池田昭二著『忘れがたい山』

池田昭二著『忘れがたい山』を読む。
郷土出版物として、素晴らしい良書を送り出している無明舎出版の本。
池田昭二氏は鳥海山を中心に活動された先達であり、終戦直後、昭和30年代の冬の鳥海・飯豊を中心とした記録集である。
この本については山形県在住の登山愛好者の皆様方もブログやネットで取り上げておられますので詳細は省きますが、印象に残るのは「食」への執着である。
終戦後、そして特に貧しい東北地方という事情も背景にあるのでしょうか、その社会環境下で登山を行うためには「食糧」が問題となる、現在とは全く異なった世界がそこにありました。
特に強烈に印象に残るのは、池田氏率いる山岳部が遭難騒ぎを起こしたエピソード。
麓では遭難対策本部が設置され、下山した池田氏が関係者の挨拶回りに赴くと、37000円の請求書を手にすることになる。
その内訳で、遭難救助員が全員でカツ丼を食べたという事が判明する。
当時のカツ丼は庶民が滅多に口にすることのない「御馳走」。
『かかる費用はすべて遭難者の負担。うまいものを食べるチャンスは今』(本文より)
池田氏の筆は、遭難記録を通じて当時の社会状況までありありと浮かび上がらせている。
そしてこの本の巻末には、池田氏がとりまとめた『雪洞とフォーストビバーク』という雪洞設営に関するノウハウが掲載されている。
この内容は以前、同じガイド団体でお世話になった八木文明ガイドからコピーを頂いたことがありました。
こうした先達の登山技術が出版物として記録されるのは非常に意義のあることだと思います。
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