DNAは誰のものか?

コロナでうんざり。

早くワクチンできないかな~と願っている方も多いと思います。

最先端のバイオ企業では、着々とワクチン開発が進められています。

しかし、それが生身の人間の、マイノリティな人々の搾取の産物であったとしたら。

ネパールのシェルパ族は、バイオ企業に「搾取」されているのか。人類のために「貢献」しているのか。

NEPALI TIMES がコロナウイルス特効薬開発の光と影をすっぱ抜きました。

Sherpa genes for COVID-19 treatment?  by NEPALI TIMES 2020.6.23

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シェルパの遺伝子がCOVID-19の治療に?
アメリカのバイオテクノロジー新興企業による、シェルパのDNA配列研究が提起する倫理的問題

ネパールタイムズ 2020年6月23日

Nepalsherpa

写真 サガルマタ汚染防止委員会

 アメリカのバイオ企業がネパール・シェルパ族の血中DNAを研究し、高所の低酸素にもかかわらず彼らがいかに成長するかを調べることにより、COVID-19の治療法を見つけようとする試みは、一部の医師やシェルパ族によって批判されている。

 ヴァリアント・バイオ社は、シェルパ族が住む地域の空気中酸素が平地の半分しかないにもかかわらず、彼らにスタミナと持久力を与えているDNAの遺伝子コードを抽出しようとしています。

 同社は研究によって、COVID-19に苦しむ患者の治療法開発に役立つだろうとコメントする。

 バリアント・バイオ社の共同設立者で遺伝学者でもあるステファン・カステル氏は、ニュースレポートの中で「COVID-19では低酸素症で死ぬこともある」と述べる。「おそらく、その住環境の中で健康に保つ方法があるだろう。」

 しかし公衆衛生の専門家は、そのような研究の科学的根拠に疑問を投げかけ、一部のシェルパ族の研究者は、研究の倫理的な問題を提起しています。

「世界中の先住民や辺境地に住む人々の遺伝子がどのように研究にされ、悪用されてきたかを知っています。彼らが私の故郷の人々を民間企業の利益のために利用しようとしているのではないかと危惧しています」

 アメリカ・アリゾナ州立大学、地球宇宙探査学部博士課程の学生であるソナム・フティ・シェルパは語る。

 彼女によると、バリアント・バイオ社のプロジェクトは、ネパール現地の人々がこの研究について知らず、研究に関わるクーンブのシェルパ族でさえ、研究の目的を知らされていない可能性があるため、ゲノム研究、法律、倫理について緊急の警告を発したという。

「この研究はいくつかのレベルで非倫理的です。国際臨床法によると、薬品が特定の地域社会によって開発された場合、その地域社会は薬品からの利益を得るべきであり、そうでなければ非倫理的であり、最終的には違法となります。」と説明する。

 科学者たちがヒマラヤの住人の秘密、標高の低い場所に住む人間が動けなくなるような高度でシェルパ族が活動的である理由を明らかにしようと試みたのはこれが最初ではない。エドモンド・ヒラリーは、かつてネパールのクンブ地域を「世界で最も調査され、検査され、採血され、人類学的に解剖された地域」と表現したことがある。

 COVID-19に対するワクチンと薬物療法の研究は、急性症状を持つ患者に対して絶望的な手段に頼らざるを得ない医師の注目を浴びる。あるニューヨーク市の医師は最近、COVID-19の患者が肺の低酸素症状に苦しんでいたため、高高度肺水腫(HAPE)の治療に使用されるダイアモックスのような薬を推奨した。

「急性高山病用の薬を使ってCOVID-19を治療するのは、全く異なる要因があるため論理的ではありません」と説明するのは、高所医学の専門家であり、イギリスの医学誌にこのテーマに関する論文を共著したBuddha Basnyat氏である。「COVID-19を治療するために高山病の薬を使用することは、潜在的に危険な結果をもたらす可能性があります。」

 しかし、バリアント・バイオ社は、シェルパの遺伝子がCOVID-19だけでなく、代謝障害や免疫反応に関する薬品開発に役立つ秘密が隠れていると確信している。

 過去に開発された多くの医薬品は、世界各地の民族の特質を生かし複製されてきたとして研究を擁護している。 例えば、抗コレステロールの処方薬の幾種類かは、遺伝的に病気になりにくいアフリカ人から抽出されたDNA配列に基づいて開発された。

