神田神保町 ろしあ亭 

平日に公休取得、セックスと暴力に彩られた街・東京へ。

午前中に野暮用を済ませ、午後からは所属するガイド協会の会議。

その前に神田神保町でランチ。

Ru1ランチセットのボルシチと、

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白いビーフストロガノフでエネルギー充填。丸いのはライスではなく蕎麦の実。

 中学生の頃からオストロフスキー『鋼鉄は如何に鍛えられたか』やレルモントフ『現代の英雄』に親しんでいた私は、社会人になって東京に行く機会の度、ロシア料理店に通った。

 でも、パミール高原で高所登山の経験があるTさんいわく、「ロシアの黒パンは最低だ。あれだけは二度と喰いたくない。」と私の夢をぶちこわしてくれた(笑)。

 そのTさんもK2登頂を夢見ながら病に倒れ、世を去った。

 東京のロシア料理で腹ごしらえしてから、重たい課題が待ち受ける午後の会合へ出発。

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ヤマガタダイカイギュウと化石掘り 2019

山形県朝日少年自然の家の企画事業『ヤマガタダイカイギュウと化石掘り』にサポーター参加。

Dsc00823 今年も山形県朝日町のヤマガタダイカイギュウ発掘現場の見学から始まる。

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山形県立博物館の小林先生をお迎えして、珪化木の解説。この後、子供たち皆でチゼルハンマーで珪化木を叩いてみました。

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周辺の地質状況解説の間も、「化石掘りまだ?」と待ちきれない子供たち。小林先生から安全面の注意を受け、露頭に移動。さあ、子供たちのお待ちかねの時間。でも毎年思いますが、子供たちより親子参加のお母さん方が化石採掘に夢中になってます。

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 掘り出した化石は小林先生にその場で鑑定してもらいます。軍手も外し、子供たちの手(右)は泥だらけ。小林先生はどんな化石でも、たとえそれが化石ではない、火砕流に巻き込まれた岩石でも、掘り出した石の意義・意味を解説してくれるので小さな子供たちも保護者の方も喜ばれていたようです。

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 私の掘り出した化石の一つ。二枚貝の稚貝が多かったです。所員の工藤さんはハマグリ級の大物二枚貝をゲット。たとえ一部でも、巻貝の化石は子供たちも大喜び。

Dsc00833 化石掘り終了後は、参加者の皆さん親子同士で弁当昼食。

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 昼食会場の一本松公園からの椹平の棚田を望む。亡き人をめぐる出来事が多すぎた今月、久々に子供たちを相手にして精神的に生き返る思い。化石もまた、死んだ生物の「生痕」なのだが、まあ難しいコトを考えるのはよそう。曇りがちの空から差し込む日差しの下で、私達は穏やかな時間を過ごした。

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  例年、朝日少年自然の家でも最も人気のある企画事業の「化石掘り」。今年は受付開始直後から自然の家の電話が鳴りやまなかったとのこと。申し込み希望の方は受付開始後に速攻で電話するのが吉です。

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生者と死者の間

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19日、大雨・暴風の中、田沢湖へ。

JMGA加入以来、18年組織を共にしたガイド仲間が山で亡くなる。

兼業ガイドの悲しさ、捜索にも葬儀にも駆けつけられず、ようやく今日、弔問。

 今月は高校山岳部の先輩のお父様が亡くなり、さらに亡父の七回忌を迎え、法要は家族だけで済ませるべく、父方の親戚への根回し、寺の法要手配等々。メディアでは台風19号で亡くなった遺族の話題が連日続く。

 その一方で、娘は進学に備えて美術系予備校の講習会に通うため、私が毎晩迎えに車を走らせる。

 逝く命、見送る死者と、開かれた未来がある世代の間を、私はウロウロするだけの1ヶ月。

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【レビュー】ストームゴージュアルパインパンツ

ファイントラック社のストームゴージュアルパインパンツを購入。

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左が従来愛用してきたストームゴージュパンツ、右がストームゴージュアルパインパンツ

