない』
 そんな言葉、クライミングの最中に思い浮かびますよね(少なくとも私は)

 さらに劇中、強烈に印象に残ったのはジム・ブリッドウェルの言葉

 『希望はまやかしに過ぎない。信念を持て。』

 ですね。

チェザレ・マエストリは『大悪党』なのか?

 この映画を鑑賞して、私はチェザレ・マエストリに思いを巡らさずにはいられませんでした。
 映画の冒頭でマエストリに関する貴重なフィルムが流用されています。
 
 映画自体も、また映画を鑑賞した日本人の多くも、フリー化をめざすダーフィット・ラマとボルト乱打したマエストリを対照的にみる方が多いようです。

 しかし、はたしてそうでしょうか?
 
 劇中ではブリッドウェルやグロバッツらそうそうたる面々がコメントしていますが、私は確信しています。

 ダーフィット・ラマのフリー化を最も感慨深く受け取ったのは、マエストリではないか、と。

 そもそもチェザレ・マエストリは、1950年代当時における最高のソロクライマー、フリークライマーの一人でした。
 当時としては最困難と目されるチヴェッタ北西壁、マルモラータ南西壁をバックアップロープもZ法も使わないフリー・ソロで登攀。 さらにザース・マオールのゾレダールート単独2登やクロッツォン・ディ・ブレンダ単独登攀を果たした際には同ルートの初「クライムダウン」も果たしています。
 
フリークライミングの名手だったマエストリは、1960年のローダ・ディ・ヴァエル南西壁の新ルート開拓においてボルトを使い始め、以後セロトーレ遠征に続きます。おそらく当時の「最先端」であった「ディレッテシマ」の流行が関係しているものと私は推測しています。

 日本の山岳メディアでマエストリを詳しくとりあげたのは『岩と雪』誌33号のインタビュー記事程度しかないのですが、セロトーレのボルト事件の陰で、マエストリのフリークライマーとしての経歴があまりに軽視されているのではないでしょうか?
 
 山と渓谷社のサイト「Climbing-net」では『大悪党』とまで形容されているマエストリですが、イタリア山岳会では名誉会員であり、クライマーとしての経歴からイタリア・ヴェローナ大学スポーツ学科から学位も授与されています。

 ブリッドウェルらビッグウォールクライマーのコメントが劇中に効果的に挟まれていますが、このセロトーレ・フリー化にコメントするに最もふさわしいのは、チェザレ・マエストリその人だと私は考えています。

参考サイト:
映画クライマー 公式ツイッター チェザレ・マエストリが寄せたコメント

| | コメント (0) | トラックバック (0)