 バリアント・バイオ社はまた、糖尿病の遺伝的治療薬を発見するために、他民族よりも炭水化物を代謝させる傾向があるニュージーランドのマオリ族の血液からDNAサンプルを取っている。また、フェロー諸島とパキスタン人も対象に研究を行っている。

 同社は、その方法論から倫理的な批判に備えていたようで、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団で感染症研究を率いていたCEOアンドリュー・ファーナム氏は、「治療法を見つける利点が他の懸念事項を上回る」ことをブルームバーグで示唆した。

 バリアント・バイオ社はネパールのシェルパ族の医師を雇い、現地の行政に呼びかけ、10月からネパールで2,000人の血液サンプル採取を支援しているという。同社は、シェルパ文化に関する本の翻訳費用や、クーンブの学校改修費用を負担することで、現地コミュニティに補償する予定という。

 ソナム・フティ・シェルパは「納得していない」とメールでネパール・タイムズにコメントした。
「同社はまだネパール保健研究評議会の許可を得ていないまま、サンプル収集を開始する予定です。民間企業がシェルパや他民族の遺伝子の『著作権』を所有すべきではない。」

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以上引用おわり

 補足します。

 文中にヒラリーが引用されていますが、ヒラリーはエベレスト登頂に成功後、マカルー登頂を狙った際、標高5300mの高所に「銀の小屋」と呼ばれるプレハブ小屋を建て、自分たち登山隊メンバーを実験台に高所衰退・高所順応の医学実験・調査を行っていたものです。バリバリのバイオ企業の製薬研究と一緒くたにされるのは不本意ですな。

 現実として、世界各地の民族固有の体質そのものが医薬品開発に「貢献」している現代、コロナウイルスワクチン開発という御旗のもとに、いくつもの企業が国家から莫大な支援を受けて研究開発を進めています。

 冒頭に書いたように、特定の民族から得られるDNAデータは搾取の賜物なのか、人類への貢献なのか。

 なんでもかんでも AI に判断をお任せしようという現代、ますます「倫理観」が問われる時代になってきていると考えます。

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チベット自治区ラサに、あの店が出店

超ウルトラスーパー久々にチベットネタ。

チベット自治区ラサに、ついにケンタッキーが出店の模様です。

Tibet to get first KFC next year, amid China expansion by REUTERS 2015.12.9

チベットに初の「KFC」誕生へ 10年前にはダライ・ラマ氏による「圧力」も by サーチナ2015.12.11

 KFCのチベット侵攻・・もとい進出は2004年に一度計画されました。
 上記リンク記事によれば、当時はダライ・ラマ猊下が反対の意向を示し、KFC側が「採算が取れない」という名目で再進出の可能性を残し巧みに退き、今回あらためてチベット進出を図ったものです。

Kfc
Photo by REUTERS

 今回KFCが再進出を図った理由として、2004年当時に比べてラサの経済事情も様変わりしたこと、China Dailyなど中国系メディアはチベット自治区のGDP上昇を報じています。

 私の個人的な意見としては、チベットを訪れる漢民族の富俗層が狙いなんでじゃないでしょうか。
 ラサ在住のチベット人の声として「ピザは好きだがフライドチキンや他のファストフードはあんまり好きじゃない」という声を載せた報道もあります。
 
 KFCチベット自治区ラサ支店のオープンは来年早々を予定とのこと。

当ブログの関連記事

ついにあの国にKFCとピザハットが進出 by 当ブログ2009.10.9

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ドイツ・スイス合作映画『WIE ZWISCHEN HIMMEL UND ERDE』

Tibe 今夏、ドイツ・スイス合作による映画『WIE ZWISCHEN HIMMEL UND ERDE』(天と地の狭間で)が欧米で公開されます。
 英語圏でのタイトルは「ESCAPE FROM TIBET」、チベット自治区から亡命を図るグループに関わった女の子を描いた映画です。事実を元にしたフィクション、という体裁のようですね。
 トレッキング中にチベット亡命を図る集団と関わりをもった主人公、彼らをリードする密輸業者の男、宿屋の謎めいた女主人、主人公達に忍び寄る中華人民凶悪国の公安と人民解放軍、といった設定のようです。(いやドイツ語はわかんねーのよ)

 でも予告編は冒険活劇風で期待させるなあ。
 ああ!
 あやしい四駆の群は公安か人民解放軍に違いない!
 女主人が血相変えて銃突きつけてる!
 子供達はどうなるの~
 ・・・といった感じで予告編は展開してます。 