 FT社のストームゴージュアルパインパンツを購入。
 以前はフランスのアイダー社のパンツを登山用だけでなく普段着としても着用していた。アイダー社製品が日本から撤退、入手できなくなり、生地もゴムも劣化してしまった。

 アイダーのパンツにとって代わったのがFT社のストームゴージュパンツである。生地がゴワゴワするという方もおられるが、私は登山用だけでなく普段着としても利用している。さすがに傷みが目立ってきたので、今回はストームゴージュアルパインパンツを新たに購入。

 早速、悪天下の古寺鉱泉~大朝日岳往復で使用してみた。

 驚かされたのが、生地の撥水能力。

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 登山口から歩き始めて6時間後のパンツ生地をマクロ撮影したもの。天候は小雨~霧雨の繰り返し。風が吹いていたため、常に雨粒が身体に吹き付ける状態だった。

 新品ということもあろうが、雨粒を一切通さない撥水能力を保つ。

 私は登山において、よほど強い雨でないかぎり雨具のズボンは着用しない。ガイド山行ではお客様から「ガイドさん、下履かないんですか」と心配されるほどだ。理由は単純、汗かきな私は雨具のズボンを着用しても結局身体が発する汗でずぶ濡れになること、足回りがブカブカするのが嫌だということに由来する。

 これだけの撥水能力があれば、雨具の下を履かない私には大変便利なパンツとなる。

 さらに特筆すべきは、ストームゴージュパンツに比較して太股のベンチレーターが大型な点である。

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左がストームゴージュパンツのベンチレーター(FT社の用語ではリンクベント)、右がアルパインパンツのベンチレーター

大型ベンチレーターの効果だろう、風を受けると太股・膝周りの空気が動いていることを実感する。

これらの撥水能力、ベンチレーターのおかげで、先日の大朝日岳往復は一日中、雨具のズボンを着用せず、かつ快適に歩くことが出来た。

難点を挙げるとすれば、

Ft5 ベンチレーターが大型になったため、脚を曲げた際にシルエットが乗馬ズボン並みに横に広がってしまう。私は格好に無頓着な方なもんでさほど気にしないが、人によっては好みが分かれるところだろう。

 所有しての課題は、今後は幾度もラフに洗濯するわけで、どうやって新品同様の撥水能力を保持するか、になるだろう。

Ft2_20191002090601上がストームゴージュパンツ、下がアルパインパンツのバックル

 今後はこのパンツを存分に使い倒したいと思います。

※当初、記事中で別モデルの「ストームゴージュパンツ」を「旧モデル」と誤って表記しておりましたので修正しました。(2019.10.1)

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さよなら、古寺鉱泉・朝陽館

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今シーズン限りで営業を終える古寺鉱泉・朝陽館に泊まる。営業最後の年のためか、週末はツアー等で予約いっぱいのところ、空いている日曜宿泊で予約成功。明日は古寺鉱泉から会社に出勤である。

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2階の部屋に案内され、宿帳に名前と住所を記入。ご主人から、

「あれ、山形市の○○に住んでるの?おれ近くの△△出身なんだけど」

同じ学区の出身ということで話が盛り上がる。

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同じ学区出身ということで?にこやかに宿の説明をしていただく。窓に置いてある布テープは「カメムシ君」(ご主人談)対策。カメムシがでてきたら、手に触れないようにしてテープに貼り付け、備え付けの袋に入れる。

「まず入浴して汗流しましょう!」

ご主人に勧められ、入浴。

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源泉は7.3℃の含二酸化炭素ーナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素泉冷鉱泉。それを沸かしたお湯が幾人もの登山者を癒やしてきた。