 日本でもガツンと人民解放軍と公安を悪役にした活劇も公開しようよ。
 つーかさ、日本の映画関係者って左翼かぶれのアカが多いから連合赤軍とかの凶悪殺人テロリストを描いた映画はもてはやすくせに、中国の政治問題が絡むと皆さんお静かですね。
 ちなみにストーリーがストーリーなだけに、映画製作ではラサでのロケは苦労したみたいです。

 英語版予告編はこちら↓

映画オフィシャルサイト

WIE ZWISCHEN HIMMEL UND ERDE

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仙台市役所という『愚』

 東日本大震災で『経済効果』の名の下に中国からパンダを借用する仙台市のキチガイぶりはバカバカしいのでブログ記事にする気もなかったのですが、

仙台市:昨秋来訪のダライ・ラマの要請に面会断る パンダ貸し出しに配慮か by 毎日新聞2012.2.23
以下記事引用開始
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 仙台市が、昨年11月に同市入りしたノーベル平和賞受賞者でチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世から要請された奧山恵美子市長との面会を断っていたことが、22日の市議会本会議で明らかになった。
 ダライ・ラマは東日本大震災の犠牲者慰霊のために仙台市や石巻市に入った。石巻市での法要には、同市の亀山紘市長が参加し、謝辞を述べた。
 仙台市の高橋一典市民局長は22日の市議会で、要請があったことを認め「先方の日程が過密で、調整ができなかった」と述べた。市幹部によると、奧山市長に面会要請に対する判断を求める前に、担当者が断ったという。
 ダライ・ラマは「チベットは中国の領土」と主張する中国から批判されている。市は中国にジャイアントパンダ貸し出しを要請しており、対中関係に配慮した可能性もある。【平元英治】
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※強調文字は筆者による

 ちなみに、ダライ・ラマ法王はじめチベット亡命政府、在日チベットの人々がいかに東日本大震災に心を砕いているか、義捐金という形でふりかえっても、おわかりでしょう。

東日本大震災へのお見舞いメッセージと対応についてのご報告 ダライ・ラマ法王日本代表部事務所

 まあ、これが東北の中心都市を自負する仙台市テイストですね。(棒読み)

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映画『天脊』 ~人、何故に山へ登る~

世界最高峰を国内に擁する中国で、ついにチョモランマを舞台にした山岳映画が制作されました。
タイトルは『天脊』、英題は「THE SUMMIT」です。

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《ストーリー》
 登山家は皆、1つの残酷な「高山の掟」に直面する。それは、標高8000m以上の高所では、パートナーが事故に遭っても救いようのない場面に直面することだ。そこから生じる人間性と倫理の衝突と対立に、人は考えさせられる。
 チベット登山隊が8000m峰14座登頂計画の登山活動中、登山隊の撮影技師の仁青はチョモランマのクレバスに転落、妻の徳吉、兄弟であり登山隊隊長の巴桑は断腸の思いで救助を断念して下山する。下山後、彼らを後悔と懺悔の念にとらわれ、仁青の息子・岗热(gang ren)に向かい合うことさえできない。
 岗热は新世代の登山家で、彼はずっと父の死因を追及、チョモランマ登山中の父の死因を知った時、彼は危険を冒してチョモランマに登頂することを決意する。しかし、母の徳吉はあらゆる手段を尽くして彼が山に向かうことを阻止するのであった。
 岗热のガールフレンドである卓嘎はカフェを売り払い、岗热と共に商業登山隊に参加することとなる。
 そしてチョモランマの山中で、彼らは父親たちと同様に「高山の掟」に遭遇、彼らは困難な立場に立たされる・・・。

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映画『天脊』より

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映画『天脊』より

 この映画の主演は、映画『可可西里』(ココシリ)で主役を務めた多布傑(デュオ・ブジエ)で、中国メディアでもそれが話題になっているようです。
 出演者で注目すべきは、山岳ジャーナリスト柏澄子女史のブログでおなじみの、チベット族の女性登山家、吉吉が出演。
 監督・脚本は中国映画界の新鋭・赵鹏逍。
 赵鹏逍はこの映画について、こう述べています。

『チベット登山隊は8000m峰14座を全山登頂を果たし、これは世界的にも偉大な行為を完成した登山隊だった。それを達成するまでの喜びと悲しみが私を動かした。隊長の桑珠、故・仁那の未亡人であり北京五輪のチョモランマでのトーチ・ランナー、吉吉ら登山家たちと家族同様の付き合いの中で、私は繰り返して1つの問題を探究していた。「登山の意義は一体どこにあるのか?」 有名な言葉『山がそこにあるから』は決して真実ではない。それでは、人と自然との関係は一体どうあるべきなのか?』