一風呂浴びて、夕食までの2時間、のんびり過ごす。

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窓からの光景。古寺川の流れる音。

初めて朝陽館に泊まったのはだいぶ以前、ツアー登山がまだ盛んだった頃。

大朝日岳の日帰りツアーから下山し、朝陽館の前に到着した時のこと。登頂できて涙を流すお客様をみて、山岳ガイドという仕事の素晴らしさを知った。

宿泊しなかったものの、ガイド山行で前を通り過ぎる時、これから山頂を目指す緊張感、下山した時の安堵感。

昭和12年築造の朝陽館にいつも見守られてきた。

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1階廊下の様子

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2階の階段から玄関を望む

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黒光りする木造の階段、手すり

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2階廊下の様子

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部屋を仕切る戸は障子です

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アルミサッシの内側、元の木戸の鍵はネジ式

「ちょっと早いですが・・・」

と、ご主人の声がかかり、1階の広間で夕食。

本日の宿泊客は私の他に、ご高齢の夫婦とトレイルランやっているという元気そうな息子さんの親子一組。

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ご主人から料理の説明。左下から時計回りに、山ウドの煮付け、大根の山葡萄漬、ワラビおひたし、だし(山盛の中に豆腐)、キクラゲのポン酢あえ、ゼンマイ煮付け、ブナハリタケ煮付け、岩魚塩焼、キノコ味噌汁(すんませんキノコ名前忘れた)、御飯は山形のブランド米つや姫。

 お隣の親子連れは横浜からいらっしゃったとのことで感激しきり。山形県人の私にとってはなじみの食材だが、県外から訪れる山岳部の先輩後輩、お客様には、こういう料理食べさせたかったなあ・・・と後悔の思い。

 夕食を食べていると、女将さんがわざわざ私のところにやってきて、

「大滝さん、山形市から来て十分帰れるのに、お泊まりになるのは、営業最後とかお聞きになったからですか?」

と核心を突かれる質問をいただく。

月山山頂小屋ではガイドとして御厚意をありがたく戴いているが、普段はあまり「山岳ガイド」という身分を振り回したくない。今回も普通の登山者として泊まっていたのだが、話の成り行きで昔ガイド山行でお世話になったことを話す。

女将さん「ガイドですってー!」

ご主人「なんだよー、それ早く言えよー!」

それからはガイド業、ツアー登山を巡る旅行業、朝陽館の今後、新設される登山センターの話で盛り上がる。ご主人の話から、横浜からいらっしゃった親子の方のお話から、いろんなお話。

朝陽館の夕食には、人との出会いがありました。

夕食後は部屋に戻る。

朝陽館の電話は衛星通信電話だ。電波の届かない楽天モバイルのwifiルーター、ガラケー、iphoneはポーチにしまう。気象情報を得るためのラジオも入りが悪い。普段はiphoneに録音しているエピック音楽を聴くのだが、それもここではやめる。

古寺川の水音、かすかに薪を焚く香り。通信手段から閉ざされた、静かな山の宿で、現代メディアの評論書を熟読。

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自家発電が止まる夜間、階段をほんのり照らすランプ

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しっかり睡眠をとった翌朝、布団をたたみ、ご主人らが朝飯の用意をする前に宿を退出。

さあ、これから会社。今週も現場作業に頑張ろう。

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早朝の玄関。さよなら、古寺鉱泉・朝陽館。

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紅と蒼

9月29日、古寺鉱泉から大朝日岳山頂を往復。

気象予報では雨だが、前線通過前に登り終えることを目論む。

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入山すると、霧雨、時々小雨。こんな日は登山者も少なく、紅葉シーズンにもかかわらず静かな山登り。

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ヒメサユリでにぎわった登山道は、今はリンドウが花盛り。所々でトリカブトの蒼色とアキノキリンソウの黄色のコラボ。

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稜線に出ると、登山道の周囲も紅葉で彩られる。

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ガスで全く眺望もない山は、登山道脇の紅葉を楽しむ。

P7_20190930223601大朝日小屋脇に残るマツムシソウ

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小屋に続く稜線は、チングルマの紅色に染まる。

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下山途中、ようやく山肌が見えてきた。

古寺鉱泉目指して下山中、足並みのそろった集団に追いつく。先頭のリーダーはブナ林で「樹幹流・・・」を説明している。大朝日のツアーはタイトなスケジュールのツアーが多い中、おおっ、いいなあーと思いつつ、最後尾の方が「追い抜きでーす」と声をかけてくださったので追い抜きしようとしたところ・・・

「大滝さん?」「あれ?」

その集団は毎度お世話になっている月山エコプロのツアー、先頭は近田郁子ガイドだった。

「下見ですか?」と近田ガイドに尋ねられる。

お客様もずらっと並んだところで「会社で精神的に疲れたので大朝日登りに来ました」とはこっぱずかしくて言えないので、

「そうそう」と答える。神様、女性に嘘つきました。ごめんなさい。

その後は私のペースで駆け足で下りる。

今日は自宅に戻らず、古寺鉱泉の朝陽館に泊まる。駐車場で濡れ物・汚れ物を着替え、お泊まり道具を揃えて朝陽館に向かう。

ちょうどそのタイミングで下山してきた近田ガイド一行とすれ違い。

「大滝さん、今日はお泊まりですか?」

近田ガイドに尋ねられ、

「 現 実 逃 避 で す 」

と素直に答える。それから私は今宵の宿、朝陽館に向かった。

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古寺鉱泉~大朝日岳 登山道情報

一服清水近辺に、9月24日頃の暴風でかなり太い倒木が4箇所にわたり道を遮っています。

乗り越えたりくぐったりして通行に問題ありませんが、倒れたばかりの倒木、手がかりになりそうな折れ残った幹がぐらついたり、足がかりとなる枝が滑りやすくなっていますのでご注意下さい。

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百宅(ももやけ)、ダムに沈む集落。

 エコプロの真鍋ガイドをチーフガイドに、期待のホープ伊藤ガイド、オマケの私の3名体制で一泊二日の鳥海山ガイド。

 秋田のモニターツアーということで、1日目は現在計画進行中の鳥海ダムに沈む集落、百宅(ももやけ)をお客様と共に見学・散策する。

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山スキーの帰りの入浴でおなじみ、鳥海山荘でお昼。ミズのムカゴのおひたしに、「あー山に来た」

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この光景も、

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 この風景も、

やがてダム湖の水に沈む。

過疎化が進む農村ゆえ、反対運動もなく、住民の移転交渉が進んでいる。

私たちは地元の鳥海・飛島ジオパークの方々にガイドされながら、集落を歩いた。

百宅地区にはまだお住まいの方もおられる。ときには、地元の方に暮らしぶりなどを伺いながら。

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百宅地区の方が家の前に植えていたマリーゴールド

 過去に当ブログにも書いているが、私はガイド資格を得る前、西日本某県のダム建設現場に1年2ヶ月ほど赴任していた。

 そこは計画から反対運動を経て38年かけ着工となったダムだった。

 人々の営みが消えていく現場を目にするのは2度目となる。

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集落の外れに立つ栗と梨の巨木。今年は豊作とのお話のとおり、無数の栗・梨が実っているが、採る者は誰もいない。

 翌日にロングコースの鳥海山ガイドを控えながら、私が山岳ガイド資格を志す遠因となる、ダム現場の日々に思いを巡らせた。

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朝日連峰・鳥原小屋で感じたこと

13日。

昨年に引き続き、盆の墓参りを夕刻にさせてもらい、日中の時間を利用して朝日連峰・鳥原小屋を訪問。

今年は工事中の登山口視察を兼ねて古寺鉱泉から登る。

これまた昨年同様、登高途中で訪問目的である鳥原小屋管理人・鈴木正典さんとばったり出くわし、お互い苦笑。

「昼までには戻るからっ!小屋で待ってて!」

正典さんは途中にデポしてきたビールを回収するための下山とのこと。私は後の面会を楽しみにしつつ登高。

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正典さんの字で、古寺鉱泉に立つ標識から『鳥原小屋推し』が凄い・・・

決め文句は「ビールあります」と「大朝日小屋にはビールありません」(笑)