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映画『天脊』の脚本、監督を手がけた趙鵬逍

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映画『天脊』の撮影風景

 監督・脚本を務める趙鵬逍は1969年生まれ、江蘇省出身。共産党幹部の家に生まれ恵まれた環境で育ったようですが、1988年に大学受験を放棄、6年かけて中国国内を旅して廻るという、変わった経歴の持ち主。その後、中国の名門・上海戯劇学院に学び、北京電視台に勤務後、これまた名門の北京電影学院に入学。
 今回の『天脊』が制作2作目で、2007年~2010年の4年の歳月をかけて作られました。

 私が注目するところは、中国において 個 人 の 創 案 で チョモランマを舞台にした山岳映画が作られたこと。大昔、中国のチョモランマ登山の記録映画の一部を見る機会がありましたが、アレはもう「毛主席と共産党のおかげアル!」といわんばかりのプロパガンダ映画でしたからね。
 私もまだ本編を見てはおらず、メディアに流れる情報が頼りなのですが、主人公らが「商業登山隊」に参加という設定も、なかなか現代のヒマラヤ登山を反映しているようです。

 監督・趙鵬逍がチベットに入れ込み(撮影期間中に例のチベット暴動があり、また趙鵬逍自身もチベットのナムツォで交通事故で瀕死の重傷を負い、人の生死について考えさせられたとのこと。)、映画制作時もすべてチベット語、役者も全員チベット族でかためたこの映画、なんとか見てみたいものです。

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21世紀の『サウンド・オブ・ミュージック』

 90年代のチベットにおいて、ダライ・ラマとチベットを称賛する歌を歌った14人の尼僧たちは、『歌う尼僧』として知られていましたが、当然のごとく中華人民凶悪国当局に弾圧・投獄されておりました。
 このたび、そのうちの一名がインド・ダラムサラに亡命、「現代のサウンド・オブ・ミュージック」として報道されています。

Tibet's 'Sound of Music' nun scripts a sequel by Sify news 2010/9/21

Palden_choedon 今回亡命に成功したペルデン・チュドゥン(Palden Choedron、37歳 画像はICT(International Campaign for Tibet)配信)は14歳で尼僧となり、1990年、中国に対する平和的なデモに参加したため、チベットでも悪名高いDrapchi刑務所に投獄されました。(98年6月、デモに参加して拘束された尼僧5名が、5週間の過酷な強制労働の後に死亡)
 93年、獄中において他の13名の尼僧とともにダライ・ラマ、そしてチベットを称賛する歌を歌い、そのテープは密かに国外に広められました。そのために尼僧らは激しい拷問が加えられ、尼僧の一人、Ngawang Lochoeは死亡するに至りました。
 98年にようやくペルデン・チュドゥンは釈放されましたが、当局の報復をおそれて二度と寺に戻ることはかないませんでした。同年、彼女はダライ・ラマのもとに亡命を企てましたが失敗、再び投獄され、三年間刑務所で過ごすことになります。

 2006年3月、「歌う尼僧」たちは人権擁護団体のキャンペーンの成果でようやく釈放されましたが、常に日常生活は監視され、もとの生活にもどることはできませんでした。
 ペルデン・チュドゥンは再び亡命を企て、今回ようやくインド・ダラムサラにたどりついたのです。
 
 彼女たち14人が歌った歌の一つ(英訳版、ICTレポートより引用)『I looked out from Drapchi Prison』の歌詞を以下に掲載する。

 I looked out from Drapchi Prison

 I looked out from Drapchi prison
 There was nothing to see but sky
 The clouds that gather in sky, We thought, if only these were our parents.
 We fellow prisoners [Like] flowers in Norbulingka,
 Even if we're beaten by frost and hail,
 Our joined hands will not be separated.
 The white cloud from the east
 Is not a patch that is sewn
 A time will come when the sun will emerge
 From the cloud
 And shine clearly
 Our hearts are not sad;
 Why should we be sad?
 Even if the sun doesn't shine during the day
 There will be the moon at night
 Even if the sun doesn't shine during the day
 There will be the moon at night.

 なお14名の尼僧のうち5名はまだチベットに在住、ペルデン・チュドゥンを含む他8名は国外に亡命しました。
 尼僧のうち、最後に釈放されたプンツォク・ニドロン(Phuntsog Nyidron)に関して、イタリア出身のラッパーMarcella Boccia(インド名Heena Suman)がチベットで投獄された尼僧のためのイメージソングを歌っています。


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