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強い日差しの中、高湿なブナの道を登る。

暑い。蒸し暑い。

ストームゴージュアルパインパンツも吹き出す汗で繊維が飽和してしまい、ピタピタと脚にまとわりつく状態。

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ユージン・スミス調に木陰から鳥原小屋を眺める。

正典さん手書きの案内の効果か、木道で行き交う登山者から

「ここビールあるらしいよ」という声が漏れ聞こえる。

汗だくになった鳥原小屋では、正典さんの奥様と初対面。デポしたビールを回収に行った正典さんが到着するまで、小屋で待たせてもらうことにする。

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「蕎麦食べていきませんか」という奥様のご厚意に甘え、調理いただいている間、小屋外のベンチで汗まみれの身体を乾かす。

高湿な空気の中に見え隠れする蔵王連峰を眺めたり、

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近くのヨツバヒヨドリを眺めたり。

湿原に囲まれたベンチで、静寂な空気の中、ウグイスの声が途切れなく聞こえる。汗まみれの身体に夏の日差しが心地よい。

ルートのことも、お客様のことも、山頂に立つことも考えず、山の中に座っている安らぎ。

先月から続いたガイド山行では味わうことの無い、ゆったりした時間。

先日の某登山用品店主催の山行では、自己紹介で「登山初心者です」という方が多かった。

そういった方に、私は何をガイドしたのだろう。登山を始めたばかりの人たちに、こんな時間、こんな過ごし方、こんな空間があることを知らせたい。

大混雑する月山ばかり登っていた私にとって、今座っている鳥原小屋の光景はまさに別世界だった。

そんな風にぼーっとしていると、「そば茹で上がりましたよー」と奥様から声がかかる。

P10鳥原小屋のアイドル犬ポチは神社の前でお昼寝中。

 奥様と一緒に雑談しながら蕎麦をご馳走になっていると、「あ、来た」と奥様が外に出る。正典さんが戻ってきたらしい。

 私はなんの気配も感じず、「おおー夫婦の絆か!」と思いきや、正典さんが鳥原小屋に近づくと愛犬ポチが反応するらしい。凄い・・・

 汗まみれでビールを担ぎ上げてきた正典さん、沢水でさっぱりしてから小屋に入り、1年ぶりの対面。

 インドヒマラヤの未踏峰を数々陥し、冬季ローツェ南壁にもトライした正典さん。知り合った頃はインド、パキスタンにある未踏峰の名前もすらすらそらんじている程だったが、今やそれらの峰々もほとんど既登峰になってしまった。

 高所登山の話題も出ず、もっぱら鳥原小屋をとりまく朝日連峰の話題に終始する。お互い、年齢を重ねたのだ。

 時間帯はちょうど昼、大朝日岳から下降して鳥原小屋にやってくる登山者もぼちぼち現れた。私も夕方の墓参りに備えて下山しなければならない。正典さん御夫婦に挨拶して鳥原小屋を離れる。

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昨年の同じ時期に鳥原湿原を彩っていたチシマゼキショウ、今年はまだ咲き始め。

すれ違う人々に「どこから登ってきたんですか」「今日はどこまで行くんですか」とたずねられる度、「鳥原小屋までです」と答える。

山頂も気にせず、のんびり過ごす。

アルパインクライミングの大センセイには怒られそうだが、ただ安らぎと人との出会いを求めて山に入るのも、いいものでした。

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パンと水。

山の日。

某登山用品店様主催の月山縦走ガイドに出動。

山の日、日曜、晴天ということもあり、月山は以前に一度経験したかどうかという位の大混雑。

牛首からは登山者の行列が延々と続く。

その状態で、私が率いていたグループの80歳超の女性の足が止まる。足の疲労らしい。

後方に延々と登山者の列が連なっていることもあり、道の脇で休んでもらう。

ツアーの他の参加者を足場の良いところで休ませ、私は下降し足の動かない女性の元に走る。

足が攣っている状態。同行の娘さんが看護師ということ、添乗スタッフSさんが付きそうということで私は再び走って登り返し、待機しているツアー参加者の元へ。

そのままツアーを山頂神社に引率。

携帯電話で確認すれば済むともいえるが、自分の眼で確認したいので、参加者の昼食休憩の時間を利用して私は再び山頂から下降、3人の様子を見に行く。

大混雑の中、下っても、下っても、3人の姿は無い。

結局3人と合流できたのは、3人と別れた場所からさほども登っていない所だった。添乗のSさんから姥沢側に下山することを伝えられる。

登山用品店スタッフの女の子Iさん、鈴木ガイド、私の3人で残る全員を連れて羽黒側に抜けるしかない。

みたび、大混雑する月山山頂直下の急登「鍛冶月光」を走って登る。

『大滝さん、ガイドもメシ喰える時に喰っといた方がいいですよ』

鈴木ガイドから言われた事を思い出し、何か焦っている自分にブレーキをかける。

鍛冶小屋跡でザックを下ろし、セブンイレブンの小さなレーズン入りバターロールパン2切れを水で流し込む。

結局、これが今日一日に口にした行動食の全てだった。

フラッシュバックのように、結婚したばかりの頃、本場のクライミングガイドがどんなものか経験したくてアメリカに渡った時を思い出す。航空券購入で精一杯だった私は、一週間、食べたものは巨大スーパーで買ったオニオンベーグルと、水だけだった。

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晴天に恵まれ、大混雑の山頂小屋周辺

 粗末な行動食でシャリバテする程ヤワではないが、少しは工夫しよう。

 長い羽黒側への下山を終えるが、予定していた入浴予定の温泉地は祝日で大混雑、お客様達には入浴断念をお願いする他ない状態だった。

 山形に戻った時にはもう日が暮れていた。

 ガイド山行後、主催の登山用品店側との事務仕事が増え、月山朝日ガイド協会事務局の横山さんに連絡。あれこれお願いし、「明日ご在宅ですか?」と尋ねるが、「いいよ送るよ、盆休みだろ」と言われ、はっとする。

 嗚呼、世間では盆休みなんだ。

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ちょっと頭を冷やすため、本日は奮発して280円のセブンのカフェラテショコラで1人打ち上げ。

濃厚な甘さが売りらしいが、疲労して脱水気味の私には心地よい甘さだった。

本日の月山縦走で、いったん私のガイド業務はお休み。

既に予約が入っている9月の山行控えて、また準備の日々です。

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言 葉

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某企業様からご依頼をいただき、社員旅行の一環としての月山登山をガイド。

私もガイド資格取得以来、こんなのは記憶にないというくらいに月山山中も猛暑。牛首を通過しても吹き出す汗が止まらない。

クライアントの若い女の子が疲労のためか、歩くのが極端に遅くなり田中ガイドが付き添う。

私は先行して他の皆さんを率いてベンチ場で休憩していたところ、田中ガイドから携帯に連絡か入る。背負い搬送でいくので荷物を分担する用意をしてほしい由。

「搬送しますので、恐れ入りますが若い男性の方、荷物の分担に御協力お願いします」

と私が声をかけたところ、同行している若い女性たちから

「はんそう!」

「そんなに具合悪いんですか!」

私たちガイドが何気なく使う「搬送(はんそう)」という言葉、「救急車での搬送」のようなイメージを持たれてしまったらしい。あわてて背負い搬送であることを説明する。

田中ガイドがハーネスを巧く使ってザック搬送。私は先行してフォローにまわる。

ワンピッチ歩いたところで体調不良の女性を下ろす。他のお客様が付き添って歩ける程になっていたので、背負い搬送を解除。

ちょうどそのとき、同行していた小学生の男の子が「おしっこしたい」と言い出す。

リフト上駅への登り返し、藪の多い登山道の手前まで来ていたので、田中ガイドがそのまま男の子を連れて行くことになった。

「このおじさんに連れてってもらうんだよ」

とお客様達が言うと、田中ガイドが

「いや、おじさんじゃなくて、お兄さんと呼んで欲しいなあ~」

その一言で、女性の搬送で緊張しきっていたお客様皆さんがどっと笑い、一気に緊張がほぐれる。

 

私のようにうかつに「搬送」の一言で無用な緊張を与える場面もあれば、田中ガイドのようにさりげない一言で大勢の人間の緊張を消し去る場面もある。

 

言葉って、難しい。

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